2021年4月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】子宮内膜がん治療薬「Jemperli」や大細胞型B細胞リンパ腫治療薬「Zynlonta」など
「Qelbree」米スパーナス
選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬「Qelbree」(一般名・viloxazine)は、小児向けの注意欠陥・多動症(ADHD)治療薬。1日1回投与の徐放カプセル剤です。1000人以上の小児患者を対象に行った4つの臨床第3相(P3)試験の結果に基づいて承認されました。今年後半には成人患者への適応拡大申請を予定しています。
「Nextstellis」豪メイン・ファーマ
避妊薬「Nextstellis」は、天然型エストロゲンのエステトロールとドロスピレノンの配合剤。米国では約50年ぶりの新規エストロゲン配合薬となりました。日本とASEANでは富士製薬工業が開発・販売権を持っており、国内では月経困難症、ASEANでは避妊を対象に開発を進めています。
「Jemperli」英グラクソ・スミスクライン
2019年の米テサロ買収で獲得した抗PD-1抗体「Jemperli」(dostarlimab)は、再発・進行子宮内膜がん治療薬として迅速承認されました。対象は、プラチナ製剤の投与歴があるミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の患者。進行子宮内膜がんでは、約25~30%の患者がdMMRがんといいます。臨床試験での奏効率は42.3%でした。
「Zynlonta」スイス・ADCセラピューティクス
抗CD19抗体薬物複合体(ADC)「Zynlonta」(loncastuximab tesirine)は、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫治療薬。2回以上の全身療法を受けたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)や高悪性度B細胞リンパ腫の成人患者が対象です。奏効率48.3%を示したP2試験に基づき、迅速承認されました。
「Kloxxado」英ヒクマ・ファーマシューティカルズ
「Kloxxado」(naloxone)は、オピオイド過剰摂取の緊急治療に使用される点鼻薬。これまで米国ではnaloxone の2mg製剤と4mg製剤が承認されていましたが、Kloxxadoは8mgの高用量製剤。新たな治療選択肢として期待されています。
【適応拡大】「Trodelvy」の尿路上皮がんや「Farxiga」の慢性腎臓病など
「Praluent」米リジェネロン
PCSK9阻害薬「Praluent」(alirocumab)は、成人のホモ接合家族性高コレステロール血症に適応拡大。同薬は2015年、高コレステロール血症と心血管系疾患の治療薬として承認を取得しました。
「Trodelvy」米ギリアド・サイエンシズ
抗TROP2 ADCの「Trodelvy」(sacituzumab govitecan)は、局所進行または転移性の尿路上皮がんに適応拡大。プラチナ製剤を含む化学療法と、PD-1/PD-L1阻害薬による治療を受けた患者が対象です。Trodelvyはまた、昨年迅速承認を受けた「切除不能な局所進行または転移性のトリプルネガティブ乳がん(サードライン以降)」の適応で完全承認を取得。欧州やカナダ、スイスなどでもトリプルネガティブ乳がんの適応で申請中です。
「Xolair」米ジェネンテック
抗IgE抗体「Xolair」(omalizumab)は、新たにプレフィルドシリンジ製剤が承認され、自己注射が可能となりました。中等度から重度の持続性アレルギー性喘息、慢性特発性蕁麻疹、鼻ポリープのすべての適応症が対象です。
「Opdivo」米ブリストル・マイヤーズスクイブ
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Opdivo」(nivolumab)は、「進行または転移性胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がん」に適応拡大しました。PD-L1発現率にかかわらず使用でき、化学療法と併用します。胃がんのファーストラインに対する免疫療法は米国初。日本や欧州、オーストラリアなどでも申請を済ませています。
「Natroba」米ParaPRO
アタマジラミ治療薬の「Natroba」(spinosad)は、新たに疥癬の局所治療に使用できるようになりました。4歳以上の患者が対象です。
「Farxiga」英アストラゼネカ
SGLT2阻害薬「Farxiga」(dapagliflozin)は、新たに慢性腎臓病治療薬として承認されました。2型糖尿病の有無にかかわらず使用できます。臨床試験では、腎機能の悪化もしくは死亡のリスクを有意に抑制しました。日本でも慢性腎臓病の適応で申請中です。
「Ferriprox」伊チエシ
輸血後鉄過剰症治療薬の鉄キレート剤「Ferriprox」(deferiprone)は、従来のサラセミア患者に加え、鎌状赤血球症もしくはほかの貧血患者に対象を拡大しました。鎌状赤血球症では腎機能障害を持つ患者が約30~50%いますが、同薬はそうした患者にも用量の調整なく使用できます。
【適応取り下げ】「Tecentriq」米ジェネンテック
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Tecentriq」(atezolizumab)は、「プラチナ製剤を含む化学療法後または補助療法後12カ月以内に進行した局所進行・転移性尿路上皮がん」の適応を取り下げました。同適応では16年に迅速承認を取得していましたが、最初の確認試験で全生存期間を改善できなかったことやほかの治療選択肢による治療の進展を受け、米FDA(食品医薬品局)と協議して先月承認を自主的に取り下げました。プラチナ製剤を含む化学療法の対象ではない患者には引き続き使用できます。