2013年、アステラス製薬と組んで日本に再上陸した米アムジェン。今年4月1日に合弁会社の株式を買い取り、日本市場での単独展開をスタートさせました。米国との「同時開発・同時申請」に照準を当て、新薬開発を加速させます。(写真はアムジェン日本法人のスティーブ・スギノ社長〈右〉と三好出研究開発本部長。同社提供)
「重要な成長もたらすエリア」
「今の日本はアムジェンのグローバルビジネスのわずかな割合を占めるに過ぎないが、次の10年において非常に重要な成長をもたらすエリアとして期待している」。4月1日、日本での単独展開をスタートさせた米アムジェン。日本法人のスティーブ・スギノ社長はこの日開いたメディア向けのオンライン説明会で、日本市場への期待をこう語りました。
説明会で日本市場への期待を語るアムジェン日本法人のスティーブ・スギノ社長(同社提供)
米アムジェンは同日、アステラス製薬との合弁会社「アステラス・アムジェン・バイオファーマ」(AABP)について、アステラスが保有する株式(発行済みの49%)をすべて買い取り、完全子会社化。同時に社名を「アムジェン株式会社」に変更し、“新生・アムジェン日本法人”として独り立ちしました。
アムジェンの日本事業には紆余曲折がありました。1992年に単独で日本法人を立ち上げたものの、2008年には武田薬品工業に日本法人を売却して一旦撤退。13年にアステラスと合弁会社を設立し、「日本再上陸」として注目されました。アステラスとの合弁はもともと20年までの期限付きで、このタイミングでの独立は当初の予定通り。スギノ社長は「合弁設立時からアムジェンの長期的な目標ははっきりしていた。そのために7年間、アステラスと組んで強固な基盤を築いてきた」と振り返りました。
「22年からは米国と同時開発・同時申請」
AABPは13年の設立から約7年で、▽高脂血症治療薬の抗PCSK9抗体「レパーサ」(一般名・エボロクマブ)▽がん免疫療法薬の抗CD3/CD19二重特異性抗体「ビーリンサイト」(ブリナツモマブ)▽骨粗鬆症治療薬の抗スクレロスチン抗体「イベニティ」(ロモソズマブ)――の3製品を発売。19年11月には、米国本社の買収に伴って乾癬治療薬「オテズラ」(アプレミラスト)をラインアップに加えました。
オテズラを除く3製品は、AABPとアステラスが共同開発したもので、アステラスが流通・販売を担い、両社で共同プロモーションを行ってきました。4月以降もこの枠組みは維持され、MR体制にも変更はありません。
今後の日本での事業展開についてスギノ社長は、21年までにアムジェン単独での製品発売を達成し、22年以降は日米同時開発・同時申請を目指す考えを表明。三好出・研究開発本部長は「基本的にはすべてのパイプラインを日本で同時開発・同時申請することを目指してチームとプロセスを構築してきた。フェーズ1試験より前の段階から日本のチームが開発に加わることで、グローバルと一緒に開発に進んでいくことができるようになっている」と話しました。
説明会で日本での新薬開発について語るアムジェン日本法人の三好出・研究開発本部長
アムジェンが現在、日本で開発を進めている新薬は▽心筋ミオシンアクティベーター「AMG423」(omecamtiv mecarbil、予定適応症=慢性心不全)▽抗CGRP受容体抗体「AMG334」(erenumab、片頭痛予防)▽KRAS阻害薬「AMG510」(固形がん)――など。三好氏によれば、これらは「フェーズ3試験あるいはピボタルな試験を行っており、近い将来、解析を行って申請に向けて進んでいくという状態」といいます。中でもAMG510は「これまでアンドラッガブル(創薬が困難)と言われてきた」(三好氏)KRAS阻害薬として期待されている薬剤です。
2012年にロバート・A・ブラッドウェイ氏がCEO(最高経営責任者)に就任して以来、日本を含むアジアを重視する姿勢を強めている米アムジェン。スギノ氏は「これまでの我々の成長と将来を考えると、日本には本当に大きな機会があると考えている」と話します。バイオベンチャーの草分けで、世界有数のバイオ医薬品企業となったアムジェンは、今度こそ日本市場で成功を収めることができるのか。再上陸の第2幕に注目です。
(前田雄樹)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】