欧米製薬大手の2015年業績が出そろいました。
主力品が好調で売り上げを大きく伸ばした企業があった一方、特許切れによる後発医薬品との競合に為替の影響が重なり、売り上げや利益を落とした企業も。ファイザーやメルクは2桁の最終減益となりました。
欧州製薬大手15社の2015年業績のハイライトを、2回に分けてお届けします。1回目はスイス・ノバルティス、米ファイザー、スイス・ロシュ、仏サノフィ、米メルク、米ギリアド、英グラクソ・スミスクライン、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの8社です。
INDEX
【ノバルティス】実質5%増収。ジレニアが好調維持
売上高は前年比5%減、為替の影響を除いた実質ベースでは5%増となりました。
純利益は73%増。事業売却など一時的な要因が利益を押し上げましたが、これを除くと純利益は70億2800万ドル(34%減)でした。
多発性硬化症治療薬「ジレニア」が27億7600万ドル(12%増)と好調を維持したほか、慢性骨髄性白血病治療薬「タシグナ」(16億3200万ドル、7%増)などが伸びました。
最主力品の慢性骨髄性白血病治療薬「グリベック」は46億5800万ドル(2%減)。英グラクソ・スミスクラインから買収した抗がん剤の製品群も貢献しました。
【ファイザー】15%の最終減益。「Celebrex」などへのGE参入が痛手
売上高は前年比2%減、為替の影響を除くと6%の増収。純利益は15%減となりました。
ワクチン(44%増)やがん領域(33%増)は好調でしたが、後発医薬品が参入した神経性疼痛治療薬「リリカ」や疼痛治療薬「Celebrex」(日本製品名「セレコックス」)などの売り上げ減少が響きました。
最主力品の肺炎球菌ワクチン「プレベナー」は40%伸び、62億4500万ドルを売り上げました。一方、欧州で特許の切れたリリカは48億3900万ドル(6%減)、米国で特許が切れたCelebrexは8億3000万ドル(69%減)。地域別では、米国以外で売り下を落とし、特に先進国市場での落ち込みが目立ちました。
【ロシュ】「リツキサン」「アバスチン」など好調
売上高は前年比1%増、純利益は5%減となりました。為替の影響を除くと、売上高は5%増、純利益は4%増でした。
主力の抗がん剤は好調で、「MabThera/リツキサン」が70億4500万スイスフラン(5%増)、「アバスチン」が66億8400万スイスフラン(9%増)、「ハーセプチン」が65億3800万スイスフラン(10%増)を売り上げました。
「パージェタ」(14億4500万スイスフラン、61%増)、「カドサイラ」(7億6900万スイスフラン、51%増)といった新製品も順調に成長した一方、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」は7億500万スイスフラン(28%減)と売り上げを落としました。
【米メルク】「ジャヌビア」伸び悩み「レミケード」特許切れ響く
売上高は前年比6%減で、為替変動の影響を除くと前年からほぼ横ばいでした。前年に計上したOTC事業の売却益がなくなったことが響き、純利益は63%減と大幅な減益になりました。
欧州で特許が切れた関節リウマチ治療薬「レミケード」は、バイオシミラーとの競合激化が影響して17億9400万ドル(24%減)。最主力品の2型糖尿病治療薬のDPP-4阻害剤「ジャヌビア/JANUMET」は60億1400万ドルで横ばいでした。
一方、HPVワクチン「ガーダシル」は19億800万ドル(10%増)と伸び、抗PD-1抗体「KEYTRUDA」も5億6600万ドルで前年の10倍に拡大しました。
【サノフィ】9%増収も「ランタス」の成長鈍化
売上高は前年に比べて9.0%(為替の影響を除くと1.6%)増加しました。一方、無形資産の減損や構造改革費用が利益を圧迫し、純利益は2.3%の減益となりました。
最主力品のインスリン製剤「ランタス」は63億9000ユーロ(0.7%増)。米国での落ち込みが激しく、為替の影響を除くと11%のマイナスとなりました。
希少疾病用医薬品を扱うジェンザイム事業は36億6400ユーロ(40.7%増)、ワクチンは47億4300万ユーロ(19.4%増)と好調で、ジェネリック医薬品も19億1700万ユーロ(6.2%増)と伸びました。
【グラクソ・スミスクライン】HIVとワクチンが好調
売上高は、前年比4%増。為替の影響を除くと6%の増加です。ノバルティスへの事業売却益が利益を押し上げ、純利益は前年の約3倍に膨れました。
最主力品の喘息・COPD治療薬「Seretide/アドエア」は36億8100万ポンドで13%減少したものの、HIV領域が23億2200万ポンド(54%増)、ワクチンが36億5700万ポンド(19%増)と伸びました。
【ギリアド・サイエンシズ】「ハーボニー」が急拡大。31%増収
売上高は前年比31.1%増、純利益は49.6%増と大幅な増収増益となりました。
昨年、日本でも発売されたC型肝炎治療薬「ハーボニー」は前年の6.5倍となる138億6400万ドルを売り上げた一方、同「ソバルディ」は52億7600万ドルと半減しました。
「ツルバダ」(34億5900万ドル、3.6%増)や「スタリビルド」(18億2500万ドル、52.3%増)などHIV治療薬も売り上げを伸ばしました。
【ジョンソン・エンド・ジョンソン】SGLT-2阻害薬が売り上げ倍増
売上高は前年比5.7%減。医薬品事業は2.7%の減収で、為替の影響を除くと4.2%増でした。
欧州以外で販売する関節リウマチ治療薬「レミケード」は65億6100万ドルで4.5%減、C型肝炎治療薬「OLYSIO/ソブリアード」は競合品に押されて7割減でした。
一方、乾癬治療薬「ステラーラ」は19%増の24億7400万ドルを売り上げました。前立腺がん治療薬「ザイティガ」は22億3100万ドルとほぼ横ばい。2型糖尿病治療薬「INVOKANA/INVOKAMET」(日本製品名「カナグル」)は前年の2倍以上となる13億800万ドルでした。
日本円には下記のレートで換算(2015年の平均レート) |