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【新型コロナ】経口抗ウイルス薬、臨床試験で相次ぎ好結果…メルクに続きファイザーも使用許可申請へ

更新日

ロイター通信

米メルクに続き、米ファイザーも新型コロナ向け経口抗ウイルス薬の良好な臨床試験結果を発表した(ロイター)

 

[ロイター]米ファイザーは11月5日、開発中の新型コロナウイルス感染症向け経口抗ウイルス薬パクスロビドが、重症化リスクがある成人患者の入院・死亡リスクを89%減少させたと発表した。

 

この試験結果は、パクスロビドが米メルクのモルヌピラビルを上回るものであることを示唆している。メルクは先月、モルヌピラビルが重症化リスクのある新型コロナ患者の入院・死亡リスクを半減させたと発表している。

 

ファイザーのパクスロビドは、米国の規制当局から年内に緊急使用許可を得る可能性がある。同薬の臨床第2/3相試験は高い有効性によって早期中止された。試験のすべてのデータはまだ明らかにされていない。

 

最悪の結果から人々を守るツールに

米国のジョー・バイデン大統領は、米国政府がファイザーの経口抗ウイルス薬を数百万回分確保していることを明らかにした。バイデン氏は「FDA(食品医薬品局)が使用を許可すれば、経口薬はすぐに入手可能になる」とし、「この治療法は、新型コロナによる最悪の結果から人々を守るツールの一つとなるだろう」と述べた。

 

パクスロビドの試験結果発表を受け、ファイザーの株価は9%上昇した一方、メルクの株価は9.3%下がった。ワクチンメーカーの株価も打撃を受け、米モデルナ、独ビオンテック、米ノババックスは13~21%下落した。

 

パクスロビドは抗ウイルス薬リトナビルと併用して投与され、1日2回投与する。

 

ファイザーのアルバート・ブーラCEOはインタビューで「我々の目標は、世界中のすべての人ができるだけ早くこの薬を手に入れられるようにすることだ」と述べている。ブーラ氏によると、高所得国への販売価格はメルクのモルヌピラビルと同程度になると予想される。米国政府がメルクと結んだ契約では、モルヌピラビルの価格は5日間の治療で約700ドルとなっている。ブーラ氏は、低所得国では「アクセスの障壁とならない」ことを目標に、いくつかの選択肢を検討しているとした。

 

モルヌピラビルは11月4日、英国の規制当局から世界初の承認を取得した。感染症の専門家によれば、モルヌピラビルやパクスロビドには期待できるが、ワクチンを普及させて感染を防ぐことがパンデミックを抑制する最善の方法であることに変わりない。

 

米スタンフォード大医学部小児科のグレース・リー博士は「このパンデミックでは、ワクチンが最も効果的で信頼できる手段となる」と指摘。「治療薬は、重症化や入院、死亡のリスクを減らす能力を強化するものだ。これは非常に重要なことだが、感染を防ぐことはできない」と話す。

 

全世界で70億回以上のワクチン接種が行われているが、それでカバーされているのは世界の人口の約半分に過ぎない。米国では、成人の70%、全人口の58%が2回のワクチン接種を完了している。新型コロナの新規感染者は世界で毎日40万人を超え、50カ国で感染者が増加している。

 

みずほ証券のアナリスト、バミル・ディバン氏は、経口抗ウイルス薬の登場がワクチン接種に及ぼす影響は「ごくわずか」と見ている。

 

25日までに米当局へデータ提出

ファイザーは11月25日の感謝祭休暇までに、FDAにパクスロビドの臨床試験の中間解析結果を提出する予定だ。

 

同社は年内に18万人分を製造し、来年末までに少なくとも5000万人分、このうち来年前半に2100万人分の製造を見込んでいる。ブーラ氏は、予想を上回る臨床試験の結果を受け、来年の生産量を倍増させる可能性を検討していると述べた。

 

抗ウイルス薬の効果を最大限発揮させるには、発症後できるだけ早く投与する必要がある。

 

パクスロビドの臨床試験では、軽症から中等症の新型コロナと診断され、肥満や高齢といった重症化のリスク因子を1つ以上持っている人を対象に、入院や死亡への影響を調べた。

 

その結果、発症3日以内にパクスロビドを投与した患者は、プラセボを投与した患者に比べて入院や死亡のリスクが89%低かった。パクスロビド群では治療開始後28日までに入院した患者が0.8%、死亡した患者はゼロだったのに対し、プラセボ群では7%が入院し、7人が死亡した。

 

発症5日以内に投与を開始した患者についても同様の結果だった。発症5日以内にパクスロビドを投与した患者の入院率は1%だったのに対し、プラセボ群では6.7%が入院し、10人が死亡した。ファイザーの発表によると、発症5日以内に治療を始めた場合、入院や死亡を防ぐ効果は85%だった。

 

ブーラ氏によると、パクスロビドのほかの2つの試験(重症化リスク因子を持たない人を対象とした試験と、ウイルスに曝露したが発症していない人を対象とした試験)は継続中で、これらの結果は来年の第1四半期には得られる見込みだという。

 

ファイザーは副作用の詳細を明らかにしていないが、有害事象は実薬群とプラセボ群の両方で約20%の患者に見られたという。考えられる副作用としては、吐き気や下痢などがある。

 

FDAの諮問委員会は11月30日に会合を開き、メルクのモルヌピラビルについて議論する予定だ。ファイザーは、その会合でパクスロビドが検討されるかは不明だとしている。

 

(Deena Beasley、翻訳:AnswersNews)

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