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【2023年の新薬#1】がん領域に2つの新規免疫チェックポイント阻害薬…ジェンマブ、初の自社販売品が承認見込み

更新日

亀田 真由

2023年に国内で発売が見込まれる主な新薬を、領域別に2回に分けて紹介します。1回目は「がん」「代謝・腎」「血液」領域です。

 

 

【がん】ハーセプチン/パージェタ配合皮下注が承認へ

【【がん】2023年に発売が見込まれる新薬】(オレンジは承認済み)(一般名/製品名/社名/申請時期/適応/薬効・作用機序)トレメリムマブ/イジュド点滴静注/アストラゼネカ/22年2月|切除不能な進行・再発非小細胞肺がん/切除不能な肝細胞がん/抗CTLA-4抗体|セミプリマブ/リブタヨ点滴静注/サノフィ/22年3月|がん化学療法後に増悪した進行・再発子宮頸がん/抗PD-1抗体|ペグアスパルガーゼ/―/日本セルヴィエ/22年6月|急性リンパ性白血病/悪性リンパ腫/アスパラギン分解酵素|フチバチニブ/―/大鵬薬品工業/22年7月|局所進行・転移性胆道がん/FGFR阻害薬|トラスツズマブ/ペルツズマブ/―/中外製薬/22年9月|HER2陽性乳がん/がん化学療法後に増悪したHER2陽性大腸がん/抗HER2抗体|エプコリタマブ/ジェンマブ/22年12月|再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫/抗CD3/CD20二重特異性抗体|※各社のパイプラインなどをもとに作成

 

がん領域では、2つの新たな免疫チェックポイント阻害薬が4月にも発売される見通しです。

 

アストラゼネカの抗CTLA-4抗体「イジュド点滴静注」(一般名・トレメリムマブ)は、昨年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」と「切除不能な肝細胞がん」の適応で承認を取得。いずれも同社の抗PD-L1抗体「イミフィンジ点滴静注」と併用します。抗CTLA-4抗体としては、ブリストル・マイヤーズスクイブの「ヤーボイ」に続く2つ目の薬剤となります。

 

サノフィの抗PD-1抗体「リブタヨ点滴静注」(セミプリマブ)も先月、進行・再発子宮頸がん治療薬として承認を取得。米リジェネロンが創製し、サノフィと共同で開発を進めてきました。現在はリジェネロンがグローバルの開発・販売権を持っていますが、日本では同社に代わってサノフィが販売の準備を進めています。

 

中外製薬が昨年9月に申請したトラスツズマブ/ペルツズマブは、抗HER2抗体「ハーセプチン」と同「パージェタ」の固定用量配合皮下注製剤。静注製剤を併用する場合は投与に60~150分かかるのに対し、配合剤は約5~8分で済み、患者や医療従事者の負担軽減が期待されます。米ハロザイムが開発した、抗体の浸透・吸収を促進するヒアルロン酸分解酵素を配合することで皮下注化を実現しました。

 

関連記事:ダラツムマブ 皮下注化の立役者…独自のDDS技術を持つ米バイオ医薬品企業ハロザイムとは

 

国内企業ではこのほか、大鵬薬品工業が自社創製のFGFR阻害薬フチバチニブを胆道がんの適応で申請中。承認されれば、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパンの「ペマジール」に続く2剤目のFGFR阻害薬となります。

 

日本セルヴィエは白血病治療薬を申請中

ジェンマブが昨年12月に申請したエプコリタマブは、CD3とCD20を標的とする二重特異性抗体です。適応は、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫。抗CD38抗体ダラツムマブなどの創製で知られる同社は、エプコリタマブの自社販売で日本市場に本格参入します。

 

関連記事:ジェンマブ、日本市場本格参入へ体制構築…P3に2品目、将来的には「日米同時開発」

 

日本セルヴィエのアスパラギン分解酵素ペグアスパルガーゼは、急性リンパ性白血病と悪性リンパ腫に対する治療薬として申請中です。同剤はペグ化によって半減期を延長したL-アスパラギナーゼの酵素製剤。海外では広く使用されており、厚生労働省からの要請を受けて開発を進めてきました。

 

【代謝・腎】協和キリン 高リン血症に新規リン吸収阻害薬

【【代謝・腎】2023年に発売が見込まれる新薬】(オレンジは承認済み)(一般名/製品名/社名/申請時期/適応/薬効・作用機序/)セマグルチド/―/ノボノルディスクファーマ/―|肥満症/GLP-1受容体作動薬|チルゼパチド/マンジャロ皮下注/日本イーライリリー/21年11月|2型糖尿病/GIP/GLP-1受容体作動薬|ジフェリケファリン酢酸塩/―/丸石製薬/22年9月|血液透析患者におけるそう痒症の改善/κオピオイド受容体作動薬|テナパノル塩酸塩/―/協和キリン/22年10月|透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症/NHE3阻害薬|※各社のパイプラインなどをもとに作成

 

腎領域では2つの新薬が申請中です。協和キリンのテナパノル塩酸塩は、2017年に米アーデリックスから導入した薬剤。NHE3を阻害することで消化管からのリン吸収を抑制する新規作用機序のリン吸収阻害薬です。

 

丸石製薬のジフェリケファリン酢酸塩はκオピオイド受容体作動薬。2013年に丸石製薬が米カラセラピューティクスから導入し、血液透析患者のそう痒を対象にキッセイ薬品工業と共同開発を進めてきました。承認取得後は、キッセイが販売を行います。

 

ノボノルディスクファーマのGLP-1受容体作動薬セマグルチドは、肥満症治療薬として2021年に申請されており、承認の動向に関心が寄せられています。代謝領域では、日本イーライリリーのGIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注」(チルゼパチド)も注目。2型糖尿病治療薬として昨年9月に承認されましたが、11月の薬価収載を見送りました。同薬の販売では田辺三菱製薬とコ・プロモーションを行う予定です。

 

関連記事:肥満治療薬、開発に盛り上がり…リリーやノボ、パイプラインに複数の新薬候補

 

【血液】ノボとサノフィ 血友病に新薬投入

【【血液】2023年に発売が見込まれる新薬】(オレンジは承認済み)(一般名/開発コード/製品名/社名/申請時期/適応/薬効・作用機序)ロペグインターフェロンアルファ-2b/―/ファーマエッセンシアジャパン/22年4月|真性多血症/長時間作用型モノペグ化プロリンインターフェロン|ホスタマチニブナトリウム水和物/タバリス錠/キッセイ薬品工業/22年4月|慢性特発性血小板減少性紫斑病/脾臓チロシンキナーゼ阻害薬|PF-06462700/―/ファイザー/22年6月|中等症以上の再生不良性貧血/抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン|コンシズマブ/―/ノボノルディスクファーマ/22年8月|インヒビターを保有する先天性血友病患者の出血傾向の抑制/抗TFPI抗体|ペグセタコプラン/―/Sobi/Japan/―|発作性夜間ヘモグロビン尿症/補体C3阻害薬/|アバトロンボパグ/―/Sobi/Japan/―|慢性肝疾患の血小板減少症/トロンボポエチン受容体作動薬/エフアネソクトコグ/アルファ/―/サノフィ/22年9月|血友病A/血液凝固第VIII因子製剤|※各社のパイプラインなどをもとに作成

 

血液領域では、多くの新規作用機序を持つ薬剤が発売される見通し。キッセイの「タバリス錠」(ホスタマチニブナトリウム水和物)は、慢性特発性血小板減少性紫斑病治療薬として昨年12月に承認を取得しました。米ライジェルファーマシューティカルズが創製した脾臓チロシンキナーゼ阻害薬で、マクロファージによる血小板の破壊を抑制して出血症状を改善します。ステロイドなどの既存治療で効果不十分な患者の選択肢になると期待されます。

 

血友病では2つの新薬が申請中です。ノボノルディスクファーマのコンシズマブは、抗TFPI(組織因子経路インヒビター)抗体。TFPIを阻害することで血液凝固因子の産生を促して出血を防ぐ薬剤で、インヒビターを保有する先天性の血友病A・血友病B患者が対象となります。サノフィが昨年9月に申請した長時間作用型の血液凝固第VIII因子製剤エフアネソクトコグ アルファは、フォンビレブランド因子に依存しない薬理作用によって半減期を延長した薬剤です。

 

Sobiが2製品を申請…販売は旭化成ファーマ

スウェディッシュ・オーファン・バイオビトラム(スウェーデン)の日本法人Sobi Japanは、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する補体C3阻害薬ペグセタコプランと、慢性肝疾患の血小板減少症に対するトロンボポエチン受容体作動薬アバトロンボパグを申請中。両剤の販売では、昨年9月に旭化成ファーマと提携を結びました。

 

ファーマエッセンシアジャパンの真性多血症治療薬ロペグインターフェロンアルファ-2bは、同社独自の部位選択的ペグ化技術を使った新規の長時間作用型製剤。ファーマエッセンシアにとっては日本で初めて申請した製品となります。このほか、ファイザーが抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン「PF-06462700」(開発コード)を再生不良性貧血の適応で申請中。海外では第1選択薬の1つとされており、厚労省からの要請を受けて開発しました。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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