2021年に世界で最も売れた医薬品は、前年に続いて米アッヴィの抗TNFα抗「ヒュミラ」だったことが、米IQVIAのまとめでわかりました。2位は米ブリストル・マイヤーズスクイブと米ファイザーの抗凝固薬「エリキュース」、3位は米メルクの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」で、上位3製品は前年と同じ顔ぶれ。上位20製品のうち14製品が日本円で1兆円を超える売り上げを記録しました。
ヒュミラ320億ドル、エリキュース213億ドル
米IQVIAが発表した世界の医薬品市場に関する統計データによると、2021年に世界で最も売り上げの大きかった医療用医薬品(新型コロナウイルスワクチンと一部の新型コロナ治療薬を除く)は、米アッヴィの抗TNFα抗体「ヒュミラ」。為替変動の影響を除く伸び率で前年比10.4%増となる320億5500万ドル(約4兆3274億円)を売り上げました。
2位は212億8900万ドル(前年比21.9%増、約2兆8740億円)の抗凝固薬「エリキュース」(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/米ファイザー)、3位は195億7100万ドル(24.3%増、約2兆6421億円)の免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(米メルク)。4位には昨年5位だった乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」(米ジョンソン・エンド・ジョンソン)が入り、5位の糖尿病治療薬「トルリシティ」(米イーライリリー)は昨年の7位から2つ順位を上げました。
上位20製品のうち日本円で売り上げが1兆円を超えたのは14製品。7位の糖尿病治療薬「オゼンピック」(デンマーク・ノボノルディスク)や10位の糖尿病・心不全治療薬「ジャディアンス」(独ベーリンガーインゲルハイム/リリー)などが売り上げを大きく伸ばしました。前年はトップ20圏外だった仏サノフィ/米リジェネロンのアトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント」とスイス・ロシュの多発性硬化症治療薬「オクレバス」(国内未承認)は、それぞれ15位と20位にランクインしています。
一方、昨年17位だった独バイエルの眼科用VEGF阻害薬「アイリーア」と、20位だったJ&Jの抗TNFα抗体「レミケード」はトップ20から姿を消しました。
上位20製品を主な適応の疾患領域別に見ると、最も多かったのは糖尿病と自己免疫疾患の6製品。次に多かったのは5製品のがんで、これら3領域で上位20製品中17製品を占めました。
世界市場は1.3兆ドルに
2021年の世界の医薬品市場(新型コロナウイルスワクチンと一部の新型コロナ治療薬を除く)は1兆3119億ドル(約177兆1065億円)。新型コロナウイルスの感染拡大の影響はあったものの、前年比8.2%増と堅調でした。
疾患領域・薬効別に見ると、最大市場の「がん」は1871億6800万ドル(約25兆2677億円)で前年から11.1%拡大。2位は1294億1800万ドル(12.9%増、約17兆4714億円)の「糖尿病」、3位は1273億4100万ドル(18.0%増、17兆1910億円)の「免疫」でした。
これらを除いて2桁の成長となったのは、5位の「抗血栓薬」(12.0%増)と18位の「漢方・中薬」(10.3%増)。一方、「抗HIV薬」(1.5%減)、「多発性硬化症」(2.4%減)、「ワクチン」(0.3%)は縮小しました。
医療用医薬品と一部の一般用医薬品をあわせた企業別の製品売上高は、J&Jが675億8000万ドル(11.7%増、約6兆5901億円)で2年ぶりにトップ。前年首位のアッヴィが670億8500万ドル(約6兆5647億円)で2位となり、3位は585億5400万ドル(約5兆9688億円)のスイス・ノバルティスでした。
487億2200万ドル(約5兆1864億円)を売り上げたブリストルは前年7位から4位へとジャンプアップ。前年11位だったノボは2つ順位を上げてトップ10に入りました。武田薬品工業は297億2000万ドル(約3兆987億円)で前年と同じ15位でした。