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メルクの経口抗ウイルス薬、新型コロナ治療「大きく前進」高まる期待

更新日

ロイター通信

米メルクが開発中のモルヌピラビル(同社提供)

 

[ロイター]米メルクが開発中の経口抗ウイルス薬モルヌピラビルが、重症化リスクのある新型コロナウイルス感染症患者の入院や死亡のリスクを半減させたとする臨床試験データが発表された。専門家らは、同薬が新型コロナの治療に画期的な進歩をもたらす可能性があると評価している。

 

切実な必要性

モルヌピラビルが承認されれば、新型コロナに対する初の経口抗ウイルス薬となる。メルクとそのパートナーである米リッジバック・バイオセラピューティクスは、可能な限り早期に米国で緊急使用許可(EUA)を求め、各国の規制当局に承認申請を行う予定だとしている。

 

ジョンズ・ホプキンス・センター・フォー・ヘルス・セキュリティの上級研究員であるアメシュ・アダルジャ氏は「入院リスクに大きな影響を与えるこの経口抗ウイルス薬はゲームチェンジャーになるだろう」と述べている。

 

現在の新型コロナ治療薬には、米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビルやステロイド薬デキサメタゾンなどがあるが、いずれも入院してから投与するのが一般的。メルクのロバート・デイビスCEOはロイターに対し「モルヌピラビルは、新型コロナの管理方法をめぐる対話を変えることになるだろう」と話した。アダルジャ氏は「既存の治療法は管理が煩雑で、ロジスティックにも困難がある。シンプルな経口薬は、その逆になる」としている。

 

モルヌピラビルの臨床第3相(P3)試験データの発表後、メルクの株価は9%上昇した。結果は非常に強力で、外部モニターの勧めによって試験は早期に中止されることになった。別のコロナ向け経口抗ウイルス薬を開発している米アテア・ファーマシューティカルズの株価も、メルクの発表を受けて21%以上上昇した。

 

一方、新型コロナワクチンを手掛ける米モデルナの株価は10%以上下落した。同じくコロナワクチンを製造販売する米ファイザーの株価は1%未満の下落にとどまった。米証券会社ジェフリーズのアナリスト、マイケル・イー氏によると、投資家らは経口薬が実用化されればワクチンの需要が低下するのではないかと考えているという。

 

新型コロナに対する経口抗ウイルス薬は、ファイザーやスイス・ロシュも開発を進めている。今のところ、入院していない新型コロナ患者向けに承認されているのは、点滴で投与する抗体カクテルだけだ。

 

ホワイトハウスの新型コロナ対策コーディネーターを務めジェフ・ザイアンス氏は10月1日、「モルヌピラビルは、新型コロナによる最悪の結果から人々を守る追加的なツールになる可能性がある」としつつ、「それでもワクチン接種が最良のツールであることに変わりはない」と述べた。

 

重症化リスクのある軽症から中等症の患者775人を対象にしたP3試験の中間解析によると、モルヌピラビルを1日2回5日間投与した群では7.3%が入院し、投与後29日目までに死亡した患者はいなかった。これに対し、プラセボ群では14.1%が入院し、8人が死亡した。

 

リッジバックのウェンディ・ホールマンCEOは「新型コロナによる入院を防ぐには、自宅で服用できる抗ウイルス治療が切実に必要だ」と話している。

 

年内に1000万人分を生産

新型コロナによる死者は世界で500万人を超えた。専門家らは、重症化を防ぐ新たな治療法の可能性を歓迎している。オックスフォード大のピーター・ホービー教授(振興感染症学)は「安全で効果的かつ安価な経口抗ウイルス薬は、新型コロナとの戦いを大きく前進させるだろう」と述べている。

 

モルヌピラビルのP3試験は、発症から5日以内の患者を対象としている。参加した患者は、肥満や高齢といった重症化のリスク因子を少なくとも1つ持っていた。

 

モルヌピラビルと同じクラスの薬剤は、動物実験で先天性欠損症との関連が指摘されている。メルクは、モルヌピラビルを使った動物実験はヒトよりも長期間、高用量で行っており、同薬が哺乳類のDNAに影響を与えないことが示されているとしている。

 

メルクによると、モルヌピラビルは現在確認されているすべての変異株に有効だという。

 

有害事象の発生率は、モルヌピラビル群とプラセボ群で同等だったとされるが、詳細は明らかになっていない。メルクは、モルヌピラビルがヒトの細胞に遺伝的な変化を引き起こすことはないとのデータを発表している。一方、被験者には、異性間性交渉を控えるか適切な避妊を行うことへの同意が求められ、妊娠中や授乳中の女性は参加できなかった。

 

メルクは年末までに同薬を1000万人分製造する予定で、米国政府とは1人あたり700ドルで170万人分を供給する契約を結んでいる。デイビスCEOによると、メルクは米国以外の政府とも同様の契約を結んでおり、さらに多くの国の政府と供給に向けた交渉を行っているという。メルクは、国の所得水準に応じた段階的な価格設定を計画している。

 

米国の保健当局者はロイターに対し、米国政府は必要に応じて最大350万人分を追加購入するオプション権を持っていると明かした。

 

メルクは、インドに拠点を置く後発医薬品メーカー数社にライセンスを供与することでも合意している。これらのメーカーは、低・中所得国向けの供給を担う。

 

メルクの関係者によると、EUAに向けた米FDA(食品医薬品局)の審査にどれくらいの時間がかかるかは不明だ。ただ、同社研究所長のディーン・リー氏は「FDAはこの件について迅速に作業を進めようとしている」と話している。

 

(翻訳:AnswersNews)

 

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