1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. サワイHD、米国撤退後の成長戦略―カギ握る「脱安売り」
ニュース解説

サワイHD、米国撤退後の成長戦略―カギ握る「脱安売り」

更新日

前田雄樹

サワイグループHDの澤井光郎会長兼社長

 

業績不振の子会社を売却し、米国市場から撤退した後発医薬品大手サワイグループホールディングス(GHD)。6月6日、2024~26年度の中期経営計画を発表し、あわせて30年度の国内後発医薬品事業の売上収益目標を大きく引き上げました。「自社生産能力の増強」と「価格の改善」が成長のカギを握ります。

 

 

2030年度に国内GE事業で3000億円

新中計では、26年度の定量目標を売上収益2200億円、コア営業利益330億円に設定。23年度の実績と比較すると、売上収益は24%、コア営業利益は38%の増加となります。あわせて、21年5月に発表した30年度までの長期ビジョンの目標も変更。米国からの撤退で売上収益全体は従来の4000億円から3100億円に引き下げる一方、国内後発品事業は2600億円から3000億円に引き上げました。

 

【サワイGHD 中期経営計画の数値目標】〈年度/売上収益/うち国内GE事業/コア営業利益〉20年度/1872/1536/340/23年度/1769/1769/239/26年度/2200/2190 /330/30年度(新)/3100/3000/―/30年度(旧)/4000 /2600 /―|※サワイGHDの中計説明資料をもとに作成

 

サワイGHDの澤井光郎会長兼社長は6月7日の説明会で「国内ジェネリック医薬品事業のビジネスチャンスは増大している」とし、「将来にわたってジェネリック医薬品産業の中核を担い、リードするため、これからの3年間はその体制を整備する重要な期間だ」と強調。昨年、行政処分を受けた品質不正からの信頼回復を土台に、医薬品不足の解消に向けて増産と生産能力拡大に取り組む方針を示しました。

 

生産能力は30年度に250億錠以上

自社生産能力は、24年度に205億錠、26年度に220億錠に引き上げ、30年度に250億錠以上を目指します。23年度の実績は185億錠でした。昨年、製品出荷を開始した子会社トラストファーマテックや、今年7月に稼働を開始する沢井製薬第二九州工場の新棟は、段階的に生産数量を増やし、稼働率を上げていく方針。中計の3年間で工場の設備更新に270億円、生産能力の増強に312億円の投資を計画しており、「自社工場の建設や他社との連携など、あらゆる手段を講じることでさらなる供給能力の向上を図る」(澤井氏)考えです。

 

サワイGHDは、30年度にかけて国内後発品市場が年平均7億錠程度拡大すると予測。生産能力の増強によって市場の伸びを上回る年平均12億錠の販売数量増加を目指します。26年度の市場シェア目標は20.5%(23年度実績は17.1%)で、30年度にはさらに25%以上(販売数量240億錠)まで拡大させる計画です。

 

【サワイGHDの生産能力と販売数量】〈年度/生産能力/販売数量/シェア〉20/155/133/16.1|23/185/157/17.1|26/220/190/20.5|30/250/240/25※サワイGHDの中計説明資料をもとに作成

 

厚生労働省の有識者検討会でも必要性が指摘された「他社との連携」については、トラストファーマテックや第二九州工場の生産能力を活用し、他社分の生産を引き受ける構想を披露。澤井氏は「各社とも生産ラインはいっぱいいっぱいの状況。サワイが作れるものはサワイに集約することで、他社の生産ラインが空き、サワイが製造していない品目の増産につながる」と話し、検討会報告書に盛り込まれたコンソーシアムや企業統合よりスピーディーに実行できると強調しました。

 

1錠あたり単価、23年度11.27円から30年度12.50円へ

生産能力の増強によるシェア拡大とともに成長のカギを握るのが「価格」です。

 

サワイの国内後発品事業の売上収益を販売数量で割った1錠あたりの単価は、23年度の11.27円から26年度に11.53円、30年度には12.50円と上昇していく計算。裏を返せば、価格の改善なしに「国内後発品事業3000億円」の目標達成は困難です。

 

【サワイGHD1錠あたり単科の推移】〈年度/単価〉20/11.56|23/11.27|26/11.53|30/12.50

 

「価格政策を徹底」

中計では生産の拡大とともに「適正価格での販売」を事業戦略に掲げており、澤井氏は「中計の3カ年で価格政策を徹底し、毎年の改定でも薬価が大きく下がらないベースをつくり、そこに新製品がしっかり乗ってくる形にビジネスモデルを変えていくということが根底にある」と説明しました。

 

厚労省検討会の報告書でも、後発品メーカーの収益構造の改善には「過当競争状態を是正し、過度な価格競争から脱却することが必要」とされており、澤井氏も「それに取り組むのが業界の中核を担う企業の覚悟だ」と指摘。「ジェネリックこそ値引きができないカテゴリに変えていきたい」と意欲を示しました。

 

前期比16%の営業増益となった23年度決算には、低薬価品を中心に原価高騰の影響を価格に反映したことも寄与しました。沢井製薬は23年度から「異次元の価格政策」(沢井製薬の木村元彦社長)をとっており、手応えを得たといいます。今後も、取引先に理解を求めながら、仕切り価の引き上げやリベートの見直しといった取り組みを強化していくものとみられます。

 

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる