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ニュース解説

血友病「定期補充療法」が抱えるアドヒアランス不良…患者サポート活発化、核酸医薬や遺伝子治療薬の開発も最終段階に

更新日

血友病治療の中心である血液製剤の定期補充療法で、長年問題となっているアドヒアランスの不良。血液製剤を販売する武田薬品工業やサノフィが、ソフトウェア医療機器やアプリを通じて問題解決に乗り出しています。一方、投与間隔の長い核酸医薬や、根治を目指す遺伝子治療薬など、新薬の開発も大詰めを迎えています。

 

 

定期補充療法 重症患者の8割が実施

血友病は、血液凝固因子の不足や欠乏によって血が止まりにくくなる疾患。12種類ある血液凝固因子のうち第VIII因子が不足する「血友病A」と、第IX因子が不足する「血友病B」に分けられます。国内の患者数は、血友病Aが約5400人、血友病Bが約1200人です。

 

治療の中心は、出血の予防と管理。予防には、足りない血液凝固因子を血液製剤(血液凝固第VIII因子製剤または第IX因子製剤)で定期的に補充する「定期補充療法」のほか、血友病Aでは中外製薬が18年に発売した「ヘムライブラ」(一般名・エミシズマブ)も使用されています。

 

ヘムライブラは中外が創製したバイスペシフィック抗体。活性型第IX因子と第X因子に結合し、第VIII因子の機能を代替します。インヒビター(補充した第VIII因子に対する中和抗体)ができて血液製剤が効かなくなった患者にも使用でき、シェアを急拡大しています。

 

それでも、定期補充療法は重要な治療選択肢の1つ。重症血友病患者では、85%超が定期補充療法を行っています。週2~3回の補充療法の普及に伴い、自己注射や家庭注射が一般化。多くの患者が予防と出血管理の両方で、在宅での治療を行っています。

 

ソフトウェアで治療サポート

在宅治療での課題となっているのが、血液製剤の「使いすぎ」や「使用するタイミングの自己判断」といったアドヒアランス不良。輸注パターンが個々の患者で異なる血友病では、在宅治療を円滑に行うために症状や輸注を記録する必要がありますが、患者側、医療従事者側の双方でその意義がよく理解されていない面もあるといいます。

 

こうした中、血液製剤を扱う製薬企業も取り組みを進めています。

 

シャイアー買収で血液凝固第VIII因子製剤「アドベイト」「アディノベイト」や血液凝固第Ⅸ因子製剤「リクスビス」などが製品群に加わった武田薬品工業は、医療機器プログラム「マイPKフィット」(ハイリスク薬物動態解析プログラム)を展開しています。この機器は、アドベイトかアディノベイトの治療を受けている血友病Aの患者が対象で、採血データなどをもとに個々の患者の薬物動態(PK)プロファイルを作成。医師が投与量や投与間隔を決定するのをサポートします。患者は自身の第VIII因子活性値をアプリで確認して出血を管理できるほか、輸注や症状を記録・共有できます。

 

サノフィはスズケンと連携

サノフィは、輸注記録アプリ「あすA・あすB」を開発。ワンタップで輸注と出血の記録が可能で、記録をグラフ化して医師と共有することもできます。さらに、対面診療を経て患者が大量の血液製剤を自宅に持ち帰る従来のやり方にかわって、オンライン診療後に専用保冷ボックス「VIXELL」(スズケンとパナソニックが開発)で患者宅に送付する仕組みを構築。スズケンの在宅用の医薬品トレーサビリティシステム「myCubixx」も活用し、在宅で治療薬の保管・管理・記録ができる環境を整えました。

 

血友病では患者の高齢化が進んでおり、関節障害(血友病性関節症)を合併する患者もいます。筋力の低下などもあわさって、自己注射に失敗して定期輸注ができなくなることや、自宅まで大量の製剤を持ち帰るのに苦労することも少なくありません。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、受診から薬の配送までを在宅で行いたいというニーズは高まっているといいます。

 

【サノフィ/スズケンの在宅治療サポートプログラム】 <これまで> 患者は医療施設に外来受診/症状・輸注記録を共有、処方された製剤を自宅に持ち帰る。 <提案> 「myCubixxとアプリで在宅管理」患者はオンライン診療で症状・輸注記録共有、処方製剤は医療施設から患者の自宅へ、「VIXELLで送付」 |※サノフィの講演資料などをもとに作成

 

サノフィは2019年5月、仏本社が18年に買収した米バイオベラティブの日本法人を統合し、同社の血液凝固第VIII因子製剤「イロクテイト」と血液凝固第IX因子製剤「オルプロリクス」の製造販売承認を承継。今回のスズケンとのコラボはこれらの製品が対象となりますが、アプリについては「他社の血液製剤を使っている人でも使用できる」(サノフィ)といいます。

 

P3に核酸医薬や遺伝子治療薬

血液製剤の定期補充療法以外の治療選択肢として、ヘムライブラに続く新規作用機序の治療薬が開発中です。

 

サノフィは、血友病A/Bを対象にRNAi核酸医薬fitusiranのP3試験を行っています。同薬は米アルナイラムが創製した月1回投与の皮下投与製剤で、抗血液凝固因子のアンチトロンビンを阻害し、トロンビン産生を改善させることで出血を予防します。

 

【国内で開発中の血友病治療薬】(製品名/開発コード(一般名)/社名/適応/作用機序/開発段階): ヘムライブラ(エミシズマブ)/中外製薬/後天性血友病A/抗factor/IXa/Xバイスペシフィック抗体/P3 |―(fitusiran)/サノフィ/血友病A/B/RNAi核酸医薬/P3 |BIVV001(―)/サノフィ/血友病A/VWF非依存性第VIII因子製剤/P3 |NN7415(concizumab)/ノボ/血友病A/B/抗TFPI抗体/P3 |PF-06838435(fidanacogene elaparvovec)/ファイザー/血友病B/遺伝子治療/P3 |PF-06741086(marstacimab)/ファイザー/血友病A/B/抗TFPI抗体/P3 |NXT007(―)/中外製薬/血友病A/抗factor/IXa/Xバイスペシフィック抗体/P1/2 |NN7769(Mim8)/ノボ/血友病A/第VIII因子機能模倣薬/P1 |※各社のパイプラインと臨床試験情報をもとに作成

 

ノボ・ノルディスクファーマは、血友病A/Bの適応で抗TFPI抗体concizumab のP3試験を実施中。抗TFPI抗体は、TFPI(組織因子経路インヒビター)を阻害することで、止血能を改善する効果を持っています。ファイザーの同marstacimabも、国際共同P3試験を昨年開始しました。

 

中外製薬は、ヘムライブラの後継となる抗FIXa/Xバイスペシフィック抗体「NXT007」のP1/2試験を実施中。ノボも、抗FIXa/Xバイスペシフィック抗体Mim8を開発しています。

 

これら予防を目的とした治療薬だけでなく、根治に向け、ファイザーが血友病Bに対する遺伝子治療薬fidanacogene elaparvovecを開発中です。同薬は、アデノ随伴ウイルスベクターを使って第IX因子を発現させる遺伝子を投与する薬剤。実現されれば、1回の治療で生涯にわたって体内で第IX因子をつくれるようになり、定期的な薬剤の投与が不要となると期待されます。

 

(亀田真由)

 

【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
武田薬品工業

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