2024年度薬価制度改革は「ドラッグ・ラグ/ロスの解消」と「安定供給確保」が大きなテーマ。新薬ではイノベーションの評価に重点が置かれ、後発医薬品では企業の安定供給体制を評価して薬価に反映する仕組みが新たに導入されます。中央社会保険医療協議会(中医協)が昨年末にまとめた改革の骨子をもとに、「新薬」と「後発品・長期収載品」の2つにわけてポイントをまとめました。
【全体像】「ラグ/ロス解消」と「安定供給確保」がテーマ
4月に行われる2024年度薬価制度改革は、「ドラッグ・ラグ/ロスの解消」と「医薬品の安定供給の確保」が大きなテーマです。
新薬では▽革新的新薬の日本への迅速な導入を評価する「迅速導入加算」の新設▽新薬創出加算の見直し(企業指標に基づく加算額の調整の廃止など)▽有用性系加算の評価項目の拡充――などイノベーション評価に重点が置かれ、後発医薬品・長期収載品では▽後発品メーカーの安定供給体制を評価する「企業指標」の導入と薬価への反映▽基礎的医薬品の適用要件の緩和▽不採算品再算定の特例的適用――などが柱となっています。
日本製薬工業協会(製薬協)のシンクタンクである医薬産業政策研究所によると、直近5年間で欧米で承認された新薬に占める国内未承認薬の割合は、16年の56%から20年には72%に増加。16~20年に欧米で承認された新薬のうち22年末時点で日本で承認されていない新薬は143品目あり、このうち86品目は23年3月時点で国内での開発情報がない=国内で開発が行われておらず、近い将来、日本に新薬が入ってこなくなることが懸念されています。
一方、後発品メーカーの品質不正に端を発した医薬品の供給不安は長期化しています。2年以上たった今も全医薬品の2割以上、後発品に限ると3割以上が供給に支障をきたしている状況で、収束のめどはまだはっきりしません。
医薬品供給の土台が揺らいでおり、国は薬価上の措置を通じてこれら2つの大きな課題の解消につなげたい考えです。
見直しのポイント【新薬】【後発品・長期収載品】
2024年度薬価制度改革の主な内容を、「新薬」と「後発品・長期収載品」の2つの記事にわけてまとめました。
よくわかる2024年度薬価制度改革―新薬編
よくわかる2024年度薬価制度改革―後発品・長期収載品編