厚生労働省が10月、初めて公開した「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」のオープンデータ。薬効分類別の処方数上位30製品が公開された薬剤データは、医薬品市場を丸裸にするものとして注目を集めています。
NDBオープンデータから医薬品市場にフォーカスするこのシリーズ。今回は高脂血症を取り上げます(ランキング表の処方金額は編集部算出)。
上位30製品の3分の2がスタチン、フィブラート系の処方も多い
高脂血症治療の中心は、LDLコレステロールを低下させる作用を持つスタチン。院外処方/院内処方ともに、上位30製品の3分の2をスタチンが占めています。
院外/院内ともに処方数トップとなったのは、アストラゼネカと塩野義製薬のスタチン「クレストール2.5mg」。院外/院内を合わせた外来で計9億9225万錠が処方されました。上位にランクインした5mg錠も合わせると、「クレストール」の外来での処方金額は926億円に上ります。
院外の2位はMSDとバイエル薬品の小腸コレステロールトランスポーター阻害薬「ゼチーア」。院内でも3位に入っており、院外/院内を合わせた外来での処方数は2億6281万錠、処方金額は525億円でした。
院外の3位、院内の2位は、アステラス製薬のスタチン「リピトール10mg」で、5mg錠も院内/院外とも5位。かつては年間1000億円規模の売り上げを誇った製品ですが、2011年11月に後発医薬品が参入。アステラスが公表する売上高はピーク時の3分の1ほどに減っていますが、それでも処方数では上位につけました。
「リピトール」の後発品では、沢井製薬が競合を大きく引き離してトップに立っています。沢井の「アトルバスタチン5mg/10mg『サワイ』」は、院内/院外を合わせた外来での処方金額が99.2億円。後発品では大台となる100億円規模に拡大しました。
トリグリセリド(中性脂肪)の低下作用が強いフィブラート系薬も多く処方されていました。あすか製薬の「リピディル」は院外で6位、院内で8位。キッセイ薬品工業の「ベザトールSR」も上位に入りましたが、院外では沢井の後発品がブランド品を処方数で上回りました。
EPA/EPA・DHA製剤「エパデール」「ロトリガ」「後発品」の争いは?
トリグリセリドの高い高脂血症患者に使われるEPA製剤。「エパデール」(持田製薬)の独壇場だった市場にも、2008年に後発品が参入。13年1月には、武田薬品工業がEPAとDHAを含有する「ロトリガ」を発売し、三つ巴の競争が繰り広げられています。
このカテゴリでトップとなったのは、やはり「エパデール」でした。院外/院内とも粒状カプセルの「エパデールS900mg」「エパデールS600mg」が処方数で1位と2位を独占。「エパデール」は薬効分類上、「その他の血液・体液用薬」に分類されていますが、高脂血症治療薬全体として見ても「エパデール」の処方数は上位に相当します。1日の服用回数の違い(エパデールS900mgは1日2~3回、ロトリガは1日1~2回)を踏まえても、「エパデール」と「ロトリガ」の間にはまだ一定の開きがあります。
ただ、院外の「エパデールS900」(処方数1億4878万包)と後発品の「イコサペント酸エチル粒状カプセル900mg『サワイ』」「同『日医工』」(処方数計9086万包)を比べると、後発品もそれなりにシェアを高めていると考えられます。
【NDBオープンデータとは】 厚生労働省がレセプトや特定健診などの情報を収集・格納している「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB=ナショナルデータベース)」のデータの一部を、誰でも自由に利用できるよう単純な集計表として公開したもの。10月に初めて公表されたオープンデータの集計対象は、2014年4月~15年3月のレセプト約18億800万枚。薬剤に関するデータは、「内用」「外用」「注射」のそれぞれについて、「外来院外」「外来院内」「入院」ごとに、薬効別に処方数上位30品目を集計。「性別年齢別」「都道府県別」の集計表が公開されている。 |