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ニュース解説

【欧米製薬大手2015年業績】安定成長、米国頼み…新興国拡大も不安含み、欧州市場の停滞改めて浮き彫りに

更新日

欧州製薬大手の2015年業績が出そろいました。

 

AnswersNewsで集計した15社のうち増収を確保したのは10社。主力製品が好調な米ギリアド・サイエンシズや米アッヴィ、ノボノルディスク(デンマーク)などが大幅な増収となりました。一方、米ファイザーや米メルクは2桁の減益。主力品の特許切れに加え、ドル高が足を引っ張りました。

 

堅調な米国市場に支えられた企業が多かった一方、欧州では売り上げを落とす企業が目立ち、欧州市場の停滞があらためて浮き彫りになりました。各社が成長市場と位置付ける新興国も景気減速や通貨安で不安含みとなっています。

 

 

ギリアド、アッヴィ、ノボなど好決算 主力品が好調

売上高グラフ

 

15社のうち、売上高の伸び率が最も高かったのが米ギリアド。C型肝炎治療薬「ハーボニー」が138億6400万ドル(前年比558.8%増)に達し、同社の売上高は31%増加しました。

 

インスリン製品群が好調なデンマーク・ノボも22%の増収。抗凝固薬「イグザレルト」などが伸びた独バイエルヘルスケア、抗リウマチ薬「ヒュミラ」が140億1200万ドル(11.7%増)を売り上げた米アッヴィも2桁増収となりました。

 

最大手のスイス・ノバルティスは5%の減収でしたが、為替の影響を除くと5%の増収。多発性硬化症治療薬「ジレニア」が引き続き好調だったほか、英グラクソ・スミスクライン(GSK)との事業交換で獲得した抗がん剤も貢献しました。

 

英グラクソ・スミスクラインは最主力品の喘息・COPD治療薬「Seretide/アドエア」が7%減となったものの、ワクチンやコンシューマーヘルスケアの大幅増収でカバー。抗リウマチ薬「エンブレル」など主力品が軒並み好調だった米アムジェンも増収増益でした。

  

ファイザー、メルクなど2桁減益 特許切れにドル高響く

一方、売上高2位のファイザーは2%の減収、15%の最終減益。売上高は事業ベースで6%伸びましたが、為替によって8%押し下げられました。神経疼痛治療薬「リリカ」や疼痛治療薬「Celebrex」(日本製品名「セレコックス」)が特許切れによって売り上げを大きく減らした上、ドル高の影響を大きく受けた形です。

 

米メルクも売上高6%減、純利益63%減の減収減益。為替の影響を除くと売上高は横ばいでした。主力の2型糖尿病治療薬「ジャヌビア/JANUMET」が伸び悩み、欧州で特許が切れた抗リウマチ薬「レミケード」が売り上げを大きく減らしたことが響きました。

  

目立つ欧州での売り上げ減、新興国には不安要素も

各社の売り上げを地域別に見ると、欧州で売り上げを落とす企業が目立ちました。

 

欧州での売上高は、ファイザーは17%減(為替の影響を除くと3%減)、メルクが19%減、イーライリリーが17%減(為替の影響を除くと3%減)、グラクソ・スミスクラインがCER(恒常為替レート)ベースで2%減。サノフィは西欧で0.9%増とかろうじて増収を確保したほか、ノボも現地通貨ベースで2%増にとどまりました。

 

薬価への圧力高まる 

財政危機から医療費抑制策を強めている欧州では、新薬の価格に対する圧力が高まっています。

 

例えば欧州最大市場のドイツでは2011年、発売後に行われる有効性評価の結果に基づいて新薬の価格を設定する医薬品市場再編法(AMGNOG)が施行され、高い薬価を得ることが難しくなりました。後発医薬品の使用も増加しており、欧州市場の停滞をあらためて印象付ける決算となりました。

 

一方、米国市場は堅調でした。ファイザーはCelebrexの特許切れにも関わらず米国での売上高が14%増加。ノボが32%増(現地通貨ベースでは11%増)、アッヴィが25.6%増となったほか、ギリアドが17%増、メルクが14%増など2桁増収となる企業が相次ぎました。

 

通貨下落や景気減速に懸念

新興国市場での売り上げ(為替の影響を除く)は、ファイザーが7%増、サノフィが7.8%増、アストラゼネカが12%増、ノボ(中国)が22%増などと高い伸びとなりました。

 

ただ、通貨下落や景気減速など、新興国不安要素も少なくありません。ロシアやブラジルが経済危機に陥るなど新興国経済は不安定な状況にあり、安定成長は米国市場に頼らざるを得ないのが現状です。

新興国イメージ

拡大を続ける新興国の医薬品市場。だが、景気減速や通貨安など不安要素も少なくない

 

日本市場、円安が押し下げ

日本市場の売上高は5社が公表しました。

 

「アバスチン」など抗がん剤が好調なロシュ、高脂血症治療薬「クレストール」やプロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」が伸びたアストラゼネカ、イーライリリーは、薬価改定のない年だったこともあり、為替の影響を除けば増収となりました。

 

しかしドルベースでは、円安による押し下げの影響を受けて減収。抗血小板薬「プラビックス」の特許切れを迎えたサノフィは、為替の影響を除いても6.6%の減収となりました。 

 

日本売上高

  

2016年はどうなる?

2016年の欧米製薬大手の業績は、おおむね2015年と比べて横ばいから微増で推移しそうです。

 

ノバルティスは2015年とほぼ同等の売上高、営業利益を予想。ファイザーは売上高490~510億ドル(2015年は489億ドル)、調整後1株当たり純利益(EPS)2.20~2.30ドル(2015年は2.20ドル)を見込んでいます。一方、クレストールの特許切れを迎えるアストラゼネカは1桁台前半から半ばの減収となる見通しです。

 

ファイザーが首位返り咲きへ

英調査会社エバリュエートファーマは、2016年の処方箋薬と一般用医薬品(OTC)の合計世界売上高は、ファイザーが480億ドルとなり、ノバルティス(445億ドル)を抜いて首位に返り咲くと予測しています。

 

これはアイルランド・アラガンとの合併の影響を除いたもので、仮に合併が実現すれば売上高は704億ドルに達する見込みです。

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