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ノバルティス、米国の薬価抑制に警告…生物学的製剤優遇で「意図せぬ影響」

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[フランクフルト ロイター]スイス・ノバルティスの幹部が、米国政府による薬価の抑制について、自社にとって最も有望な分野の研究を妨げる可能性があると警告している。この幹部は、公的医療保険「メディケア」による薬価交渉が「意図しない影響」を及ぼしかねないとし、米政府にルールの再考を求めている。

 

米国のバイデン大統領は昨年8月、インフレ抑制法に署名し、メディケアが最も高額な薬剤の一部について製薬会社と価格交渉を行うことを可能にした。この法律では、低分子医薬品は規制当局の承認から9年後に価格交渉の対象となる一方、生物学的製剤は承認後13年間は対象とならない。

 

注力分野の研究開発に打撃

その結果、低分子薬より生物学的製剤を優先するようになった言う製薬企業経営者もいる。しかし、ノバルティスは、薬価抑制によって同社が革新的な強みを持つ分野が特に大きな打撃を受けることになると懸念している。

 

ノバルティスで米国イノベーティブ医薬品部門のプレジデントを務めるビクター・ブルト氏は「議員たちの意図は、一見すると低分子薬より高度に見える生物学的製剤を優遇するということなのかもしれない。しかし、最も有望な治療アプローチのいくつかは前者のグループに属する」と指摘。「この点が、インフレ抑制法で最も懸念される部分だ」とロイターに語った。

 

ブルト氏はさらに、「核酸医薬や放射性リガンド療法といった新しい治療法は、この法律では低分子薬とみなされる。イノベーションと患者の利益のために、法律は変更される必要がある」と付け加えた。

 

米国は、世界で最も医薬品に支出している国だ。米国議会が試算を依頼した超党派グループは、インフレ抑制法の薬価設定規定によって国の赤字が10年間で2370億ドル削減されると予測している。

 

米国市場を最優先

核酸医薬はノバルティスが力を入れている技術の1つで、疾患の原因となる遺伝子を不活性化または無効化するものだ。同社は2021年にコレステロールを低下させるRNAi(RNA干渉)医薬品「Leqvio」の承認を取得した。

 

ノバルティスが注力するもう1つの分野が、前立腺がん治療薬「Pluvicto」をはじめとする放射性リガンド療法だ。この薬は、がん細胞を殺す放射性粒子と、がん細胞に結合する分子を組み合わせることで機能する。

 

ブルト氏は、価格交渉が低分子薬の研究開発を抑制するという「意図しない影響」について、立法府は業界に歩み寄る余地があると指摘している。ブルト氏は「私の希望は私たちの努力にある。価格交渉が患者や業界にどんな影響を及ぼすのか、認識してもらうためにできることは何でもやるつもりだ」と話した。

 

ノバルティスは、インフレ抑制法成立後の昨年9月、世界最大の医薬品市場である米国でのビジネスチャンスを最大限に生かすため、同国での成長を地理的な最優先事項とする方針を発表した。ノバルティスは2027年までに米国でトップ5に入る製薬企業になることを目指している。21年は10位だった。

 

ブルト氏は、疾患領域と創薬技術の追求を選択的に行うことで、欧州での主導的地位を損なうことなく米国に振り向けるリソースを確保できると述べた。

 

(Ludwig Burger、編集:Mark Potter、翻訳:AnswersNews)

 

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