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製薬大手 中国市場への投資加速、規制緩和が後押し…アステラス社長「売り上げ早期に1000億」

国内の大手製薬会社が、中国への投資を強化しています。アステラス製薬は4月にコマーシャル組織を再編。中国を日米とともに独立した事業とし、1000億円規模の事業に成長させる考え。市場拡大と規制緩和が背景にあり、積極的に新薬を投入する方針です。

 

「中国も開発のファーストウェーブに」

「さらなる市場拡大を期待しており、これまで以上に経営資源を投入する。早い段階で売り上げを4ケタに乗せたい」。アステラス製薬の安川健司社長CEO(最高経営責任者)は4月の決算会見で、2018年度に500億円ほどだった中国での売上高を早期に1000億円規模に拡大させる考えを示しました。

 

決算会見で中国事業について説明するアステラス製薬の安川社長

決算会見で中国事業について説明するアステラス製薬の安川社長CEO

 

アステラスは今年4月から、これまで「日本」「米州(米国、カナダ、中南米)」「EMEA(欧州、中東、アフリカ)」「アジア・オセアニア」の4つに分けていたコマーシャル組織を、
▽日本
▽米国
▽グレーターチャイナ(中国、香港、台湾)
▽エスタブリッシュドマーケット(欧州、カナダ、オーストラリア)
▽インターナショナル(ロシア、中南米、中東、アフリカ、東南アジア、南アジア、韓国)
――の5つに再編。アジア・オセアニアの一部だった中国を独立させ、日本や米国と並ぶ単一の部門としました。

 

「イクスタンジ」「ゾスパタ」など投入

現在、同社の中国事業は、免疫抑制剤「プログラフ」と排尿障害改善薬「ハルナール」が売り上げの大部分を占めますが、18年度に過活動膀胱治療薬「ベットミガ」と帝人ファーマから導入した高尿酸血症・痛風治療薬「フェブリク」を発売。18年3月には前立腺がん治療薬エンザルタミド(日本製品名・イクスタンジ)を申請しており、19年度の承認、20年度の発売を見込んでいます。

 

中国ではこのほかにも、急性骨髄性白血病治療薬ギルテリチニブ(日本製品名・ゾスパタ)や、抗がん剤ゾルベツキシマブなどが開発の後期段階にあります。安川社長は会見で「これからは中国も、日米欧とともにファーストウェーブでの開発に取り組んでいく」とし、積極的に新製品を投入していく考えを表明。開発機能や販売機能の強化も進め、中国ビジネスを加速させます。

 

アステラス製薬 中国での新薬開発状況(後期開発品)。品名:エンザルタミド(イクスタンジ)・適応:前立腺がん・開発状況:18年3月 申請、19年度 当局判断見込み。品名:ギルテリチニブ(ゾスパタ)・適応:急性骨髄性白血病・開発状況:P3試験実施中。品名:エンホルツズマブ ベドチン・適応:尿路上皮がん・開発状況:開発計画を検討中。品名:ゾルベツキシマブ・適応:胃腺がん・食道胃接合部腺がん・開発状況:19年度 P3試験参加予定。品名:fezolinetant・適応:更年期に伴う血管運動神経症状・開発状況:19年度 P3試験開始予定。品名:ペフィシチニブ(スマイラフ)・適応:関節リウマチ・開発状況:P3試験実施中

 

武田やエーザイも積極的に新薬投入

中国ビジネスの強化を図っているのはアステラスだけではありません。

 

武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長は昨年7月、米ブルームバーグ通信のインタビューで、今後5年間で7つの新薬を発売する方針を表明。欧州や米国と同じペースで中国に新薬を投入するのが目標だとし、「これは極めて大きな変化だ」と述べました。

 

武田は現在、リンパ腫治療薬の抗CD30抗体薬物複合体ブレンツキシマブ ベドチン(日本製品名・アドセトリス)や、酸関連疾患治療薬ボノプラザン(同タケキャブ)を中国で申請中。潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬ベドリズマブ(同エンタイビオ)や非小細胞肺がん治療薬ブリガチニブ(欧米製品名・ALUNBRIG)などを開発しています。

 

エーザイは新工場稼働

以前から中国市場に力を入れていたエーザイは昨年11月、大型化を期待する抗がん剤「レンビマ」を肝細胞がんの適応で発売。中国は世界の肝がん患者の約半数を占めており、発売初年度の中国でのレンビマの売上高は31億円に上りました。19年度は90億円と約3倍の売り上げを計画しています。このほか中国では、同薬と抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法などを開発中。18年11月には固体剤で旧蘇州工場の2倍の生産能力を持つ「新蘇州工場」を本格稼働させ、中国国内での生産能力を強化しました。

 

国内製薬大手 中国事業の売上高。エーザイ:17年度売上高562億円・18年度売上高663億円・増減17.9パーセント・19年度売上高700億円・増減5.6パーセント。アステラス製薬:17年度売上高590億円・18年度売上高624億円・増減5.8パーセント・19年度売上高709億円・増減13.6パーセント。武田薬品工業:17年度売上高496億円・18年度売上高452億円・増減マイナス8.9パーセント・19年度売上高―億円・増減―パーセント。第一三共:17年度売上高353億円・18年度売上高385億円・増減9パーセント・19年度売上高―億円・増減―パーセント。

 

米IQVIAによると、18年の中国の医薬品市場は1323億ドル(約14兆5530億円)で、米国(4849億ドル=約53兆3390億円)に次ぐ世界2位。経済成長に伴う所得水準の向上と高齢化により、今後も市場拡大が続く見通しで、IQVIAは23年に中国市場は1400~1700億ドル規模(19~23年の年平均成長率は3~6%)に達すると予測しています。

 

医薬品の国別市場規模。米国:2018年・4849億ドル・CAGR14~18年7.20パーセント・2023年予測6250~6550億ドル・CAGR19~23年4~7パーセント。中国:2018年・1323億ドル・CAGR14~18年7.60パーセント・2023年予測1400~1700億ドル・CAGR19~23年3~6パーセント。日本:2018年・864億ドル・CAGR14~18年1.00パーセント・2023年予測890~930億ドル・CAGR19~23年マイナス3~0パーセント。ドイツ:2018年・535億ドル・CAGR14~18年5.00パーセント・2023年予測650~690億ドル・CAGR19~23年3~6パーセント。フランス:2018年・368億ドル・CAGR14~18年1.50パーセント・2023年予測370~410億ドル・CAGR19~23年マイナス1~2パーセント。イタリア:2018年・344億ドル・CAGR14~18年6.30パーセント・2023年予測400~440億ドル・CAGR19~23年2~5パーセント。ブラジル:2018年・318億ドル・CAGR14~18年10.80パーセント・2023年予測390~430億ドル・CAGR19~23年5~8パーセント。英国:2018年・284億ドル・CAGR14~18年6.20パーセント・2023年予測330~370億ドル・CAGR19~23年2~5パーセント。スペイン:2018年・246億ドル・CAGR14~18年5.40パーセント・2023年予測270~310億ドル・CAGR19~23年1~4パーセント。カナダ:2018年・222億ドル・CAGR14~18年5.00パーセント・2023年予測270~310億ドル・CAGR19~23年2~5パーセント。

 

急速に進む規制緩和

日本の製薬大手が中国への投資を加速させるのは、中国政府が医薬品をめぐる規制緩和を進めているからです。

 

アステラスの安川社長は決算会見で「中国では、経済成長に加え規制緩和が急速に進み、イノベーションを積極的に取り込む政策が打ち出されている」と指摘。「かつて中国は、当局によるIND(治験申請)の審査が長く、アジアの国際共同治験に組み込むことができなかった。中国独自の治験を行わなければならならず、非常にコストのかかるビジネスだったが、今はそうではなくなった」と言います。

 

HIF-PH阻害薬 中国で世界初承認

中国では、承認審査のプロセス改善や審査担当者の大幅な増員などによって、新薬が早期に承認される可能性が高まっています。さらに中国政府は、国家医療保険償還医薬品リストへの収載機会の拡大を進めており、患者アクセスも改善されつつあります。

 

18年12月には、次世代の腎性貧血治療薬として注目されるHIF-PH阻害薬が、日本や欧米よりも早く中国で世界初の承認を取得。米ファイブロジェンと英アストラゼネカが共同開発したロキサデュスタット(日本ではアステラスが開発)で、今年後半の発売を予定しています。中国には、日本だけでなく欧米の製薬大手も投資を拡大させており、今後は同薬のように画期的新薬がまず中国で承認されるというケースが当たり前になるかもしれません。

 

(前田雄樹)

 

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