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低所得国でのワクチン普及、有効期限の短さがネックに

更新日

ロイター通信

[ブリュッセル/ロンドン ロイター]英アストラゼネカ製ワクチンの比較的短い有効期間が、新型コロナウイルスワクチンの低所得国への普及のネックとなっていることが、ロイターの取材で明らかになった。この問題は、世界保健機関(WHO)が主導し、低所得国にワクチンを届けるCOVAXプロジェクトにとって頭痛の種となっている。

 

富裕国が財政力を背景に大量のワクチンを確保したため、低所得国とCOVAXはワクチンの調達で後れをとっている。ワクチンの生産量が増え、富裕国は余剰分を寄付するようになったが、一部の国、特にアフリカでは大量に届けられるワクチンの扱いに苦慮するようになった。

 

アフリカでは人口の10%程度しか新型コロナワクチンを接種しておらず、富裕国の70%を大きく下回る。ワクチン供給の不平等や接種へのためらいに加え、使用期限の短いワクチンを処理しきれていない。

 

廃棄する国も

使用期限まで数カ月、時には数週間しかない状態で届くことも多く、各国は接種に奔走している。ナイジェリアでは昨年11月、100万回分のアストラゼネカ製ワクチンが廃棄されたが、このようにワクチンが期限切れとなって廃棄せざるを得ない国もある。

 

COVAXのデータや関係者によると、特に問題となっているのは、アストラゼネカ製ワクチンの有効期限の短さだ。ロイターが確認したWHOの内部文書によると、2月6日までの1週間で、中央・西アフリカ19カ国の多くでアストラゼネカ製ワクチンが期限切れとなった一方、ほかのメーカーのワクチンでは期限切れは限定的だった。この週にこれらの国々が申告した期限切れは、アストラゼネカ製が130万回分、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製が28万回分、米モデルナ製が1万5000回分、ロシアのスプートニクが1万3000回だったと文書は示している。

 

アフリカ諸国とCOVAXは今年1月から、使用期限まで2カ月半以内のワクチンを受け入れないとしており、さらに多くのワクチンが廃棄されることになると予想される。

 

WHOアフリカのワクチン専門家、フィオナ・アトゥヘブエ氏は「今年1月以降、COVAXは各国が適切な時期に適切な量を入手できるようワクチンを出荷している」と強調。「インフラが脆弱で、ワクチンに対する需要が少ない中、WHOは使用期限が短いことが配送戦略やシステムに圧力を与えることを十分認識している」と話す。使用期限まで2カ月半以内というのは、アフリカ諸国が受け取ったワクチンを接種するのに必要となる最低限の期間だと考えられている。

 

3分の2が低・中所得国向け

アストラゼネカはCOVAXにとって米ファイザーに次ぐサプライヤーだ。同社によると、ワクチンの供給を開始して以来、2億5000万回分以上が使用期限まで2カ月半を切って出荷されたという。有効期間の短さは、専門知識とインフラを持つ富裕国にとっては問題とならないが、体制の整っていない国は乗り越えられないこともある。

 

アストラゼネカの広報担当者は、同社が貧困国での予防接種を支援する主要な企業であると強調した上で、ワクチンは厳密な品質チェックを受けなければならないと指摘。富裕国からの寄付を含めるとCOVAXでは同社製ワクチンが最も多いとし、「アストラゼネカは世界で26億回分のワクチンを供給しているが、その3分の2は低・中所得国に送られている」と述べた。広報担当者によると、同社の製造拠点から出荷されたワクチンの10本に9本が少なくとも2.5カ月以上の有効期間を残しているという。

 

COVAXやEU(欧州連合)の複数の関係者によると、主な問題はアストラゼネカ製ワクチンがバイアルに詰められてから6カ月間しか有効期限がなく、COVAXの主要な供給元の中で最も短いことだ。加えて、同社の品質チェックにも数カ月かかることがある。

 

COVAXの割り当てシステムは複雑で、ドナーが特定の国にワクチンを配布するよう要請することもあり、有効期間が数週間しか残らないこともある。

 

品質チェックはすべてのワクチンメーカーが行っているが、アストラゼネカ以外のメーカーにとって時間的制約はそれほど問題にならない。WHOが承認した有効期限は、J&J製が冷凍で2年、ファイザーは9カ月、モデルナは7カ月となっている。

 

有効期限延長へ協議

WHOの文書では、アフリカのいくつかの国では、モデルナ製やファイザー製でも数百万回分が無駄になる可能性が指摘されている。保管・配送に必要な冷凍機器の不足が原因だ。

 

WHOとともにCOVAXを運営するGaviは、アストラゼネカに有効期限の延長を申請するよう促しているが、まだ申請には至っていない。同社は、ワクチン製造企業のグローバルネットワークは広大で、プロセスは複雑だとしている。

 

製造パートナーの1つであるインドの血清研究所は、有効期限を9カ月に延長する承認をWHOから受けているが、アストラゼネカが世界のほかの地域で生産しているワクチンは6カ月のままだ。同社の広報担当者は「現在、WHOと協議しているが、この作業は複雑であり、グローバルな製造ネットワーク全体からデータを収集する必要がある」と述べた。WHOの広報担当者はこの協議についてコメントを避けた。

 

Gaviによると、1月末時点でアフリカ諸国は平均して受け取ったワクチンの3分の2を接種しているが、ブルンジでは11%、コンゴでは15%にとどまり、マダガスカル、ザンビア、ソマリア、ウガンダなども3分の1しか使用していない。12月中旬までに配布されたワクチンの0.3%程度が無駄になっているという。Gaviはこれ以上の数字は明らかにしなかったが、その率は上昇する見込みだとしている。

 

( Francesco Guarascio/Jennifer Rigby、翻訳:AnswersNews)

 

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