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供給不安で見直し不可避 後発医薬品の薬価「安定供給能力」どう評価?

更新日

前田雄樹

2024年度の薬価制度改革で焦点の1つとなっている後発医薬品の安定供給。品質が確保された医薬品を安定的に供給しているメーカーを薬価制度でどう評価していくのか、中央社会保険医療協議会(中医協)で検討が進められています。供給体制に関する情報の公開をメーカーに求め、それを厚生労働省が評価して薬価に反映する方向ですが、反映方法をめぐってはさまざまな意見があり、年末まで議論が続きます。

 

 

供給体制を評価、薬価に反映

議論のベースとなっているのは、厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が10月にまとめた中間報告です。同検討会は、6月に公表された「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書を受ける形で7月に発足。有識者検討会報告書で指摘された課題に対する具体的な対応を議論し、年内に最終的なとりまとめを行う予定ですが、ほかの会議体で薬価制度改革や薬事規制の見直しに向けた議論が進んでいることを踏まえ、関連する事項についてこのタイミングで中間報告としてまとめました。

 

中間報告は、「安定供給等の企業情報の可視化」と「少量多品目構造の解消」の2本柱で構成されています。

 

1つ目の柱である「企業情報の可視化」は、医療従事者が供給体制のしっかりしたメーカーを選べるよう、企業に関連する情報の公表を求めるものです。これにより、品質が確保された製品を安定供給できるメーカーが評価され、結果として市場で優位になれるようにしたい考え。公表された情報は厚労省が評価してメーカーにフィードバックするとともに、評価結果を薬価やその他の制度に活用することも意図しています。

 

【検討会が低減した「企業情報の可視化」】後発品メーカーが公表する内容:安定供給に関する情報・安定供給マニュアルの運用状況/共同開発の有無/製剤製造企業名/自社品の出荷状況、出荷停止や回収事例/余剰製造能力や在庫など|公表を受けた医療機関は安定供給をしっかり行える企業の製品を採用し、品質が確保された後発品を安定供給できる企業が市場で評価され優位になる。公表・提出を受けた厚労省は一定の基準に基づいて情報を評価。評価結果を後発品メーカーにフィードバックし、薬価に反映する。※検討会の中間とりまとめをもとに作成。

 

参入抑制で薬価上の対応も

中間報告のもう1つの柱である「少量多品目構造の解消」では、(1)新規収載品目の絞り込み、(2)既収載品目の統合、(3)供給停止・薬価削除プロセスの合理化――の3つの対策を打ち出しました。

 

(1)では、新規収載にあたって安定供給に関する責任者の指定を求めるとともに、継続的に供給実績を報告させる仕組みをつくるなどして安定供給に貢献しないメーカーの参入を抑制することを提案。(2)では、メーカー間の品目統合を促進し、統合後の品目を増産しやすくするため、製造方法の変更に関する薬事審査を合理化すること、(3)では、医療上の必要性が低い品目などについて供給停止のプロセスを合理化・効率化したりすることを検討すべきだとしています。

 

あわせて、新規収載品目数の抑制や既収載品目数の削減などにつながる薬価・その他制度上の対応についても検討すべきと指摘。現行の薬価制度に、内服の後発品で収載希望が10品目を超える場合は薬価を引き下げる仕組みが存在することに言及しています。

 

【検討会が提案した少量多品目構造の解消策】新規収載品目の絞り込み/安定供給に貢献しない企業の参入を抑制。安定供給責任者の指定や継続的な供給実績の報告を求める|既収載品目の統合/企業間の品目統合を促進。統合後の品目の増産が行いやすくなるよう、製造方法の変更に関する約次審査を合理化|供給停止・薬価削除プロセスの合理化等/医療上の必要性や市場シェアが低い品目などについて、医療現場への影響に配慮するとともに、採算性だけを理由とした供給停止等がいたずらに発生しないように留意しつつ、供給停止プロセスを合理化・効率化|加えて、新規収載品目の抑制や既収載品目の削減など、安定供給の確保につながるような薬価制度・その他医薬品に関する制度的取り組みを検討。例えば原稿の薬価制度では、後発品の内服薬で収載希望が10品目を超える場合に薬価を下げる取り組みがある。※検討会の中間とりまとめをもとに作成

 

総論賛成も運用にはさまざまな意見

中医協の薬価専門部会では現在、検討会の中間報告をベースに具体的な検討が進められています。これまでの議論では、メーカーの安定供給体制・能力・実績を評価して薬価に反映する方向性に異論は出ていないものの、その運用をめぐってはさまざまな意見が出ています。

 

厚労省は先月27日の会合で、▽安定供給を確保するための企業体制▽供給実績▽供給不安解消のための企業努力▽薬価の乖離状況▽企業の情報公開努力――を軸とする評価指標を提案。一定の基準に基づいて評価した上で企業を3つに区分し、収載時や改定時の薬価に差をつけたり、薬価を下支えする措置への適否に活用したりといった考え方を提示しました。

 

 

薬価への反映方法については、「安定供給は当然の責務。安定供給できていることで薬価をプラス評価するのには賛成できない」といった意見が出た一方、逆に「低評価の企業でも(薬価で)不利になれば安定供給に支障が出る」との意見も上がりました。評価に応じて薬価に差をつけることには賛成しつつ、供給不安が解消されない中で24年度改定から導入するとかえって供給問題が悪化することを懸念する声も出ています。

 

医薬品の供給不安をめぐっては、感染症の流行で特に不足が深刻化している鎮咳薬や去痰薬について、厚労省が10月に先発品を含むメーカー8社に対して増産を要請。同省によると、増産によって鎮咳薬・去痰薬の供給は9月末時点との比較で年末までに1割以上増える見通しといますが、さらなる供給増に向けて武見敬三厚労相は11月7日、製造・販売するメーカー24社のトップらを厚労省に集め、直接、増産を要請しました。

 

政府が11月2日にまとめた経済対策では、増産に必要な人員・設備への支援とともに、24年度改定で供給確保に向けた薬価上の措置を検討するとの方針が盛り込まれました。武見厚労相が言う通り「あらゆる手立て」(10月10日の記者会見)を講じる必要があります。

 

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