海外の大手製薬企業20社の2023年の業績を、▽売り上げ・利益▽研究開発費▽主力製品売上高▽疾患領域・事業別売上高▽地域別売上高――の5つの切り口からチャートで解説します。
【チャートで見る】海外製薬大手2023年業績 |
ファイザー コロナワクチン7割減
各社の決算発表から、主力製品(売り上げ上位3製品)の売上高と、総売上高に占める割合をチャートにしました。
スイス・ロシュは、多発性硬化症治療薬「オクレバス」や血友病治療薬「ヘムライブラ」が堅調。メルクの抗がん剤「キイトルーダ」は19%増で250億ドルに到達しました。HPVワクチン「ガーダシル/同9(日本製品名シルガード9)」も29%増と大きく伸びました。
米ファイザーは、新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」が需要の減速によって70%減。治療薬の「パクスロビド(日本製品名パキロビッド)」も93%減の12.79億ドルにとどまり、全体の収益を押し下げました。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(医療用医薬品事業)は、乾癬などの治療薬「ステラーラ」が100億ドルを突破。多発性骨髄腫治療薬「ダラザレックス」も皮下注製剤の処方拡大で大台目前です。
サノフィ デュピクセント100億ドル突破
米アッヴィは、抗TNFα抗体「ヒュミラ」が、バイオシミラー参入の影響で35%の減収。一方、乾癬治療薬「スキリージ」や関節リウマチなどの治療薬「リンヴォック」が急成長しています。仏サノフィはアトピー性皮膚炎などの治療薬「デュピクセント」が100億ドルを超えました。
英アストラゼネカは、上位製品がいずれも大きく成長。特に、SGLT2阻害薬「フォシーガ」や抗がん剤「イミフィンジ」が急激に売り上げを拡大させています。スイス・ノバルティスは心不全治療薬「エンレスト」が30%増と好調です。
ノボ ウゴービ400%増
米ブリストル・マイヤーズスクイブは上位製品がいずれも堅調に推移。英グラクソ・スミスクラインは帯状疱疹ワクチン「シングリックス」が大きく伸びています。
デンマーク・ノボノルディスクは、上位3製品がいずれもGLP-1受容体作動薬セマグルチドを有効成分とする薬剤。糖尿病治療薬の「オゼンピック」と経口の「リベルサス」は前年の1.5倍超となり、肥満症治療薬「ウゴービ」は5倍になりました。
米イーライリリーもGLP-1受容体作動薬が急拡大。GIP受容体とのデュアル作動薬「マンジャロ」は970%増で50億ドルを突破しました。
BI ジャディアンス好調
米アムジェンは骨粗鬆症治療薬「プロリア(日本製品名プラリア)」が堅調だった一方、関節リウマチ治療薬「エンブレル」と乾癬治療薬「オテズラ」は競合の影響で売り上げが減少。独ベーリンガーインゲルハイムはSGLT2阻害薬「ジャディアンス」が好調です。
米ギリアド・サイエンシズは、抗HIV薬「ビクタルビ」が2桁成長。一方、新型コロナ治療薬「ベクルリー」は44%減と大きく売り上げを落としました。独バイエル(医療用医薬品事業)も、最主力品の抗凝固薬「ザレルト(日本製品名イグザレルト)」が後発医薬品との競争で10%の減収となりました。
バイオジェン 多発性硬化症治療薬が減少
イスラエル・テバは、多発性硬化症治療薬「コパキソン」が特許切れで売り上げを落とす一方、ハンチントン病治療薬「オーステド(日本未承認)」が好調。米ヴィアトリスは、後発品に加え、高脂血症治療薬「リピトール」などのLOE製品が売り上げを落としています。
米リジェネロンは、米国で販売する加齢黄斑変性などの治療薬「アイリーア」が競合参入の影響を受けて減少。米バイオジェンは主力の多発性硬化症治療薬が後発品の影響で売り上げを減らしています。
ノボ セマグルチド3剤で売上高の6割
売上高全体に対する上位3製品の比率を棒グラフにして並べてみると、次のようになります。
ノボはセマグルチドを有効成分とする3剤で売上高全体の63%を稼いでいます。メルクもキイトルーダが43%を占め、上位3製品では62%。ギリアドやBMSも半分以上を3製品で売り上げています。
一方、ロシュやノバルティスは3製品の構成比が3割を下回っており、幅広い製品で売り上げを上げていることがわかります。ファイザーは、22年にはコロナワクチン・治療薬を含む上位3製品が63%を占めていましたが、23年は42%と大幅に下がりました。