海外大手製薬会社の2017年の業績が出そろい、スイス・ロシュが初めて世界首位となりました。
AnswersNewsが17年12月期(日本企業は18年3月期)の世界売上高100億ドル超の製薬会社25社の業績を集計したところ、抗体医薬の抗がん剤が好調なロシュが、米ファイザーから売上高世界一の座を奪取。ファイザーは2位に後退し、スイス・ノバルティスは3位をキープしました。
※3月1日に公開した記事に、独ベーリンガーインゲルハイム、米マイラン、アステラス製薬の業績発表を反映しました(4月27日)。
※4月27日に更新した記事に、武田薬品工業の業績発表を反映しました(6月11日)。
INDEX
ロシュ 抗がん剤堅調で5%増収 ファイザーは微減
2017年、売上高で世界トップとなったのは、公表通貨ベースで前年比5.4%増の543億6500万ドル(532億9900万スイスフラン、6兆761億円)を売り上げたスイス・ロシュ。前年2位から1つ順位を上げ、初めて世界一の座に就きました。
ロシュは強みとする抗がん剤などの抗体医薬が好調でした。乳がんの抗体薬物複合体「パージェタ」や中外製薬が創製した関節リウマチ治療薬「アクテムラ/RoActemra」などが2ケタの伸び。主力の抗がん剤「MabThera/リツキサン」「ハーセプチン」も堅調でした。
2位は前年首位だった米ファイザーで、売上高は525億4600万ドル(5兆8852億円)。乳がん治療薬「イブランス」など新薬部門は伸びたものの、特許切れ品の減収や事業売却の影響で0.5%の減収となりました。前年に続いて3位のスイス・ノバルティスは491億900万ドル(5兆5002億円)。乾癬治療薬「コセンティクス」や心不全治療薬「Entresto」などが売り上げを伸ばしましたが、白血病治療薬「グリベック」の特許切れの影響で1.2%の増収にとどまりました。
米メルクは、一部製品の生産が中断するなどした昨年6月のサイバー攻撃で2億6000万ドルのマイナス影響を受けましたが、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」などが売り上げを伸ばし、0.8%増の401億2200万ドル(4兆4937億円)で4位をキープ。5位は希少疾病用医薬品が大きく伸びた仏サノフィ、6位は抗HIV薬が好調な英グラクソ・スミスクラインでした。
ギリアド C型肝炎薬ピークアウトで2ケタ減収
米ギリアド・サイエンシズは、14.1%減の261億700万ドル(2兆9240億円)と大幅な減収となりました。C型肝炎治療薬「ハーボニー」の売り上げがピークを超えたことが影響し、前年8位から9位にランクダウン。ハーボニーの売上高は前年の90億8100万ドルから43億7000万ドル(4894億円)に半減しました。
一方、糖尿病治療薬「トルリシティ」や乾癬治療薬「トルツ」などの新製品が伸びた米イーライリリーは、前年13位から3つ順位を上げて10位にランクイン。かわりに、高脂血症治療薬「クレストール」の特許切れが響いたアストラゼネカがトップ10圏外となりました。
世界で最も売れている医療用医薬品である「ヒュミラ」の売上高が184億2700万ドル(2兆638億円)に達した米アッヴィは2ケタ増収。「ステラーラ」「ダラザレックス」などが拡大した米ジョンソン&ジョンソンも好調でした。
[全ランキング]シャイアー 買収の血友病薬で3割増収 セルジーンも2ケタ増
ここからは、トップ10を含む全ランキングです。
10位以下で売り上げを大きく伸ばしたのは、20位のアイルランド・シャイアー(33.0%増)や21位のセルジーン(15.8%増)。シャイアーは16年に買収した米バクスアルタの血友病治療薬が伸びて大幅増収。セルジーンは多発性骨髄腫治療薬「レブラミド」が17.4%増の81億8700万ドル(9169億円)に達しました。
14位の米ブリストル・マイヤーズスクイブは、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」と抗凝固薬「エリキュース」などが伸び、6.9%の増収。13位の独ベーリンガーインゲルハイムや17位の米アラガン、22位の米バイオジェンも売り上げを伸ばしました。
日本企業では、武田薬品工業が19位、アステラス製薬が24位、大塚ホールディングスが25位にランクイン。武田薬品のシャイアー買収が実現すれば、売上高は単純合算で309億1800万ドル(3兆4685億円)となり、世界トップ10に入る見込みです。
研究開発費 ロシュが100億円ドル超 セルジーンは売上高比率45.5%
研究開発費が最も多かったのは前年に引き続きロシュで、その額は115億1800万ドル(1兆2873億円)と唯一100億ドルを超えました。2位は99億8200万ドル(1兆1180億円)でメルク、3位は89億7200億ドル(1兆49億円)でノバルティス。ジョンソン&ジョンソンも医療用医薬品だけで日本円にして1兆円近い研究開発投資を行っています。
一方、売上高に対する研究開発費の比率が最も高かったのはセルジーン。45.5%と売上高の半分近くを研究開発に投資しています。次いで高かったのはブリストルで30.9%。アストラゼネカ(25.6%)やメルク(24.9%)も売上高の4分の1を投じました。
18年もロシュがトップ維持か
2018年はロシュが1桁台前半の売上高成長を予想。ファイザーは売上高535~555億ドルと1.8~5.6%の成長を見込んでおり、18年もロシュがトップを維持する可能性が高そうです。ノバルティスは1桁台前半から半ばの売上高成長、メルクは売上高412~427億ドル(2.7~6.4%増)を予想しています。
米国で喘息・COPD治療薬「アドエア」に後発医薬品が参入する可能性があるグラクソ・スミスクラインは、今年中ごろに後発品が発売された場合、1株当たり利益の成長率が横ばいから3%減と予想(後発品が参入しない場合は4~7%増の見込み)。ギリアドは製品売上高が200~210億ドル(17年は256億6200万ドル)と引き続き減収を見込んでいます。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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