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ニュース解説

国内製薬大手、抗体薬物複合体の開発が活発化―第一三共とエーザイ、自社技術で勝負

がん領域に力を入れる国内の大手製薬企業が、次世代抗体として期待される抗体薬物複合体(ADC)の開発を活発化させています。

 

第一三共は独自技術を使ったADCの臨床試験を進めており、エーザイも自社技術を結集した新薬候補が臨床入り目前。武田薬品工業とアステラス製薬は、提携先から技術を導入して開発を進めています。

 

「迷ったらがん、迷ったらADC」

「迷ったらオンコロジー、迷ったら『DS-8201』ということは、しょっちゅう言っている」

 

第一三共の中山譲治会長兼CEOは今年5月の経営説明会で、今後の投資の優先順位についてこう述べました。「DS-8201」は、第一三共が自社技術を活用して創製した、HER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)です。

 

ADCは、抗体医薬に低分子医薬品(ペイロード)をリンカーで結合させたもの。標的への特異性が高い抗体医薬と、細胞内に入り込むことができる低分子医薬品、両方の利点を併せ持つのが特徴です。抗体を“運搬役”としてがん細胞に薬剤を直接届けるため、単独では使えないほど強力な殺細胞性を持った化合物も投与することができ、正常組織での暴露を抑えながら高い抗腫瘍効果を発揮します。

抗体薬物複合体の仕組み

 

「DS-8201」米でブレークスルーセラピーに

第一三共は16~20年度の中期経営計画で、がん事業の立ち上げ・確立を戦略目標の1つに掲げています。中心となるのは、ADCと急性骨髄性白血病の2分野。ADCでは臨床段階に2つ、前臨床段階に4つの新薬候補があり、最も開発が進んでいるのが「DS-8201」です。今年8月には再発・転移性乳がんを対象とした臨床第2相(P2)試験を開始しました。

 

「DS-8201」は、抗HER2抗体とリンカー、ペイロードのすべてを自社技術で構築。ペイロードには新規のDNAトポイソメラーゼ阻害薬を採用し、チューブリン阻害薬を使う従来型のADCと差別化を図っています。

 

今年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されたP1試験の中間結果によると、HER2発現患者97人の全奏効率は40.2%、病勢コントロール率は91.8%。すでに販売されているADC「カドサイラ」(スイス・ロシュ/中外製薬)で効果が得られなかったHER2発現転移性乳がん患者でも45%を超える全奏効率を示しました。米FDA(食品医薬品局)はこの中間結果に基づき、「DS-8201」をブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定しました。

 

エーザイは近くP1開始 アステラスや武田も臨床段階に

日本の製薬企業が開発を進める主なADCを一覧表にまとめました。

日本企業が開発中の主な抗体薬物複合体

 米シアトルジェネティクスと提携するアステラス製薬は、P2試験が進む「AGS-16C3F」(腎細胞がん)や「ASG-22ME」(尿路上皮がん)など、5つのADCを臨床段階に保有。武田薬品工業は、米メルサナ・セラピューティクスと共同開発する「XMT-1522」(HER2陽性固形がん)でP1試験がスタートしました。武田は昨年、メルサナから同剤の米国とカナダを除くグローバルの権利を獲得。新たなペイロードの開発にも共同で取り組みます。

 

第一三共とエーザイ 自社技術で開発

アステラスと武田が技術導入でADCの開発を進めるのに対し、自社技術にこだわるのが第一三共とエーザイです。

 

第一三共は「DS-8201」のほか、HER3をターゲットとする「U3-1402」の臨床試験が進行中。HER3陽性乳がんを対象に日本でP1/2試験を始めており、17年度第3四半期(17年10~12月)にはEGFR遺伝子変異のある非小細胞肺がんでP1試験を始める予定です。17年度下期には「DS-8201」のHER2陽性胃がんを対象としたP2もスタートします。

 

エーザイは自前の技術を結集して開発した「MORAb-202」が臨床入り目前。07年に買収した米モルフォテックが創製した抗葉酸受容体α抗体ファルレツズマブに、発売済みの抗がん剤エリブリン(製品名・ハラヴェン)を組み合わせたADCで、17年度中のP1試験開始を予定しています。葉酸受容体αは子宮内膜がんやトリプルネガティブ乳がんで高発現する分子。非臨床のデータからは、エリブリンの臨床用量の約5分の1の用量で効果があることが示唆されています。

 

第一三共 生産設備にも投資…アステラスは研究投資を縮小

次世代のがん治療薬として期待されるだけに、ADCをめぐる各社の動きも活発です。

抗体複合体をめぐる国内企業の最近の主な動き

 積極的に動いているのは第一三共で、今年4月には国内3工場でADCの生産ラインを増設し、バイオ医薬品の生産規模を2021年までに現在に3倍に拡大すると発表しました。初期投資額は約150億円。治験薬を安定的に供給して開発を加速させ、将来的な製品の安定供給を確保します。

 

免疫チェックポイント阻害薬との併用も

8月には、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」と「DS-8201」の併用療法の開発で、米ブリストル・マイヤーズスクイブと提携。17年度第4四半期(18年1~3月)に、HER2陽性乳がんと膀胱がんを対象とするP1試験を欧米で開始する計画です。

 

一方、アステラスはADC研究への投資を縮小することを決めました。07年に買収し、アステラスのADC研究で中心的な役割を果たしてきた米子会社アジェンシスの研究活動を今年度中に終了する予定。「がんの治療薬を世に出すにあたり、様々な新しい技術アプローチが見えてきている。私たちとしてはそちらに資源を振り向けていくことが適当だと判断した」(武田睦史CFO)といいます。現在進行中の開発プログラムは継続しますが、今後はADC以外の新技術・新治療手段への投資を拡大する考えです。

 

海外に目を向けると、米ファイザーが前駆B細胞性急性リンパ性白血病を対象に開発したADC「BESPONSA」(イノツズマブ オゾガマイシン)は今年6月に欧州で、8月には米国で承認を取得(日本は申請中)。独メルクが米国のバイオベンチャーとADCの開発で提携を結んだほか、英アストラゼネカも開発を進めるなど、激しい開発競争が繰り広げられています。

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