厚生労働省は3月4日、4月に行う2022年度薬価改定を告示した。改定率は医療費ベースでマイナス1.35%(実勢価に基づく改定部分がマイナス1.44%、不妊治療の保険適用への対応部分がプラス0.09%)で、実勢価改定部分は薬剤費ベースでマイナス6.69%に相当する。今回の改定では、いわゆる「G1」の前倒しルールが18成分54品目に初めて適用。新薬創出・適応外薬解消等促進加算は348成分571品目が対象となった一方、65成分145品目が加算の累積額を返還する。
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G1前倒し、AG参入の製品目立つ
G1は後発医薬品の参入から10年たった長期収載品の薬価を後発品の水準まで段階的に引き下げるルール。後発品参入から10年たった時点で置き換え率が80%以上の品目が対象だがが、20年度薬価制度改革では置き換え率が80%以上になれば前倒しで適用できるルールが導入された。今回、前倒しルールの対象となった18成分54品目には、ARB「ブロプレス」「ディオバン」「オルメテック」や高コレステロール血症治療薬「クレストール」、抗アレルギー薬「キプレス/シングレア」「アレグラ」など、オーソライズド・ジェネリック(AG)が販売されている製品が目立つ。バイオ医薬品では国内初となるAGが販売されている腎性貧血治療薬「ネスプ」はG2の区分で前倒しの引き下げを受ける。
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G1の適用を受けるのは全体で109成分267品目、G2は104成分192品目。G1・G2による引き下げの対象とならない長期収載品を補完的に引き下げる「C」は252成分542品目に適用される。
新薬創出加算の対象となったのは90社の348成分571品目で、加算を満額受け取れる企業区分Iは22社、1割減の区分IIは47社、2割減の区分IIIは21社。加算対象が最も多かったのはノバルティスファーマ(24成分40品目)で、武田薬品工業(19成分32品目)、ヤンセンファーマ(19成分30品目)、サノフィ(19成分26品目)と続いた。
後発品の発売などによって加算の累積額を返還するのは65成分145品目。加算の総額は約520億円で2年前の改定から250億円減った一方、加算の返還額は約860億円と110億円増えた。
基礎的医薬品として薬価が維持されるのは323成分1004品目。22年度からは安定確保医薬品で要件を満たした品目も基礎的医薬品に追加され、抗菌薬セファゾリンナトリウム/セファゾリンナトリウム水和物や同メロペネム水和物など8成分69品目が対象となった。不採算品再算定では131成分440品目の薬価が引き上げ・維持される。
用法用量変化再算定のビンダケルは75%引き下げ
市場拡大再算定では、特例が適用された武田薬品工業のPPI「タケキャブ」が15.8%の引き下げ。配合剤の「キャブピリン」も類似品として同率の引き下げを受けるほか、ピロリ除菌用のパック製剤も8.6~11.6%引き下げられる。
通常の市場拡大再算定は17成分33品目が対象となり、ユーシービージャパンの抗てんかん薬「イーケプラ」は錠剤が25.7~25.8%、ドライシロップが22.0%の引き下げ。全品目が対象となったGLP-1受容体作動薬の注射剤(インスリンとの配合剤を含む)は4.4~11.1%の引き下げとなる。
適応拡大に伴う用法・用量の変更によって用法用量変化再算定を受けたファイザーのトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビンダケル」は75.0%の大幅な引き下げ。類似品として対象となった同社の「ビンマック」も76.8%の引き下げを受ける。