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抗NGF抗体が登場へ 拡大見込まれる変形性関節症市場…それでも残るアンメット・メディカル・ニーズ|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、変形性関節症の痛みに対する治療薬。抗神経成長因子抗体の登場が近付いており、市場の拡大が予想されますが、それでもアンメット・メディカル・ニーズは残ります。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

主要7カ国 市場規模は42億ドル

変形性関節症(OA)による疼痛は、慢性疼痛の中でも最も患者数の多い疾患の1つ。主要な医薬品市場(米国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国、日本)で8700万人が発症しており、これら7カ国のOA治療薬の市場規模は42億ドルに上るとみられる(2016年時点)。

 

OA治療薬市場はこれからも注目の市場だ。高齢化と肥満の増加を主な要因として、患者数は増加している。処方箋薬の鎮痛剤は数あれど、すべての患者でOAに伴う痛みを良好にコントロールできるわけではない。近く登場が見込まれる新薬は、既存薬よりも高い鎮痛効果をもたらす可能性があるが、実際の使用には障害も存在する。

 

現在、OAに対する治療には、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)やCOX2選択的NSAIDs、オピオイド、アセトアミノフェンとオピオイドの配合剤、デュアルアクティングオピオイド、局所麻酔、さらには関節内注射や関節置換手術が用いられており、これらを段階的に使っていくのが一般的だ。

 

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オピオイドとNSAIDsは向こう10年売り上げを維持

最近、長時間作用型オピオイドの乱用防止製剤(ADFs)や、NSAIDsと胃粘膜保護薬の配合剤が発売された。しかし、OAに伴う疼痛の治療パラダイムはこの10年以上ほとんど変化しておらず、ジェネリックが使用可能な薬剤が市場の中心を占めている。

 

現在、市場を牽引するオピオイドとNSAIDsは、OA痛治療での中心的な役割を背景に、引き続き患者シェアの大半を握り、2026年まで主要市場で売り上げを維持するだろう。ただ、オピオイドやNSAIDsの連用には安全性の懸念がつきまとう。NSAIDsの長期使用は消化器系・心血管系の副作用を、オピオイドの連用は依存や乱用を引き起こす可能性がある。米国では、オピオイドの乱用が以前から社会的・政治的な問題となっている。

 

抗NGF抗体 2026年には170億ドル規模に

2020年にも発売が見込まれるファースト・イン・クラスの神経成長因子(NGF)阻害薬は、OAに伴う疼痛の治療薬市場で、近い将来、最も大きな変化となる。疼痛領域はコストに敏感なため、ほかの疾患に使われる生物学的製剤より価格は低めになるだろう。それでも、この種の抗体医薬は高価になると予想され、NGF阻害薬の発売はOA痛治療薬の市場を大きく成長させる可能性がある。

 

NGF阻害薬は既存の鎮痛薬に比べて高価になると見込まれる。支払機関は使用にハードルを設けると予想され、手術の対象とならない重度の痛みを抱える患者などに使用が制限されるだろう。医療技術評価(HTA)でよい結果を出し、フォーミュラリーで有利な位置付けを得るため、これらの薬剤の開発者はその裏付けとなる費用対高価のデータを提供する必要がある。現在進行中の臨床第3相試験では、引き続き顕著な有効性を実証すべきだし、米FDA(食品医薬品局)が臨床試験の差し止めを命じるに至った安全性への懸念を和らげることが望まれる

 

抗NGF抗体の使用は、OAの痛みを抱える患者のごく一部に限られるかもしれない。それでも、患者数が多いこと、価格が高いことが推進力となり、抗NGF抗体は2026年には主要市場で170億ドルの売り上げを叩き出し、ブロックバスターとなることが予想される

 

鎮痛効果と安全性プロファイルの両立が課題

DRGのインタビュー調査によると、現在開発の後期段階にある新規治療法はいずれも、アンメット・ニーズを十分満たすものにはならないとの見解で専門家は一致している。特に医師は、鎮痛薬の必要性を減らすOAの進行抑制薬の登場を望んでいる。

 

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しかし、そのような治療選択肢は近い将来使えるようにはならない。そうなるとやはり、鎮痛効果の向上と安全性プロファイルの改善を同時に実現することが、最大のアンメット・ニーズということになる。オピオイドの連用による依存や乱用、過量服薬のリスクを避けるため、医師はより効果の高い非麻薬性の鎮痛薬、あるいはより高度な乱用防止機能を持つオピオイドを求めている。

 

ここに残ったニーズが、OAに伴う痛みに向けてユニークな作用機序の治療薬を探索する製薬企業に商機をもたらす。主要国のOA痛治療薬市場は2026年にあわせて235億ドルに達する見通しだ。

 

(原文公開日:2017年9月1日)

 

【AnswersNews編集長の目】

高齢化に伴って伸びる“痛み”の市場。記事中にある抗NGF抗体の開発では、米ファイザーと米イーライリリーが共同開発するtanezumabと、米リジェネロンとイスラエル・テバ、田辺三菱製薬が共同開発するfasinumabuがいずれもP3試験段階にあり、ファースト・イン・クラスを競っています。

 

抗NGF抗体の開発にはこれまで紆余曲折がありました。臨床試験で実薬の投与を受けた患者で関節炎や骨壊死が増加するなどし、一時、FDAが臨床試験の一部差し止めを命令。その後、試験は再開されましたが、安全性に対する懸念にどうこたえるか、試験結果に注目が集まります。

 

日本では、tanezumabがP3試験を行っており、fasinumabは今夏にP2/3試験を開始しました。田辺三菱製薬は米リジェネロンと、fasinumabの日本、韓国、そのほかのアジア9カ国(中国を除く)での独占的開発・販売権を獲得するライセンス契約を結んでいます。

 

この記事は、Decision Resources Groupeのレポート(2017: Osteoarthritic Pain Disease Landscape and Forecast content)をもとに同社アナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。レポートに関する問い合わせはこちら

 

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