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製薬企業 変わる中期経営計画 姿消す具体的目標…将来予測の難しさ反映

これも、医薬品市場の予見性が低下していることの証でしょう。

 

企業が3~5年程度の中期的な経営方針を外部に示す「中期経営計画」。そのあり方が、国内製薬企業の間で変わりつつあります。従来は売上高や利益の具体的な数値目標を掲げるのが定番でしたが、目標をあえて設定しない企業や、成長率の目安だけにとどめる企業、売上高や利益以外の目標を設定する企業が増加。薬価制度の大幅な見直しなど、外部環境の急激な変化が、将来予測を難しくしています。

 

目標設定やめた持田製薬「環境変化、予測困難」

4月3日、2017~19年度の中期経営計画を公表した持田製薬。同社は3カ年の中計を毎年更新する「ローリング方式」を採用していますが、昨年から最終年度の具体的な数値目標の設定と公表を取りやめました。「政府の後発医薬品使用促進策や薬価改定の動きなど、市場環境変化の影響について予測が極めて困難である」。持田製薬は理由をこう説明します。

 

後発品の急速な普及、薬価制度の大幅な見直し、費用対効果評価の導入…。日本市場の予見性の低下が、中期経営計画のあり方を大きく変えています。

 

昨年1月、16~20年の5カ年の中計を公表した協和発酵キリンも、経営目標の設定を見直した企業の1つです。新たな中計では「コア営業利益1000億円以上」「海外売上高比率50%」「ROE(自己資本利益率)10%以上」を最終年の目標に設定。従来掲げていた売上高や各利益の具体的な数値目標は姿を消しました。

 

「日本の市場は本当に予測が難しくなった。特に昨今の薬価をめぐる動きは、製薬企業にとって予測が難しい。こうやったらきっちり伸ばせる、ということを言うのは難しい」。昨年2月の中計説明会の席上、同社の花井陳雄社長はこうこぼしました。

 

揺らぐ前提条件 相次いだ計画未達

2015年度(16年3月)に前の中計を終えた製薬企業では、経営目標の未達が相次ぎました。

 

エーザイは15年度までの中計「はやぶさ」で売上高8000億円超、営業利益2000億円超の過去最高業績を目標に掲げましたが、実際は売上高5479億円、営業利益519億円と目標には遠く及ばず。田辺三菱製薬は途中で下方修正した目標こそ達成したものの、当初掲げた売上高5000億円、営業利益1000億円は未達でした。

 

田辺三菱製薬は目標未達の要因を「薬価制度の見直しと後発品の使用促進策による長期収載品の減収」と振り返りました。中計期間中の12年度には長期収載品の追加的な薬価引き下げが行われ、14年度には後発品への切り替え率が一定の基準に達するまで薬価を繰り返し引き下げるルールが導入。後発品の使用促進策も強化されました。

 

こうした制度見直しの影響を受けたのはエーザイも同様。認知症治療薬「アリセプト」やプロトンポンプ阻害薬「パリエット」が、予想を上回るスピードで後発品に切り替わったことが打撃となりました。外部環境の急速な変化が、中計策定時の前提条件を大きく揺るがし、目標達成を困難にしました。

主な製薬企業の直近の中期経営計画の達成状況

武田やアステラス 中外は「ガイダンス」

最大手の武田薬品工業は2013年度から、それまで発表していた3カ年の中計の発表を取りやめました。現在公表しているのは同社が経営の指標としている「実質的な売上収益」「実質的なコア・アーニングス」「実質的なコア・EPS」の翌年の成長率と、向こう3年間の年平均成長率。「実質的な」とは為替や製品移管などの影響を除いたもので、「コア・アーニングス」は売上総利益(粗利)から販管費と研究開発費を引いたものです。成長率は具体的な数字ではなく「1桁台半ば」といった形で示されます。

 

長谷川閑史社長(当時)は、3カ年の中計の発表を取りやめた理由について、▽世界経済が激しく変化する中で3カ年の数値目標を発表し続けるのは難しい▽欧米大手が具体的な数値目標を公表していない――と説明。「グローバルスタンダード」に合わせ、成長の目安を示す「ガイダンス方式」を採用しました。

 

アステラス製薬も15~17年度の経営計画から、重要な経営指標と位置づける「ROE15%以上」を目標とし、売上高は「年平均成長率(%)は1桁台半ば」、コア営業利益は「売上を上回る年平均成長率」とガイダンス方式に移行。中外製薬も13~15年の中計から、売上高や営業利益の数値目標を示すのをやめ、「コアEPS」の年平均成長率を定量的な経営目標に採用しました。

 

「社内外の環境が大きく変化する中、3年後の業績予測をピンポイントで示すことはかえってミスリーディングになる」。中外製薬の小坂達朗社長は当時、目標設定を見直した理由をこう説明しました。

 

とはいえ、まだ売上高や利益の具体的な数値目標を設定する企業も少なくありません。16年度から新たな中計をスタートさせた企業では、第一三共やエーザイ、田辺三菱製薬、あすか製薬などが、従来型の業績目標を掲げています。

 

一方で、外部環境の不確実性はいっそう高まっています。国内では、毎年改定の導入をはじめとする薬価制度の抜本改革が議論に。海外に目を向ければ、米国では薬価引き下げを主張するトランプ政権が誕生し、EUは英国の離脱問題で揺れています。将来予測の困難さは増すばかり。中計のあり方は、今後も変化を続けていくことになりそうです。

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