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ペプチドリーム、放射性医薬品事業買収で製造販売に参入も「大きな戦略変更ではない」

更新日

前田雄樹

ペプチドリームが、富士フイルム富山化学から放射性医薬品事業を買収します。初期開発までにフォーカスする従来の戦略から一転、研究から販売まで製薬企業としての機能をフルで持つことになりますが、「大きな戦略の変更だとは考えていない」(金城聖文副社長)といいます。その意味するところは。

 

 

「放射性医薬品はペプチドとの相性がいい」

ペプチドリームは9月2日、富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学から放射性医薬品事業を買収すると発表しました。来年3月に富士フイルム富山化学が同事業を吸収分割で新会社に承継し、ペプチドリームがその全株式を取得。買収の対価は一時金として305億円を見込み、事業の進捗に応じたマイルストンを追加で支払う可能性があります。

 

ペプチドリームは特殊ペプチドによる創薬技術に強みを持ち、近年は薬物をペプチドに結合させて狙った標的に届ける「PDC(Peptide Drug Conjugate=ペプチド薬物複合体)」の研究開発に注力。PDCはすでに同社の研究開発プログラムの3割を占めるといい、放射性医薬品の分野では、2018年以降、スイス・ノバルティスや独バイエル、日本メジフィジックスなどと相次いで提携し、放射性核種をペイロードとするPDCの研究開発に取り組んでいます。

 

ペプチドリーム/PDCの提携先/2016/2017/2018/2019/2020/2021年 /BBB通過/TfRペプチド/JCRファーマ/武田薬品工業(神経筋疾患)/武田薬品工業(CNS疾患)/その他/塩野義製薬/核酸医薬品/米アルナイラム/がん免疫療法(ARMなど)/米クリオ/米バイオヘブン/診断薬(PET/イメージング)/米ブリストル/独バイエル/放射性医薬品(β線/α線)/日本メジフィジックス/スイス・ ノバルティス/米レイズバイオ/放射性医薬品領域/※ペプチドリームの説明会資料をもとに作成/

 

ペプチドと組み合わせることで可能性が広がる

ペプチドリームの金城聖文副社長は9月2日の説明会で、「放射性医薬品はペプチド技術と相性がいい」と買収の意義を語りました。金城氏は、標的に選択的にペイロードを運ぶことができ、化学修飾によって動態を容易にコントロールすることが可能といったペプチドの「運び屋」としての特徴を組み合わせれば、エネルギーが強い放射性核種でも正常細胞への影響を最小限に抑えて薬にすることができると指摘。「パワフルだけれどリスクの高い核種をしっかりとコントロールできるペプチドと組み合わせることで、放射性医薬品の可能性は広がっていく」と話しました。

 

奇しくも富士フイルム富山化学は今年6月、ペプチドホルモンであるソマトスタチンの類似物質にβ線を発する放射性同位元素ルテチウム177を標識した放射性治療薬「ルタテラ」(一般名・ルテチウムオキソドトレオチド〈177Lu〉)の承認を取得したばかり。ペプチド受容体放射性核種療法剤としては国内初の薬剤で、「ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍」を対象に今月29日に販売を開始する予定です。富士フイルム富山化学の放射性医薬品事業は2022年3月期に売上高155億円、営業損益は5億円の赤字を見込んでいますが、ペプチドリームはルタテラの販売やそれに続く製品の開発などによって収益貢献を狙います。

 

ペプチドリームが買収する放射性医薬品事業の主要製品/製品名/対象疾患|SPECT診断薬/オクトレオスキャン/神経内分泌腫瘍/テクネMDP/骨疾患/ニューロライト/脳血流/カーディオライト/心疾患・副甲状腺/ミオMIBG/心疾患・褐色細胞腫/塩化タリウム-TI201/心疾患/ウルトラテクネカウ/標識用/心疾患など|PET診断薬/アミヴィッド静注/脳内アミロイドβプラークの可視化/フルデオキシグルコース静注「FRI」/悪性腫瘍・心疾患・難治性部分てんかん・大型血管炎|放射性治療薬/ルタテラ静注/ソマトスタチン受容体陽性神経内分泌腫瘍/ゼヴァリンインジウム静注用セット/抗体の集積部位の確認/ゼヴァリンイットリウム静注用セット/低悪性度非ホジキンリンパ腫・マントル細胞リンパ腫/ヨウ化ナトリウムカプセル/甲状腺機能亢進症・甲状腺がんおよび転移巣/※ペプチドリームの説明会資料をもとに作成/

 

放射性医薬品以外の自社販売は否定

「放射性医薬品の領域で先進的な研究開発を進めているグローバルプレイヤーと普段からやりとりをする中で、この領域に大きな可能性を感じていた」と言う金城氏。1、2年ほど前から参入機会を模索し、富士フイルムとはこの数カ月で買収の具体的な話を進めてきたといいます。放射性医薬品はサプライチェーンが特殊で、規制面からも参入障壁が高く、参入しているプレイヤーは少数。一方、がん領域を中心に市場は今後大きく拡大するとみられており、ペプチドリームとしてはビジネスの大きな柱になると期待しています。

 

今回の買収により、ペプチドリームは、富士フイルム富山化学から放射性医薬品の工場や研究所、営業拠点を獲得し、「研究」「開発」「製造」「販売」といった製薬企業としての機能をフルで持つことになります。研究開発のアーリーステージにフォーカスし、後期開発以降は提携先に委ねる従来のビジネスモデルから大きく方向転換したかのようにも見えますが、金城氏は「全体の戦略の方向性に変更はない」とし、放射性医薬品以外の開発品を自社販売する考えをきっぱりと否定。商業化を手掛けるのはあくまで放射性医薬品事業だけで、既存ビジネスは従来通りの戦略で進めていくと強調しました。

 

ノバルティスやアステラスが参入

今回、305億円という大きな費用をかけて買収に踏み切った背景について、金城氏は「サプライチェーンを持っていないと新規参入は難しかった」と指摘。サプライチェーンの観点から各国・各地域でマーケットが閉じている中、開発から商業化までのプラットフォームを持つことで、グローバル企業が日本市場に製品を投入する際の「パートナー・オブ・チョイス」となり、導入品の獲得と自社創製品の海外導出を進めていく方針を示しました。

 

放射性医薬品の分野では、2018年にノバルティスがルタテラの開発元である仏アドバンスド・アクセラレータ・アプリケーションズを39億ドル(約4300億円)で買収して参入。アステラス製薬は、米アクチニウム・ファーマシューティカルズと、放射性医薬品による治療と診断を組み合わせた「セラノスティクス」の共同研究を進めているほか、日本メジフィジックスも豪テリックス・ファーマシューティカルズと提携するなどしてセラノスティクスの開発を行っています。

 

開発競争が激しさを増す中、ペプチドリームは存在感を示せるか。ペプチド技術とのシナジーを発揮し、競争力の高い製品を生み出せるかどうかにかかっています。

 

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