日医工と沢井製薬が、国内後発医薬品トップの座を激しく争っています。2020年3月期は、エルメッド買収で2ケタ増収となった日医工が3期ぶりに首位を奪還したものの、21年3月期は沢井が売上高2000億円突破でトップに返り咲く見込みです。スペイン・ペンサの買収で欧米市場に進出する東和薬品は今期、36%の増収を計画。2社との差を一気に詰めます。
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日医工14%増収
後発医薬品大手3社の2020年3月期の連結売上高は、日医工が1901億円(前期比14.1%増)、沢井製薬が1825億円(1.0%減)、東和薬品が1104億円(5.0%増)。18年3月期、19年3月期と2期連続でトップだった沢井を逆転し、日医工が首位に返り咲きました。
トップ奪還の原動力となったのが、19年4月にエーザイから買収したエルメッドです。19年は10月に消費増税に伴う薬価改定があったものの、エルメッドを統合したことで日医工の国内後発品売上高は前期から19.4%増加。一方の沢井は、増税改定で約10%のマイナス影響を受けたほか、インフルエンザのピークアウトが早くオセルタミビルの販売が低調だったことも響き、国内はゼロ成長にとどまりました。
利益は「一人負け」
2期ぶりに国内首位に立った日医工ですが、利益面では大手3社で「一人負け」の状況です。20年3月期の営業利益は前期比65.1%減の29億円で、営業利益率はわずか1.5%。268億円で14.7%の沢井や、161億円で14.6%の東和を大きく下回りました。
日医工が大幅減益に沈んだのは、特殊要因が重なったからです。20年3月期決算には、子会社セージェントが想定していた収益を見込めなくなったとして19億4700万円の減損損失を計上。今年4月に国内で行った大規模な自主回収の費用の引当(15億8000万円)を積んだことや、抗がん剤トラスツズマブのバイオシミラーの開発を中止し、開発データを提携先企業に譲渡したことで生じた損失(14億6400万円)を計上したことも響きました。
2000億円突破うかがう沢井
3年ぶりに首位交代が起こった国内後発品業界ですが、日医工の天下は長くはなさそうです。21年3月期は、日医工が売上高1990億円(4.7%増)を見込むのに対し、沢井は2002億円(9.7%)。を予想。再び沢井がトップとなる見通しです。
沢井は今期、国内で10.7%、米国で5.7%の増収を計画。国内では4月の薬価改定がマイナス要因となるものの新製品の伸びを見込み、米国では前期に獲得したブランド品の販売が拡大する見通しです。
対する日医工は、国内は2.6%増にとどまる一方、セージェントで13.8%の増収を予想。セージェントは前期、インド企業に製造を委託していた13品目の供給が止まり、30億円の減収要因となりましたが、自社製造に切り替えて順次、供給を再開する予定です。
3位の東和薬品は今期、海外展開を本格化させます。今年1月に約395億円で買収したスペイン・ペンサの業績が加わり、21年3月期は売上高1500億円で35.9%の大幅増収となる見込み。ペンサの売上高は348億円(欧州185億円、米国163億円)を計画しており、連結売上高に占める海外の比率は大手3社で最も高い23.2%に達する見通しです。
新規事業を模索
大手3社以外の後発品メーカーでは、第一三共が前期比8.9%増と好調。20年3月期は、前立腺がん治療薬「カソデックス」と乳がん治療薬「アリミデックス」「ノルバデックス」のオーソライズド・ジェネリック(AG)を発売し、売り上げ拡大に貢献しました。
11.3%増の持田製薬は子宮内膜症治療薬「ディナゲスト」のAGや関節リウマチ治療薬エタネルセプトのバイオシミラーが伸び、5.5%増のキョーリン製薬ホールディングスは抗アレルギー薬「ナゾネックス」のAGが寄与。11.3%の増収となった日本化薬は、抗がん剤トラスツズマブのバイオシミラーが16億円を売り上げました。
沢井 持株体制へ
政府は今年9月までに後発品の使用割合を80%以上とすることを目標に掲げており、日本ジェネリック製薬協会によると、後発品のシェアは2019年度第3四半期(19年10~12月)時点で77.1%まで上昇。80%に達すると市場の成長は鈍化するとみられており、各社は新市場の開拓や新規事業の創出を模索しています。大手3社の海外進出も、そうした流れの中での動きの1つです。
東和薬品は20年度までの中期経営計画で「新規事業の創出」を基本方針の1つに掲げており、ソフトウェア開発のTISと合弁会社「Tスクエアソリューションズ」を設立。バンダイナムコ研究所と服薬支援ツールの開発に乗り出したほか、マッスルスーツを開発しているイノフィスに出資したり、認知症の予防や診断の分野でアカデミアと共同研究を始めたりと、動きを活発化させています。
沢井製薬は来年4月に持株会社体制に移行し、新規事業の育成に向けた体制を構築する方針。日医工は今年9月にメドピアと合弁会社を設立し、アプリを使ったかかりつけクリニック支援サービスを共同展開します。
(前田雄樹)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】