2019年9月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】RybelsusやIbsrelaなど
「Gvoke」米ゼリス
糖尿病に伴う重症低血糖の治療薬glucagonのプレフィルドシリンジ製剤「Gvoke」が承認されました。対象は2歳以上。プレフィルドシリンジ製剤は米国で初めて。今年7月には、米イーライリリーが同適応でglucagonの点鼻粉末剤の承認を取得しています。
「Ibsrela」米アルデリクス
選択的腸管Na+/H交換輸送体(NHE3)阻害薬「Ibsrela」(tenapanor)は、便秘を伴う過敏性腸症候群治療薬として承認を取得。同薬は腸内のNHE3を阻害することでナトリウムの吸収を抑える新規の作用機序を持っています。米国では血液透析施行中の高リン血症を対象に臨床第3相(P3)試験を行っており、日本でも導出先の協和キリンが同じ適応でP2試験を実施中です。
「Ozobax」米メタセル
GABA作動薬baclofenの経口液剤「Ozobax」は、多発性硬化症による痙縮、脊髄損傷などの脊髄疾患に対する治療薬。日本では錠剤や髄腔内注入剤が販売されています。
「Rybelsus」デンマーク・ノボ ノルディスク
2型糖尿病治療薬「Rybelsus」(semaglutide)は、世界初の経口GLP-1受容体作動薬。GLP-1受容体作動薬はこれまで注射剤しかなかったため、利便性の向上が期待されます。
2型糖尿病の適応では優先審査が適用され、3月の申請から6カ月で承認。同時に申請した「2型糖尿病患者の心血管リスクの低減」の適応では審査が続いています。米国では今年10~12月の発売を予定。日本と欧州でも申請を済ませています。
「Jynneos」デンマーク・ババリアン ノルディック
天然痘とサル痘を対象に、非複製生ワクチン「Jynneos」が承認されました。湿疹などで免疫が弱まり、感染リスクが高いと判断された成人とその家族が対象です。非複製の天然痘のワクチンは米国で初めて。また、サル痘のワクチンは世界初となります。
【適応拡大】Keytruda+Lenvimaの子宮内膜がん、Invokanaの腎・心血管リスク低減など
「Ofev」独ベーリンガーインゲルハイム
特発性肺線維症治療薬「Ofev」(nintedanib)は、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患への適応拡大が承認されました。間質性肺疾患は全身性強皮症の主な死亡原因。有効な治療法が限られており、同薬は肺機能の低下を抑える新たな治療法として期待されています。日本でも同じ適応で今年4月に申請しました。
「Keytruda」+「Lenvima」米メルク/エーザイ
免疫チェックポイント阻害薬「Keytruda」(pembrolizumab)とマルチキナーゼ阻害薬「Lenvima」(lenvatinib)の併用療法が、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)やミスマッチ修復機構欠損(dMMR)のない進行性子宮内膜がんの適応で承認。全身療法後に増悪した、根治的手術や放射線療法ができない患者が対象となります。
米メルクとエーザイはLenvimaの開発・販促でグローバル提携を結んでおり、Keytrudaとの併用療法の承認は今回が初めて。米FDAが主導する多国間共同審査の枠組み「プロジェクトOrbis」が初めて適用され、カナダとオーストラリアでも同時に承認されました。
「Erleada」米ヤンセン
前立腺がん治療薬「Erleada」(apalutamide)は、転移性去勢感受性前立腺がんに対する適応拡大の承認を取得。申請のもとになった国際共同臨床試験では、アンドロゲン除去療法との併用療法で、全生存期間とX線画像での無増悪生存期間をプラセボに比べて有意に改善しました。日本でも今年5月に申請しています。
「Pifeltro」「Delstrigo」米メルク
抗HIV薬「Pifeltro」(doravirine)は、抗レトロウイルス療法でHIV-1の発現が抑えられていて、これまでに治療が失敗していない患者への使用が承認されました。単剤のほか、tenofovir とlamivudineとの3剤配合剤「Delstrigo」も同様に適応拡大が承認。doravirineは非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬で、日本では今年9月に単剤が申請されました。
「Dysport」仏イプセン
ボツリヌス治療に用いられる仏イプセンの「Dysport」(abobotulinumtoxinA)は、脳性麻痺由来でない上肢痙縮を対象に、小児患者への適応拡大が承認されました。同薬はアセチルコリン放出阻害薬/神経筋遮断薬で、小児に対しては下肢痙縮でも16年7月に承認を取得しています。
「Darzalex」米ヤンセン
多発性骨髄腫治療薬の抗CD38抗体「Darzalex」(daratumumab)は、造血幹細胞移植の適応がある患者に対するボルテゾミブ、サリドマイド、デキサメタゾン(Vtd)との4剤併用療法が承認。米国では7つ目の適応となります。日本では再発・難治性の多発性骨髄腫の適応で17年に発売しており、今年8月には未治療患者で承認を取得しています。
「Rituxan」米ジェネンテック(スイス・ロシュ)
抗CD20抗体「Rituxan」(rituximab)は、2歳以上の小児患者の多発血管炎性肉芽腫症と顕微鏡的多発血管炎に対する適応拡大の承認を取得。米国では11年に成人患者を対象に承認されていましたが、さらに発症がまれな小児患者に使用できるようになりました。日本では13年、公知申請によって成人患者での使用が承認されています。
「Invokana」米ヤンセン
SGLT2阻害薬「Invokana」(canagliflozin)は、2型糖尿病や糖尿病性腎症患者の末期腎不全、腎機能の悪化、心血管死、心不全による入院のリスク低減で承認されました。SGLT2阻害薬が、腎不全や心不全の適応で承認されたのは初めて。創製は田辺三菱製薬で、日本(製品名・カナグル)でも糖尿病性腎症を対象にP3試験を行っています。
(亀田真由)