IQVIA(旧クインタイルズIMS)は3月1日、2017年の国内医療用医薬品市場が前年比1.0%減の10兆5148億7800万円となったと発表した。国内市場が暦年で前年を下回ったのは2010年以降初めて。「ハーボニー」などC型肝炎治療薬の売り上げが大幅に縮小したのが響いた。製品別売上高では抗がん剤「アバスチン」がトップとなった。
C型肝炎薬の縮小が影響
国内医療用医薬品市場が10兆円を上回ったのは3年連続。市場の内訳を見ると、「病院」が4兆5092億5600万円(前年比1.4%減)、「開業医」が2兆1661億7100万円(0.4%減)、「薬局その他」が3兆8394億5100万円(0.9%減)で、3市場すべてで前年割れしたのも10年以降では初めてという。
薬効分類別では、「抗腫瘍剤」が1兆300億7600万円(7.5%増)と暦年では初めて1兆円を上回ってトップ。2位は「糖尿病治療剤」(5504億9800万円、5.2%増)、3位は「レニン-アンジオテンシン系作用薬」(4613億9000万円、8.9%減)だった。
一方、「全身性抗ウイルス剤」は44.2%減と大幅に縮小。ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー」(79.1%減)と「ソバルディ」(54.3%減)が大きく売り上げを落とし、市場全体の足を引っ張る格好となった。
製品別トップはアバスチン オプジーボは3位
製品別売上高では、中外製薬の抗がん剤「アバスチン」が0.5%増の1142億4300万円を売り上げ、前年2位からトップに浮上。2位は第一三共のPPI「ネキシウム」で1019億6600万円(1.1%減)、17年2月に薬価が半額に引き下げられた小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」は1002億5400万円(6.9%減)で3位だった。
前年トップの「ハーボニー」や同5位の「ソバルディ」は大幅な売り上げ減でトップ10からは姿を消した。一方、バイエル薬品の抗凝固薬「イグザレルト」(715億1400万円、11.5%増)と、武田薬品工業のARB「アジルバ」(648億2100万円、7.9%増)が初めてトップ10入りした。
上位10製品以外で売り上げを大きく伸ばしたのは、日本イーライリリーの抗がん剤「サイラムザ」(52.1%増)やアストラゼネカの同「タグリッソ」(209.7%増)など。糖尿病治療薬ではDPP-4阻害薬とビグアナイド薬の配合剤「エクメット」(86.1%増)やGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(217.7%増)などが大幅に伸びた。
「イグザレルト」がトップ10入りした抗凝固薬では、「エリキュース」(18.8%増)や「リクシアナ」(88.1%増)も拡大。武田薬品の酸関連疾患治療薬「タケキャブ」(86.3%増)も大幅な売り上げ増となった。
一方、17年に後発医薬品が参入したARB「オルメテック」は15.5%減、同「ミカルディス」は34.6%減。同じく後発品が出た高脂血症治療薬「クレストール」は、塩野義製薬販売分が12.6%減、アストラゼネカ販売分が13.2%減となった。
販売トップは武田 後発品2社がトップ20入り
国内の売上高上位20社を見てみると、販売会社レベル(卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ企業)では武田薬品がトップ。2位は第一三共、3位はアステラス製薬で、上位3社に変化はなかった。前年4位だった中外製薬は5位に下がり、かわって前年5位のファイザーが4位に上がった。前年6位のギリアドはランキング圏外に下がり、日医工と沢井製薬の後発医薬品2社がトップ20にランクインした。
一方、販促会社レベル(MRによる学術宣伝を通じて販促活動を行っている企業。2社以上ある場合はよりオリジネーターに近い企業)では、ファイザーが首位。2位は第一三共、3位は中外製薬、4位は武田薬品と、上位4社は同じ顔ぶれだった。