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キャリア自律で促す「ワーク・ライフ・ベスト」の先|エーザイ【連載】キャリア自律を考える(4)

更新日

亀田真由

終身雇用や年功序列といった日本型雇用モデルの土台が揺らぐ中、「キャリア自律」という考え方が日本でも広がってきました。「安定産業」と言われてきた製薬業界も例外ではなく、競争の激化や相次ぐ早期退職を背景に、雇い手と働き手の双方で意識改革が進んでいます。働く個人が自らのキャリアを主体的に考え、築き上げていくために、企業は、働く人は、何を意識し、どう取り組んでいけばいいのか。そのヒントを探ります。

 

■連載「キャリア自律を考える」

【1】私のキャリア、私の手で

【2】社員とつくる人事制度|MSD

【3】人の数だけキャリアがある|シミック・アッシュフィールド

【4】キャリア自律で促す「ワーク・ライフ・ベスト」の先|エーザイ

 

コロナ禍で柔軟な働き方が浸透

エーザイのコーポレートストラテジー部でグローバル事業開発リードを務める平松万里子さんは、提携やパートナリングのために海外を飛び回る傍ら、5歳と3歳の2人の子どもの母親としての顔も持っています。

 

平松さんが第一子を出産して職場復帰したのは2017年春。その後、週1回、在宅勤務できる制度が導入されましたが、すぐには浸透せず、朝早く出社し、夜遅くに帰宅する生活の中で、子どもの顔を見られない日もあったといいます。新型コロナウイルスの感染拡大も契機となり、在宅勤務の日数制限が取り払われ、フレックスタイム制度のコアタイムも廃止となったことで、以前と比べて家族と過ごす時間が増えたそう。

 

「今は、少なくとも朝の食事を子どもと一緒にとる生活を送れています。海外に出張するときは夫や実家の力を借りるなど、周囲のサポートを受けながら育児をしつつ、やりがいを感じる仕事をさせてもらっています。正直『ああもう大変』という日も多いですが、仕事か育児かのどちらかではなく、両方できるのが私にとってベストな状態なんだろうなと感じています」(平松さん)

 

2019年から「長時間労働撲滅」の取り組みを強化しているエーザイ。時間外労働の削減や休暇取得の推進などに力を入れてきましたが、コロナでリモートワークが急速に普及したのに合わせ、社員一人ひとりが働く場所や時間を自ら決めることができる働き方にシフトしました。単に100%を上限にワークとライフのバランスを考えるのではなく、ワークとライフの双方を高めていく「ワーク・ライフ・ベスト」をコンセプトに、制度の拡充やオフィスのリノベーションなど、環境の整備を進めています。

 

働き方改革を支える学び方改革

そんな同社が昨年から進めているのが、働き方改革を支える「学び方改革」です。「多様な働き方の基本となるのは社員の自律です。働く場所や時間の選択肢が広がったので、学ぶ機会についてもそうあるべきと考えました」。人財開発本部タレントディベロップメント部の新庄浩子部長は、その背景をこう説明します。

 

従来は対面で行っていた集合型研修をリモートに切り替え、社員が自らタイミングやカリキュラムを設定する形に変更しました。「自分に合った研修を選ぶには、自己認識力が必要です。必然的に自律性も高まってくるのではないかと期待しています」と新庄さん。結果的に、地方にいる社員にも本社と同じ研修の機会を提供できるようになりました。

 

さらに、自己啓発や社会貢献活動のために活用できる特別有給休暇制度や、私費留学のための休暇制度も導入。こうした取り組みが評価され、同社は今年の「プラチナキャリア・アワード」(主催・三菱総合研究所、後援・厚生労働省)で特別賞を受賞しました。

 

人財開発本部労務政策部企画・健康推進グループの大貫恵介グループ長は、「これまでのような会社主導のキャリア形成では、どうしても社内の人材の同質性が高まり、ブレークスルーが起こりにくくなる。会社としてイノベーションを目指す中、主体的なキャリア形成にシフトしてきたのはある意味必然でした」と話します。同社は中期経営計画で、異業種や自治体とのパートナリングでエコシステムを作り上げることを目標に掲げており、人材の多様性はその推進に欠かすことのできない要素の1つです。

 

研修に飛び込みグローバルの道へ

社員の主体性を尊重し、人材育成では社内公募を積極的に活用しています。現在、米国子会社に出向中の小泉慶吾さんは、国内営業部門を対象とする公募選抜制グローバルリーダーシップ育成プログラム「エーザイジャパングローバルチャレンジ(EJGC)」に参加したことがきっかけとなり、海外勤務のチャンスをつかみました。

 

08年に新卒入社した小泉さんは、MRとして9年働いた後、17年に抗てんかん薬のプロダクトマネージャーに転身。以来、現在までニューロロジー分野の製品のマーケティングに携わっています。EJGCに参加したのは15年のことで、そこから、海外駐在を目標にキャリアを考えてきました。EJCGに手を挙げる前は、海外勤務の具体的なイメージが持てずに二の足を踏んでいたそうですが、周囲に背中を押してもらい、グローバルを意識する環境に飛び込んだと話します。

 

「研修では、2週間ほど欧州で業務を体験しました。すでにプロダクトマネージャーになっていた頃で、先行して販売を開始していた欧州の担当者から経験を聞き、知恵を貰う機会にもなりました」と小泉さん。当時、小泉さんが担当していたのは国内向けのマーケティングでしたが、国際学会への参加や海外KOLへの講演依頼など、機会を活かし、社内外でグローバルな人財交流を積極的に行うようにしたといいます。

 

20年に米国駐在員としてニューロロジー関連の新設ポストに配属されたのも、海外勤務の希望を伝え続けていたから。「今の仕事は米国のドメスティックな仕事がメイン。次はグローバルに携わる業務に就きたいと考えています」と、次の目標を見据えています。

 

米子会社に出向中の小泉慶吾さん

 

30代で管理職として起用された平松さんも、入社3年目の2010年に現在の「グローバルモビリティ(国際間人事異動)」にあたる短期派遣プログラム「E-SMILEプログラム」に参加。半年間、米国の子会社に勤務しました。

 

現在グローバル事業開発に従事する平松さんは、研究者としてキャリアをスタート。はじめから研究者一本で行くつもりはなかったといい、1年後には異動し、2度の育児休業を挟みつつ事業開発でキャリアを重ねてきました。結婚後の12~15年には出向先の英国子会社に単身赴任し、EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の事業開発を担当。その間、私費留学でMBAを取得しました。

 

「いつかは駐在や留学に挑戦したいと考えていましたが、周囲に話を聞くと、『駐在となると若くても30代後半から』と言われました。留学も当時は男性が中心で、女性にはなかなかチャンスがなかったんです」。E-SMILEに参加した当時、入社3年目で20代後半だった平松さん。「あと10年待たないとチャンスが来ないのかな」とくすぶる気持ちだったそうですが、親しい先輩からE-SMILEのことを聞き、翌日には上司に相談。米国での勤務を実現させました。

 

コーポレートストラテジー部グローバル事業開発リードの平松万里子さん

 

E-SMILEを発展させ13年に開始したグローバルモビリティは、これまでに80人近くの国内外の社員が参加しているそう。これ以外にも、グローバルリーダーの育成に向け、指名選抜式の「E-GOLDプログラム」や、小泉さんも参加した「E-ACEプログラム」などが用意されています。

 

置かれた立場でできることを追求する

小泉さんと平松さんに共通するのは、自らの目指すキャリアを周囲に伝えるとともに、目指すキャリアを実現するため、置かれた立場でできることを追求してきた姿勢です。「与えられた仕事をただこなすのではなく、常に自分が何をしたらいいか考える。そうした1つひとつの積み重ねが(主体的な)キャリア形成につながるのだと思います」と小泉さんは話します。

 

社員自ら希望を表明する機会の1つが社内公募「ジョブチャレンジ制度」です。小泉さんの同期にあたる田中直樹さんは、制度が導入された2016年、MRから経理への転身を希望しました。本社や、国内子会社に出向して財務会計の経験を積み、現在は本社コーポレートプランニング部で管理会計を担当しています。

 

会計士や商社の経理部に勤める友人の影響で、以前から経理の仕事に興味があったという田中さん。連結決算を担当したことで、「社外でも活躍できる力、エンプロイアビリティが身についた」と自信を見せます。自身の経験を周囲に還元するため、ジョブチャレンジ制度の活用を考える後輩の相談にも乗っています。

 

コーポレートプランニング部の田中直樹さん

 

人財開発本部の大貫さんも、「今いる環境を離れ、自分の能力を試してみることで、これまでにない思考回路や価値観を醸成できる。それが、結果として社外に通用する自律した個を育てますし、社員自身のネットワーク拡充、自己成長にもつながるのではないかと考えています」と、組織の枠を越えていくことの重要性を強調します。今後は、田中さんが活用したジョブチャレンジ制度を国外に適用したり、社内外への留学・留職を加速させたり、といったことを考えているそう。

 

平松さんは、提携先の外資企業や国内外のベンチャーキャピタルなどと接点を持つことで、自然と主体的なキャリア観ができ上がってきたといいます。「事業開発では、常に社外の人やエーザイの海外拠点のメンバーと接する機会があります。貪欲にキャリアアップを目指す彼らに刺激を受け、自分も取り残されないようしっかり考えなければ、という危機感が生まれました」(平松さん)

 

キャリアも人生も話せる職場に

これまで、働き方改革の一環として長時間労働の是正や休日・休暇取得推進に取り組んできたエーザイ。コロナもきっかけに就労環境に関する制度が拡充しつつあり、平松さん同様、小泉さんと田中さんも父親として子どもと接する時間が増えたと口を揃えます。

 

一方で、本社で働く田中さんは、「トップマネジメント層に近い組織ということもあって、まだまだメンバーは仕事中心になりがちです」と明かします。現在は、それぞれが”ライフ”を意識できるよう、田中さんが中心となって組織内でエンゲージメント向上のための働き方改革を進めている真っ最中。米国赴任前はマーケティング部でニューロロジーアクセスリードとして13人の部下を抱えていた小泉さんは、当時、キャリアだけでなく人生の目標についても話す機会を作るよう心がけていたと話します。「上司と部下の間だけでなく、職場でそういったことが話せる雰囲気が作れれば、ワーク・ライフ・ベストにつながっていくのではないかと感じています」(小泉さん)

 

こうした、職場レベルでキャリア自律を醸成する風土こそ、エーザイが目指すもの。「キャリア自律のベースは上司とメンバーのコミュニケーション」という新庄さんは、学び方改革を進める上でも、「日常での体験、学びについての振り返りの対話を十分にとることが大切だ」と強調します。

 

「学び方改革では、個人のキャリア観に基づいて自分で選ぶプログラムを増やしていますが、1人で参加した場合でも、職場に持ち帰って周囲と共有してほしいと話しています。もちろん、上司にもメンバーが何を学んだのか認知してあげてほしい」(新庄さん)

 

今年4月、同社は「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)2021」として、2030年度までを計画期間とするアクションプランを策定しました。「D&Iの真価は、1人ひとりの社員が自律して初めて発揮できるもの」と新庄さん。「異質な価値観を持つ人や、外で学びを得た人が浮いてしまうことなく、多様な個がぶつかりあって新しい価値を生む組織づくりにチャレンジしていきたい」と力を込めました。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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