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米メルク、100億ドルで英ベローナ買収…キイトルーダ特許切れ控えさらなるM&A検討

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロイター]米メルクは7月9日、英国に拠点を置くバイオ医薬品企業ベローナ・ファーマを約100億ドルで買収すると発表した。超大型薬「キイトルーダ」に依存する収益の多角化が求められる中、有望な呼吸器疾患治療薬を獲得する。

 

COPD治療薬を獲得、ピーク時数十億ドルの売り上げ予測

キイトルーダは世界トップクラスの売り上げを誇る医薬品で、年間売上高は約300億ドルに上る。しかし、2028年に主要な特許が切れ、売り上げの減少が見込まれている。

 

メルクにとって今年初となった今回の買収は、特許切れで減少する収益の補填というプレッシャーを軽減するが、これでM&Aが不要になるというわけではない。ロバート・デイビスCEO(最高経営責任者)は「われわれは引き続き、科学と価値に基づく事業開発の機会を緊急に評価している」と述べ、将来の買収では10~150億ドルとしている目安を超えるものも検討していると付け加えた。

 

メルクは今回の買収で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の新規治療薬である「オーツバイア」を獲得。同薬の年間売上高は30年代半ばまでにピークを迎え、数十億ドルに達すると予測している。

 

ノヴァール・キャピタル・マネジメントのシニアバイスプレジデント、ジェームズ・ハーロウ氏は、キイトルーダの特許切れが迫っていることに加え、HPVワクチン「ガーダシル」の需要鈍化が懸念される中、今回の買収はメルクにとって前向きな一歩だと評価している。

 

メルクの株価は9日に3%近く上昇し、83.71ドルで取引を終えた。一方、米国上場のベローナの株価は約21%上昇し、104.77ドルとなった。

 

ハーロウ氏は「メルクはキイトルーダ特許切れ後の成長に向けた体制の構築を継続的に進めており、こうした取引はさらに増えると予測している」と語った。

 

後期開発品は3倍に

メルクは21年以降、自社の研究開発とM&Aによって後期開発段階のパイプラインを3倍に増やした。21年には115億ドルで米アクセレロン・ファーマを買収し、肺動脈性肺高血圧症治療薬「ウィンレベア」を取り込んだ。

 

メルクにとって今回の買収は、23年に米プロメテウス・バイオサイエンシズを108億ドルで買収して以来の大型案件となる。

 

今回の買収で獲得するオーツバイアは24年に4230万ドルを売り上げており、アナリストは将来的に年間30億ドルを超えると予想している。

 

ジェフリーズのアナリスト、アンドリュー・ツァイ氏は、同薬の売上高は30年代までに30億~40億ドルに達すると予測している。同氏によると発売初年度の売上高は4億ドルを超える見込みだ。

 

メルクはベローナの米国預託株式1株あたり107ドルを支払う。これは前日の終値に対して23%のプレミアムとなる。

 

バール・アンド・ゲイナーの最高執行責任者(COO)ケビン・ゲイド氏は「今回のメルクの買収は一見すると好ましいものに見える。プロメテウスとウィンレベアでの成果を考えると、これ(オーツバイア)は補完療法となる可能性がある」との見方を示した。

 

BMOキャピタル・マーケッツのアナリスト、エヴァン・セイガーマン氏らもゲイド氏と同様の見解を示している。ただ、セイガーマン氏は、キイトルーダの特許切れ後、収益を大きく下げることなく円滑に次のステージに移行できると投資家に確信させるにはさらなる努力が必要だと指摘した。

 

(取材:Sabrina Valle/Christy Santhosh/Sriparna Roy/Kanjyik Ghosh/Mrinalika Roy、編集:Nivedita Bhattacharjee/Arun Koyyur/Sriraj Kalluvila/Franklin Paul、翻訳:AnswersNews)

 

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