2021年5月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】世界初のKRAS阻害薬「Lumakras」など
「Zynrelef」米ヘロン・セラピューティクス
徐放性二重作用型局所麻酔薬の「Zynrelef」は、局所麻酔薬bupivacaineと同薬の効果を増強する低用量の非ステロイド性抗炎症薬meloxicamの固定用量配合剤。腱膜瘤切除や人工膝関節置換術などの術後疼痛治療のために使用され、最大72時間まで痛みを管理できます。臨床試験では、bupivacaine溶液と比べて痛みを有意に軽減し、オピオイド使用の必要性を低下させました。欧州でも昨年承認されています。
「Empaveli」米アペリス・ファーマシューティカルズ
「Empaveli」(pegcetacoplan)は、成人の発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬。米国初となる抗補体(C3)療法です。未治療の患者や、抗補体(C5)抗体(「Soliris」「Ultomiris」)から治療を切り替える患者に使用できます。欧州でも申請中で、米国以外ではスウェーデンのソビが販売を行う予定。寒冷凝集素症や筋萎縮性側索硬化症などでも開発中です。
「Rybrevant」米ヤンセン
抗EGFR/MET二重特異性抗体「Rybrevant」(amivantamab)は、成人のEGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がん治療薬です。プラチナベースの化学療法を受けた患者が対象で、同遺伝子変異に対する治療薬は米国で初めて。英国やブラジルでも申請中で、日本でも臨床第3相(P3)試験を進めています。
「Camcevi」台湾Foresee
進行前立腺がん治療薬「Camcevi」は、GnRHアゴニストleuprolide mesylateの6カ月持続型皮下デポ製剤。米国では米アコード・バイオファーマが販売を行う予定です。Foreseeは半量製剤の開発も進めています。
「Myfembree」米マイオバント(大日本住友製薬)
子宮筋腫治療薬「Myfembree」は、GnRH受容体拮抗薬relugolixと、estradiol、norethindrone acetateの配合剤。閉経前女性の子宮筋腫に伴う過多月経を対象に承認されました。1日1回投与で、投与期間は最大24カ月。欧州でもマイオバントが申請中で、米国では提携先の米ファイザーと共同販売を行います。
「Lybalvi」アイルランド・アルケルメス
「Lybalvi」は、成人の統合失調症、双極Ⅰ型障害の治療薬。非定型抗精神病薬olanzapineと新規化合物であるsamidorphanの経口配合剤です。olanzapineによる体重増加の副作用を軽減でき、新たな治療選択肢になると期待されています。
「Truseltiq」米ブリッジバイオ
ATP競合型FGFR阻害薬「Truseltiq」(infigratinib)は、局所進行または転移性の胆管がん治療薬。FGFR2遺伝子融合/再構成を有する、治療歴のある患者が対象です。米国ではスイスのヘルシン・グループと共同で販売を行う予定で、中国や米国以外では同社が商業化の権利を持っています。オーストラリアやカナダでも申請中です。
「Lumakras」米アムジェン
KRAS G12阻害薬「Lumakras」(sotorasib)は、KRAS G12C遺伝子変異陽性の局所進行または転移性非小細胞肺がん治療薬。少なくとも1つ以上の全身療法を受けた成人患者が対象となります。KRAS変異をターゲットとする治療薬は世界初。迅速承認のもととなった臨床試験は124人の患者を対象に実施され、全奏効率は36%でした。日本や欧州でも申請中です。
【適応拡大】「Zeposia」の潰瘍性大腸炎、片頭痛治療薬「Nurtec」の予防適応など
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、切除不能な局所進行または転移性のHER2陽性胃がん、胃食道接合部がんの1次治療に適応拡大。抗HER2抗体trastuzumab、fluoropyrimidineとプラチナ製剤を含む化学療法と併用します。
「Opdivo」米ブリストル・マイヤーズスクイブ
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Opdivo」(nivolumab)は、新たに食道がんまたは胃食道接合部がんの術後補助療法として承認されました。対象は、術前補助化学放射線療法を受け、病理学的残存病変を認めた完全切除後の患者。承認のもととなった臨床試験では、プラセボと比べて無病生存期間の中央値を2倍に延長しました。日本でも同適応で申請中です。
「Zeposia」米ブリストル・マイヤーズスクイブ
多発性硬化症治療薬「Zeposia」(ozanimod)は、中等度から重度の潰瘍性大腸炎に適応拡大。同適応に使用できるS1P受容体モジュレーターは米国初となります。詳しいメカニズムはわかっていないものの、リンパ球のS1P受容体を標的とすることで、末梢血中のリンパ球数を減少させ、腸内へのリンパ球の流入を抑制することが関係していると考えられています。欧州でも同適応で申請しており、日本ではP2/3試験を進めています。
「Nurtec」米バイオヘブン
経口CGRP受容体拮抗薬「Nurtec」(rimegepant)は、片頭痛の予防治療に適応拡大しました。片頭痛の予防と急性期治療の両方の適応を持つ治療薬は初めて。適応拡大の承認とあわせて、1カ月に使用可能な回数も最大18回まで増やされました。
「Cosentyx」スイス・ノバルティス
抗IL-17A抗体「Cosentyx」(secukinumab)は、中等度から重度の尋常性乾癬の適応で6歳以上の小児、青年期の患者に使用できるようになりました。対象は、全身療法や光線療法の適応となる患者。臨床試験では、プラセボと比べて皮膚症状を有意に改善しました。日本でも申請を済ませています。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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