欧米の大手製薬企業19社の2022年の決算を▽売上高・純利益▽研究開発費▽主力製品の売上高▽疾患領域・事業別売上高▽地域別売上高――5つの切り口からチャートで解説します。
【チャートで見る】欧米製薬大手2022年の決算
(1)売上高・純利益・研究開発費 |
アッヴィやリリー、1領域で売上高の半分を稼ぐ
欧米大手製薬企業19社のうち、2022年の決算で疾患領域別・事業別の売上高を公表した15社について、その売り上げ構成をチャートにまとめました。
売上高トップの米ファイザーは、プライマリケアで売り上げの7割を稼ぎました。この領域には、COVID-19ワクチン「コミナティ」(売上高378.06億ドル)やCOVID-19治療薬「パクスロビド」(日本製品名・パキロビッド、189.33億ドル)などが含まれており、領域全体の売上高は前年から40%増加しました。
2位のスイス・ロシュは、オンコロジーと診断薬がそれぞれ3割ほどを占め、残りの4割をその他含む6領域で売り上げている構造です。米ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイス・バルティス、仏サノフィ、英アストラゼネカ、同グラクソ・スミスクラインも、最も売り上げの大きい領域・事業でも全体の2~3割程度となっており、複数の領域で手広く売り上げを上げていることがわかります。
一方、1つの領域で売上高の半分以上を稼いだのは、ファイザーのほか、米アッヴィ、米イーライリリー、米ギリアド・サイエンシズなど。アッヴィは抗TNFα抗体「ヒュミラ」を擁する免疫領域で売り上げ全体の50%を、リリーは古くから得意とする糖尿用領域で51%を売り上げました。ギリアドはHIV治療薬で全体の63%を稼いでいます。デンマーク・ノボ・ノルディスクは、決算上はGLP-1受容体作動薬とインスリンを分けて公表していますが、これらを合わせると糖尿病が全体の77%を占めることになります。
各社注力の「がん」「免疫」「神経」は
近年、力を入れる企業が多い「オンコロジー」「免疫」「神経」の3領域に絞って、各社がどれくらい売り上げを上げているかを見たのが下のチャートです。疾患領域の分け方は企業によって異なるため、チャートに色のついた部分がないからといって必ずしもこれら3領域の売り上げがないというわけではありません。例えば米メルクは「医薬品」「アニマルヘルス」「その他」の3つの区分で売上高を開示しており、チャートに色がついた部分はありませんが、がん免疫療法薬「キイトルーダ」は209.37億ドルを売り上げ、全体の35%を占めています。
チャートを眺めてみると、ロシュ、アッヴィ、J&J、アストラゼネカが、これら3領域(ないしは2領域)で売上高全体の多くの部分を稼いでいることがわかります。リリーも主力の糖尿病に続くのはこれら3領域です。ギリアドは、細胞療法とADC「トロデルビー」を合わせたオンコロジー領域が拡大の緒に就いています。