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不祥事に揺れた1年…後発品 供給不安で市場混乱|製薬業界 回顧2021(1)

更新日

前田雄樹

2021年に起こった製薬業界のできごとを2回にわけて振り返ります。

 

 

相次いだ行政処分

2021年、製薬業界は不祥事に揺れた1年となりました。後発医薬品メーカーを中心に承認書から逸脱した不正製造が相次いで発覚。代替需要の急増で玉突き的に供給不足が起こり、市場は大混乱しました。

 

昨年末、抗真菌薬に臨床用量を超える睡眠薬が混入していることが発覚した小林化工は、承認書と異なる方法で不正に医薬品を製造したとして、2月に過去最長となる116日間の業務停止命令を受けました。その後も、3月には日医工に32日間、10月には長生堂製薬に31日間の業務停止命令が下され、後発品に対する信頼は大きく傷つきました。小林化工は、後発品の承認申請資料に虚偽の記載を行っていたことも発覚し、共同開発先のMeijiSeikaファルマ、エルメッド、第一三共エスファとともに業務改善命令を受けました。

 

【2021年に行政処分を受けた製薬企業】<時期><社名><処分内容><主な処分理由>2月/小林化工/業務停止命令(116日間)業務改善命令/承認書と異なる手順で医薬品を製造|3月/日医工/業務停止命令(32日間)業務改善命令/承認書と異なる手順で医薬品を製造|4月/小林化工/業務改善命令/申請資料の虚偽記載|5月/MeijiSeikaファルマエルメッド第一三共エスファ/業務改善命令/申請資料の虚偽記載(小林化工と共同開発)|8月/久光製薬*/業務停止命令(8日間)/規格に適合しない着色料を使用して医薬品を製造|9月/北日本製薬*/業務停止命令(26日間)業務改善命令/承認書と異なる手順で医薬品を製造|10月/長生堂製薬/業務停止命令(31日間)業務改善命令/承認書と異なる手順で医薬品を製造|11月/松田薬品工業*/業務停止命令(65日間)業務改善命令/承認書と異なる手順で 医薬品を製造|日新製薬*/業務停止命令(75日間)業務改善命令/ 承認書と異なる成分分量で医薬品を製造|※*は一般用医薬品。各企業や厚生労働省、自治体の発表をもとに作成

 

不祥事の影響は業界全体に波及し、沢井製薬や東和薬品など代替需要が集中したメーカーも出荷調整を余儀なくされました。日本ジェネリック製薬協会のまとめによると、加盟38社が出荷調整を行っている品目は12月14日時点で2508品目に上っています。供給不安の解消には2〜3年かかるとの厳しい見立てもあり、混乱は当面続きそうです。

 

小林化工は廃業へ

業務停止期間終了後も製造再開の見通しが立たずにいた小林化工は12月、サワイグループホールディングスに生産拠点と関連部門の人員を譲渡すると発表しました。小林化工は、医療上不可欠な一部製品は他社に承継した上で、それ以外の製品はすべて自主回収し、承認整理を行う予定。睡眠薬混入の被害者に対する補償業務は続けるものの、医薬品の製造販売からは撤退し、事実上の廃業となります。

 

一方、19年に摘発された地域医療機能推進機構(JCHO)発注の医薬品入札をめぐる談合事件では、医薬品卸3社とその社員7人が有罪判決を受けました。さらに11月には、国立病院機構発注の医薬品入札でも談合疑惑が浮上し、公正取引委員会が卸6社に立ち入り検査を実施。JCHOを舞台とした談合事件の公判では、医薬品流通の闇が次々と明かされ、医薬品流通をめぐる構造的な問題もあらためてクローズアップされました。

 

初の中間年改定 1万2000品目が対象に

製薬業界にとって今年、大きなトピックとなったのが、4月に行われた初の中間年改定です。薬価収載されている全品目の69%に相当する1万2180品目が対象となり、特許期間中の新薬の59%(新薬創出・適応外薬解消等促進加算品は40%)、長期収載品の88%、後発品の83%で薬価の見直しが行われました。

 

毎年改定のスタートによって、日本市場の停滞は鮮明になっています。米IQVIAが今月発表した最新の世界市場予測によると、2021年の日本の医薬品市場は854億ドルで、17年からの5年間の成長率は年平均0.5%減と主要国で唯一のマイナス成長。向こう5年間も年平均でマイナス2%~プラス1%の低成長が見込まれており、市場規模は26年にドイツに抜かれて世界4位に後退すると予測されています。

 

【医薬品市場/世界上位10カ国】(数値は米国を100とした場合の各国の市場規模を指数化したもの)<2016年><2021年><2026年予測〉1/米国/100.0/米国/100.0/米国/100.0/2/中国/27.6/中国/29.2/中国/29.3/3/日本/19.2/日本/14.7/ドイツ/12.3/4/ドイツ/10.5/ドイツ/11.1/日本/11.9/5/フランス/7.9/フランス/7.2/フランス/7.1/6/イタリア/6.9/英国/6.3/ブラジル/7.0/7/英国/6.0/イタリア/6.3/英国/6.8/8/スペイン/5.0//ブラジル/5.5/イタリア//6.2/9/カナダ/4.7/スペイン/5.1/インド/5.6/10/ブラジル//4.0/カナダ/4.7/スペイン/5.0|※米IQVIA「The/Global/Use/of/Medicines/2022/OUTLOOK/TO/2026」をもとに作成

 

魅力失う日本市場

9月に公表された8年ぶりの改訂となる「医薬品産業ビジョン2021」では、中長期的に目指す医薬品産業の方向性として「革新的創薬」と「品質確保・安定供給」を掲げ、その実現には「投資に見合った適切な対価の回収の見込みが重要」と踏み込みました。

 

一方、海外の製薬業界団体からは「日本の医薬品市場は魅力的とは言い難い。イノベーション評価と薬価の引き下げのバランスが取れておらず、ドラッグラグの再燃も危惧される」(米国研究製薬工業協会のジェームス・フェリシアーノ在日執行委員会委員長)との声も上がっています。7月には、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が4度目の大幅な薬価引き下げを受けることになったMSDが「このような薬価引き下げが今後も続くなら、継続的な開発投資が難しくなる」などと見直しを訴える異例の記者会見を行ったことも話題となりました。

 

コロナワクチン「国産」なお時間

2年目に入ったコロナ禍は、今年も社会に大きな影を落としました。国内では夏場の「第5波」以降、感染拡大は落ち着いていますが、世界の感染者数は10月下旬から再び拡大。足元では、11月に初めて報告された新たな変異株「オミクロン」が急速に広がっており、まだまだ予断を許さない状況が続きます。

 

国内では2月に米ファイザー/独ビオンテックのmRNAワクチン「コミナティ」が承認され、医療従事者を皮切りに接種がスタート。5月には米モデルナの同「スパイクバックス」と英アストラゼネカのウイルスベクターワクチン「バキスゼブリア」が承認されました。政府のまとめによると、12月23日時点の2回接種率は77.7%で、先行していた米国や英国を上回っています。

 

感染の再拡大を食い止めようと、先進国を中心に追加接種を急ぐ動きが広がっており、日本でも12月から3回目の接種がスタート。一方、低所得国ではワクチン接種が進んでおらず、新たな変異株が生まれるリスクは存在し続けています。コロナ収束に向けては、世界規模で流行を抑える必要があり、「ワクチン格差」の解消が大きな課題となっています。

 

一方、この1年で治療薬が充実したことは明るい話題です。国内では今年、▽JAK阻害薬「オルミエント」(重症向け)▽抗体カクテル製剤「ロナプリーブ」(軽症から中等症向け)▽中和抗体製剤「ゼビュディ」(同)▽経口抗ウイルス薬「ラゲブリオ」(同)――が承認されました。特に、経口抗ウイルス薬に対する期待は高く、日本政府はラゲブリオを160万人分、ファイザーが開発したパクスロビドを200万人分確保しています。

 

【今年承認された新型コロナ治療薬】<製品名一般名><社名><薬効><対象患者><承認日>オルミエント*/バリシチニブ/日本イーライリリー/JAK阻害薬/重症/4月23日|ロナプリーブ/カシリビマブ/イムデビマブ/中外製薬/抗体カクテル/軽症~中等症/7月19日/発症予防/11月5日|ゼビュディソトロビマブ/グラクソ・スミスクライン/中和抗体/軽症~中等症/9月27日|ラゲブリオモルヌピラビル/MSD/経口/抗ウイルス/薬軽症~中等症/12月24日|※*は適応拡大。各社のプレスリリースなどをもとに作成

 

試される国の本気度

国内メーカーによる開発も進展しましたが、いまだ実用化には至っていません。ワクチンでは、塩野義製薬(組換えタンパクワクチン)とKMバイオロジクス(不活化ワクチン)が臨床第2/3相(P2/3)試験に進み、第一三共(mRNAワクチン)もP2試験をスタート。実用化は早くても来年春以降となる見通しです。

 

コロナワクチンの開発が遅れた反省を踏まえ、政府は6月に国産ワクチンの開発・生産体制の強化に向けた新戦略を閣議決定。先端研究拠点の整備や製造設備への支援などを盛り込みました。ワクチンの研究開発をめぐる課題は、10年前の新型インフルエンザ流行時にも指摘されていたことであり、「周回遅れ」を挽回できるか、国の本気度が試されます。

 

【2021年/製薬業界の主なできごと(1~6月)】1月/「オノアクト」を使用する見返りに、三重大付属病院の元教授に奨学寄付金として現金200万円を提供したとして、津地検が小野薬品工業の社員2人を逮捕(27日)。6月29日に津地裁で執行猶予付き有罪判決/帝人がジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)にTOB(株式公開買い付け)を行うと発表(29日)。TOBは3月に成立し、J-TECは帝人の連結子会社に|2月/承認書と異なる方法で医薬品を製造したとして小林化工に116日間の業務停止命令(9日)/ファイザーの新型コロナウイルスワクチンが特例承認(14日)。17日から接種がスタート/武田薬品工業、「ネシーナ」など糖尿病治療薬4製品を帝人ファーマに譲渡すると発表(26日)。4月1日付で販売移管|3月/承認書と異なる方法で医薬品を製造したとして日医工に32日間の業務停止命令(3日)/初の中間年改定となる2021年度薬価改定が告示。薬価収載されている全医薬品の約7割にあたる1万2180品目が対象に(5日)/武田薬品、OTC子会社・武田コンシューマーヘルスケアの売却が完了。売却先は米ブラックストーン・グループで、「アリナミン製薬」に社名変更(31日)|4月/あすか製薬と沢井製薬が持ち株会社体制に移行(1日)/小林化工が過去に行った医薬品の承認申請で安定性試験の実施日を改ざんするなどの不正があったことが発覚(16日)。4月28日には業務改善命令を受け、不正のあった12製品は承認が取り消された/JAK阻害薬「オルミエント」(日本イーライリリー)が新型コロナ肺炎治療薬として承認(23日)|5月/モデルナとアストラゼネカの新型コロナワクチンが特例承認(21日)/小林化工が申請資料に虚偽の記載を行っていた問題で、共同開発先の後発品メーカーに業務改善命令(21日)/ヤンセンファーマが新型コロナワクチンを申請(24日)6月/「ワクチン開発・生産体制強化戦略」が閣議決定(1日)/アステラス製薬が早期退職の募集を発表(3日)/米メルクから婦人科など3事業を分社化して設立されたオルガノンが米ニューヨーク証券取引所に上場(3日)。日本法人も同日付でMSDから独立/バイオジェンとエーザイのアルツハイマー病治療薬「アデュヘルム」が米国で迅速承認(8日)/国内初の腫瘍溶解性ウイルス製剤「デリタクト」(第一三共)が承認(11日)/エーザイ、ADC「MORAb-202」の開発・商業化で米ブリストル・マイヤーズスクイブと提携。一時金6.5億ドル、開発・販売マイルストン最大24.5億ドル(18日)/新型コロナワクチンの職域接種がスタート(21日)/地域医療機能推進機構発注の医薬品入札をめぐる談合事件で、独占禁止法違反の罪に問われた医薬品卸3社とその社員7人に東京地裁が有罪判決(30日)

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
塩野義製薬
第一三共

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