(写真:ロイター)
[ロイター]エーザイとバイオジェンのアルツハイマー病治療薬「レケンビ」について、米国の公的医療保険「メディケア」は6月1日、完全承認後の保険適用はエビデンス収集のためのデータベースへの登録を条件にすると明らかにした。患者団体やメーカーは、新薬の使用を妨げると反発している。
レジストリ登録を要件に
今回の決定は、米FDA(食品医薬品局)が有効性と安全性を認めて承認した医薬品に対し、メディケアがいわゆるレジストリを通じたデータ収集を要求する初めてのケースとなる。
レケンビは、早期アルツハイマー病患者の認知機能の低下を遅らせることを示した臨床試験の結果に基づき、今年1月にFDAから迅速承認を取得した。FDAの諮問委員会は来週、同薬の完全承認について議論し、7月上旬までに可否を判断する見通しだ。
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65歳以上の米国人を対象とした公的医療保険メディケアは現在、レケンビの保険適用を臨床試験に登録された患者に限定している。メディケアは今回の決定によって同薬へのアクセスを広げることができるとしている。
メディケアは、レケンビを処方する医師に対し、日常診療で同薬がどのように作用するかについて患者のデータの提出を義務付ける。データはメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が管理するポータルを通じて収集される。
CMSの決定は、アミロイドβを標的とするすべてのアルツハイマー病治療薬に適用される。そこには、最近、最終治験で良好な結果が報告されたイーライリリーのドナネマブも含まれる。
エーザイは「CMSがレジストリの詳細を発表するまで、それがレケンビへのアクセスにどのような影響を与えるかを理解するのは困難だ」としながらも、歴史的に見ればこのようなプログラムは、十分な医療サービスを受けられていない地域の患者のアクセスを制限してきたと指摘している。
リリーは、FDAが承認したアルツハイマー病治療薬をメディケアで完全にカバーするよう、CMSは決定を修正すべきたと主張。今回の決定はあらゆる新薬にとって前例になりかねないとの懸念を示した。リリーの広報担当者は「レジストリへの登録を義務付けることは不必要な障壁を生み、すべての受益者を幅広くカバーするというCMSの約束に反する」と述べた。
リリーの幹部は4月、ロイター通信とのインタビューで、有効性を示す新たなエビデンスが明らかになればメディケアは保険適用の制限を見直すだろうと述べていた。
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「不要な障壁」
今回の決定のような「エビデンス開発を伴う保険適用」は珍しく、メディケアはこれまで、こうした方法を医薬品ではなく医療機器を評価するために行ってきた。
アルツハイマー病協会は声明を発表し、「保険適用の条件としての登録は不要な障壁である」と指摘。データ収集そのものは支持するが、FDAが承認した医薬品の保険適用条件としては支持できないと強調した。
FDAとCMSの両方でトップを務めた経験を持つデューク大のマーク・マクレラン博士は、CMSはレジストリの詳細を早く明らかにする必要があると述べた。
ウィリアム・ブレアのアナリスト、マイルズ・ミンター氏は、レジストリ要件が患者のアクセスを大幅に制限するとは考えていないと言う。同氏は「レケンビが最初に投与される可能性がある専門施設では、登録は大きなハードルにならないと見ている」と述べた。
CMSの広報担当者は、レケンビが完全承認を取得した場合、初期のレジストリはCMSが管理することになるが、ほかの組織がデータ収集のために追加のレジストリを構築することを期待していると語った。
(Julie Steenhuysen/Manas Mishra/ Leroy D’souza、編集:Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)