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核酸医薬 本格的な導入期に…日本新薬「初の国産」を申請

核酸医薬が本格的な導入期に差し掛かっています。国内では2017年にバイオジェンの「スピンラザ」が承認され、今年はアルナイラムの「オンパットロ」が承認を取得しました。9月には日本新薬が初の国産となるビルトラルセンを申請。今年度中にも承認となる見通しです。

 

ビルトラルセン 年度内にも承認

日本新薬は9月26日、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象に開発を進めてきたアンチセンス核酸医薬ビルトラルセンを申請したと発表しました。同薬は日本新薬が国立精神・神経センターと共同で創製したもので、「国産」の核酸医薬の申請は初めて。先駆け審査指定制度の対象に指定されており、順調にいけば2019年度中に承認される見込みです。

 

核酸医薬は文字通り、核酸(DNAやRNA)を基本骨格とする医薬品。疾患に関わるタンパク質を標的とする従来の医薬品に対し、核酸医薬はタンパク質の合成そのものをターゲットとしています。「アンチセンス」「siRNA」「アプタマー」などさまざまな種類があり、低分子医薬品や抗体医薬では治療が難しかった疾患に対する医薬品開発につながると期待されています。抗体医薬と違って、化学合成でつくることができるのも大きな特徴です。

 

核酸医薬の種類の表。種類:アンチセンス・標的:mRNA・作用部位:細胞内・作用機序:mRNAやmiRNAの分解・標的:miRNA・作用部位:細胞内・作用機序:スプライシングの制御。種類:siRNA・標的:mRNA・作用部位:細胞内・作用機序:mRNAの分解。種類:miRNA・標的:miRNA・作用部位:細胞内・作用機序:miRNAの補充。種類:デコイ・標的:タンパク質・作用部位:細胞内・作用機序:転写阻害。種類:リボザイム・標的:RNA・作用部位:細胞内・作用機序:RNAの分解。種類:アプタマー・標的:タンパク質・作用部位:細胞外・作用機序:機能阻害。種類:CpGオリゴ・標的:タンパク質・作用部位:細胞外・作用機序:免疫の活性化。

 

エクソン・スキップで機能のあるタンパク質を産生

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉細胞の骨組みとなるジストロフィンタンパク質が正常に産生されないことにより、筋萎縮や筋力低下が生じ、運動機能に障害をもたらす疾患。主に男児が発症し、立ったり歩いたりすることができなくなるほか、呼吸障害や心筋症などを引き起こします。発症の原因は、ジストロフィンタンパク質をコードするジストロフィン遺伝子の変異です。

 

ビルトラルセンは、mRNAのうちタンパク質に翻訳される領域(エクソン)の一部を取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する作用機序を持ちます。

 

こうした治療法は「エクソン・スキップ」と呼ばれ、正常なジストロフィンタンパク質に比べて短いながらも機能を持ったジストロフィンタンパク質の発現を誘導することで、筋機能を改善すると期待されています。ビルトラルセンがスキップするのは、79個あるジストロフィン遺伝子のエクソンのうち53番目(エクソン53)。これに応答する遺伝子変異を持つ患者がビルトラルセンによる治療の対象となります。

 

エクソン・スキップ治療のしくみの図。

 

国内では3品目承認 うち2品目は17年以降

現在、世界では9つの核酸医薬が承認されており、このうち国内で承認されているのは3品目。世界では9品目中6品目、国内では3品目中2品目が2016年以降に承認されたもので、市場導入が本格化してきています。

 

国内では08年7月に加齢黄斑変性治療薬「マクジェン」(ペガプタニブ、ボシュロム・ジャパン)が、17年7月に脊髄性筋萎縮症治療薬「スピンラザ」(ヌシネルセン、バイオジェン・ジャパン)が承認。19年6月には、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー治療薬「オンパットロ」(パチシラン、アルナイラム・ジャパン)が承認されました。一般的な核酸医薬の定義(化学合成で製造)からは外れるものの、核酸を主成分とする肝類洞閉塞症候群治療薬「デファイテリオ」(デフィブロチド、日本新薬)も19年6月に承認されています。

 

国内外で承認されている核酸医薬の表。製品名/一般名:Vitravene/fomivirsen・種類:アンチセンス・対象疾患:CMV性網膜炎・承認年【日】:―【米】:98【欧】:99。製品名/一般名:マクジェン/ベガブタニブ・種類:アプタマー・対象疾患:加齢黄斑変性・承認年【日】:8【米】:4【欧】:6。製品名/一般名:Kynamro/mipomersen・種類:アンチセンス・対象疾患:家族性高コレステロール血症・承認年【日】:―【米】:13【欧】:―。製品名/一般名:Exondys51/eteplirsen・種類:アンチセンス・対象疾患:デュシェンヌ型筋ジストロフィー・承認年【日】:―【米】:16【欧】:―。製品名/一般名:スピンラザ/ヌシネルセン・種類:アンチセンス・対象疾患:脊髄性筋委縮症・承認年【日】:17【米】:16【欧】:17。製品名/一般名:HEPLISAV-B/HBsAg Protein・CpG1018・種類:CpGオリゴ・対象疾患:B型肝炎(ワクチン)・承認年【日】:―【米】:17【欧】:―。製品名/一般名:Tegsedi/inotersen・種類:アンチセンス・対象疾患:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー・承認年【日】:―【米】:18【欧】:18。製品名/一般名:オンパットロ/パチシラン・種類:siRNA・対象疾患:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー・承認年【日】:19【米】:18【欧】:18。製品名/一般名:Waylivra/volanesorsen・種類:アンチセンス・対象疾患:家族性高カイロミクロン血症・承認年【日】:―【米】:―【欧】:19。▼一般的な核酸医薬の定義からは外れるものの、核酸を主成分とする医薬品。製品名/一般名:デファイテリオ/デフィプロチド・種類:デオキシリボ核酸・対象疾患:肝類洞閉塞症候群・承認年【日】:19【米】:16【欧】:13。

 

スピンラザは国内初のアンチセンスで、オンパットロは世界初のsiRNA。デファイテリオは日本新薬がアイルランドのジャズ・ファーマシューティカルズから導入したもので、ブタの腸粘膜から精製された一本鎖デオキシリボ核酸が主成分です。

 

日本新薬 23年度までに2品目目の承認狙う

日本企業でも開発が進んでおり、第一三共がビルトラルセンとは異なるエクソン(エクソン45)を標的としたデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬のアンチセンス「DS-5141」の臨床第1/2相(P1/2)試験を実施中。武田薬品工業は18年にシンガポールのウェーブ・ライフサイエンスと提携し、ハンチントン病を対象にアンチセンス「WVE-120101/WVE-120102」のP1/2試験を行っています。

 

日本新薬も、ビルトラルセンとは別のエクソンを標的としたデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬の開発を計画。19年度から始まった中期経営計画では、23年度までにエクソン44をスキップする核酸医薬の承認取得を目指すとしています。アルナイラムはグローバルで11のsiRNAプロジェクトを抱えており、日本では来年にも急性肝性ポルフィリン症治療薬givosiranを申請する方針です。

 

核酸医薬をめぐる日本企業の主な動きの表。日本新薬:DMD向けアンチセンスのビルトラルセンを国内申請。米国でも段階的申請。 23年度までにエクソン44を対象とするDMD治療薬の承認取得を目指す。第一三共:DMD向けアンチセンス「DS-5141」の国内P1/2試験を実施。武田薬品工業:シンガポールのウエーブ社と提携。 ハンチントン病向けアンチセンス「WVE-120101/WVE-120102」のP1/2試験を実施。リボミック:加齢黄斑変性を対象にアプタマー「RBM-007」のP1/2試験を米国で実施。ボナック:導出先の東レが、一本鎖長鎖核酸「BNC-1021/TRK-250」の特発性肺線維症を対象とするP1試験を米国で実施。日東電工:siRNA「ND-L02-s0201」の肝線維症・肝硬変を対象とする権利を米ブリストルに導出。 自社で特発性肺線維症を対象とする米国P1試験を実施。アンジェス:デコイ「AMG0101」を開発。アトピー性皮膚炎を対象とした軟膏剤の国内P3試験では主要評価項目未達。米国で椎間板性腰痛症を対象に注射剤のP1試験を実施。

 

日本新薬は米国でもビルトラルセンの段階的申請を行っており、これに続く核酸医薬も米国で展開する計画です。

 

バイオベンチャーでも海外市場を狙った動きが出ており、リボミックは加齢黄斑変性に対するアプタマーの臨床試験を米国で実施。ボナックの一本鎖長鎖核酸は、導出先の東レによって特発性肺線維症を対象に臨床試験が行われています。日東電工はsiRNA「ND-L02-s0201」の肝線維症・肝硬変を対象とする権利を米ブリストル・マイヤーズスクイブに導出。特発性肺線維症の適応でも、日東電工が米国でP2試験を行なっています。

 

シード・プランニングによると、核酸医薬の世界市場は2030年に194億ドルと18年(21億ドル)の9.2倍に拡大する見込み。現在P3試験実施中または申請中の24品目のうち10品目程度が、P1・P2試験を行っている146品目のうち13品目程度が発売に至ると予測しています。

 

(前田雄樹)

 

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