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米ノババックス、遅れる新型コロナワクチンの展開

更新日

ロイター通信

[ロイター]米ノババックスの新型コロナウイルスワクチンの展開が遅れている。同社は今年、全世界で20億回分の供給を予定しているが、これまで納入されたのはごく一部で、第1四半期に計画されていた欧州や低所得国向けの出荷にも遅れが見られるという。各国でワクチン接種に携わる政府関係者がロイターの取材に明かした。

 

ノババックスは、これまでに約1000万回分のワクチンの納入を完了したといい、今期の契約分を可能な限り早く出荷できるよう取り組んでいるとしている。同社の広報担当者によると、一部の出荷は規制プロセスによって保留されており、物流倉庫で医療機関への配送を待っている状況だという。

 

メリーランド州ゲイサースバーグに本社を構えるノババックスは、これまで製品を発売した経験はなかったが、世界中にワクチンを提供するという野望を持ち、2021年半ばまでにワクチンを届けると公言していた。同社がその目標を逃すと、買い手となる各国政府は米ファイザー/独ビオンテックや米モデルナ、さらには中国の製薬企業に目を向けるようになった。

 

契約見直す国も

欧州連合(EU)、インドネシア、フィリピンへの出荷が遅れているのは、▽世界保健機関(WHO)による承認の遅れ▽製造パートナーであるインド血清研究所の輸出制限▽欧州当局による規制プロセスの遅れ――などが原因だという。遅延により、少なくとも1つの国がノババックス製ワクチンの発注を見直している。

 

ビジネスデータ分析会社の英グローバル・データによると、ノババックスはCOVAX(低所得国のための世界的なワクチン配布プログラム)と最大11億回分の供給について契約を結んでいるが、まだ納入は行われていない。これが実現すれば、同社は世界3位のサプライヤーになる。

 

ノババックスはCOVAXへの供給スケジュールを明らかにしていないが、ロイターの取材に対し、今期の納入は契約の10%を下回る8000万回分程度にとどまるとの見通しを示している。WHOとCOVAXを共同運営しているGAVIワクチンアライアンスの広報担当者は、近くノババックスからワクチンの納入を受ける見込みだとしている。

 

米B・ライリー証券のヘルスケア・アナリスト、マヤンク・マムタニ氏は「数百万人分を出荷する準備ができたと言い続けてきたのに、実際に聞こえてくる数字が違うのは気になる」と話している。英リフィニティブのデータによると、ノババックスは今年、新型コロナウイルスワクチンの販売で約50億ドルを稼ぐと予想されている。

 

ノババックスのワクチンは、WHOとEU、インド、インドネシア、フィリピンなどで承認されている。臨床試験のデータでは、同社製ワクチンは重症化と死亡を90%防ぐことが示されている。

 

低・中所得国に影響

ワシントンDCの研究グループ、戦略国際問題研究所のグローバル・ヘルス・ポリシー担当ディレクターを務めるスティーブン・モリソン氏は、ノババックスが計画通りにワクチンを出荷できない場合、低・中所得国が最も影響を受けることになるだろうと指摘。「COVAXにとってはもちろん、二国間パートナーにとっても痛手となる」と話す。

 

ノババックスは昨年末、インド血清研究所が製造したワクチンのインドネシアへの納入を開始した。インドは同研究所が昨年11月と12月に計約1000万回分をインドネシア向けに出荷したとしているが、匿名のインドネシア当局者は、受け取ったワクチンは約20万回分に過ぎないと明かした。ノババックスは、インド政府がインドネシア向けの出荷分として2000万回分を許可したと発表している。

 

フィリピン政府関係者によると、同国はノババックスに発注した3000万回分のうち、まだ1回分も受け取っていないという。フィリピンの新型コロナワクチン調達責任者のカリート・ガルベス予防接種長官は、ノババックスとの契約について再交渉を行い、同社への発注を減らすことを検討していると述べた。同国は9種類の新型コロナワクチンを承認しており、9600万回分を国家備蓄として保有している。ノババックスは、フィリピンへの納入や契約の見直しについてコメントしていない。

 

ノババックスは今年1月までにEUで新型コロナワクチンを展開すると表明していたが、遅れている。同社の広報担当者によると、インド血清研究所からの最初の出荷分はオランダの物流施設に届けられ、発売のための最終的な規制当局の認可を待っている状態だという。

 

米国では計画から1年遅れで申請

問題に詳しい人物によれば、EUの少なくとも2カ国がノババックス製ワクチンの接種を先送りしたという。同社はインドで製造されたバッチに関する十分な情報を提供しておらず、最終的な認可を得るのは難しいとの見通しを示す関係者もいる。EUと同社の取り決めでは、EUへの最初の供給はインドから行われることになっている。

 

オランダの保健当局は詳細なコメントを避けているが、ノババックス製ワクチンは3月初旬から入手可能になるとしている。同社の広報担当者は「われわれは、テストとリリースが完了すればすぐに出荷できることを期待しており、できるだけそれを早く実現するために取り組んでいる」と述べている。英国でも今月3日に承認されたが、供給がいつ始まるのかは明らかになっていない。

 

ノババックスは先月、当初の計画からほぼ1年遅れで米国で承認申請を行った。グローバル・データの製薬業界アナリスト、ピーター・シャピーロ氏は「製造とロジスティクスの問題が時間とともに改善されるかどうかは疑問だ」と話している。

 

(Carl O’Donnell,/Francesco Guarascio/Neil Jerome Morales、翻訳:AnswersNsews)

 

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