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ニュース解説

大塚HDのがん領域支える大鵬薬品、買収でADC技術取り込み「創薬の最前線で戦える力獲得」

更新日

穴迫励二

スイスのベンチャー企業アラリスを買収し、抗体薬物複合体(ADC)技術を取り込むことを発表した大鵬薬品工業。大塚ホールディングス(HD)におけるがん領域の担い手として、その基盤強化に乗り出しました。2029年に始まる次の中期経営計画の期間中に、ADCで競争力のある新薬の上市を狙います。

 

 

「すべての課題を解決する技術」

大鵬薬品のがん領域の創薬はこれまで、代謝拮抗薬や分子標的薬といった低分子化合物が中心でした。2010年からは新たなモダリティにも手を広げ、ADCについてもすでに自社創薬を始めていました。アラリスとは23年11月から共同研究を行っており、基礎試験で既存のADCと比べて優れた血中安定性と抗腫瘍効果を確認。ただちに買収を決断しました。

 

従来のADCには、不十分な均一性、物性の悪化、血中安定性の低下が抗腫瘍効果と安全性に影響を及ぼすという課題があると言われます。さらに、単一のペイロードしか搭載することができず、その複雑さゆえに製造に時間とコストを要します。アラリスは独自のリンカー技術を持ち、大鵬薬品はこれが「すべての課題を解決する技術となる」(相良武取締役)と期待。幅広いがん種に高い抗腫瘍効果と安全性を発揮するADCを生み出せるとしています。

 

複数のペイロード搭載

ADCは急成長している分野ですが、発売に至った製品はまだ多くありません。大鵬薬品は買収を通じ、アラリスとバイオロジクス研究開発体制を構築。従来から強みとする低分子に加え、ADCでも継続的に開発ポートフォリオの拡充を進めます。

 

アラリスのパイプラインには、CD79bを標的とする「ARC-02」、ネクチン4を標的とする「ARC-401」、NaPi2bを標的とする「ARC-201」の3品目が前臨床段階にあり、いずれも今年から来年にかけて臨床試験に進む予定。このうち、「401」と「201」は作用機序が異なる複数のペイロードを搭載したADCとして開発しています。

 

大塚HDが24年6月に公表した28年までの中計では、最終年の売上収益2兆5000億円のうち医療関連事業で1兆6800億円を見込んでいます。医療関連事業は精神・神経領域が最大ですが、がん領域は23年の1608億円から3000億円まで伸ばす計画。特に、予後の悪い肺がんや消化器がんに注力する方針を掲げています。アラリスの買収は次の中計を見据えた事業基盤の強化が狙いで、「ADC創薬の最前線で戦える力を獲得したい」(相良氏)としています。

 

業績は急拡大「ロンサーフ」など牽引

大鵬薬品の業績はこの2年で急成長しています。連結売上収益(コンシューマーヘルスケア製品含む)は、20年から3年間は1500億円台で推移していましたが、23年には1987億円に増加し、24年は2456億円まで伸びました。円安もあって海外売上比率も57.9%と5割を突破。事業利益(コア営業利益に相当)は前年比2.1倍となる547億円、事業営業利益率は22.2%に達しています。

 

【大鵬薬品 業績の推移】〈年度/売上収益/事業利益〉20/1509.5/164.8|21/1549.8/130.8|22/1557.6/78|23/1987.3/256.7|24/2456.3/546.7|

 

売上収益のうちがん関連製品の占める割合は78.6%で、大塚HDのがん領域売上収益の大半を占めています。最主力の製品は現中計で業績の牽引役「コア2」の1つに位置付けられている「ロンサーフ」。大腸がんに対するアバスチンとの併用療法が各国のガイドラインで推奨され、24年はグローバルで前年比30.3%増の1044億円を売り上げました。「アブラキサン」も345億円まで伸び、次期中計以降の成長を支える製品「ネクスト8」に含まれる「INQOVI」や「リトゴビ」も貢献しています。

 

「リトゴビ」などブロックバスター化期待

リトゴビは22年9月に米国で肝内胆管がんを対象に承認されたのに続き、日本で胆道がん、欧州では胆管がんの適応で承認を取得。ライフサイクルマネジメント戦略を含め、ピーク時には1000億円以上を売るポテンシャルがあるとしています。中計期間中はロンサーフが横ばいを見込む一方で、リトゴビや開発中のジパレルチニブが大きく成長すると期待しています。

 

【大鵬薬品 がん領域の主要製品売上高】〈製品名/24年売上収益(億円)/24年前年比(%)/25年予想(億円)〉ロンサーフ/1044/30.3/1022|アブラキサン/347/8.5/375|INQOVI/INAQOVI/169/36.5/170|リトゴビ/LYTGOBI /82/163.4/90|ティーエスワン/72/▲ 8.5/90|大塚HDの資料をもとに作成

 

ジパレルチニブはEGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対する経口治療薬で、独自のシステイノミクス創薬基盤技術によって創製されました。世界の年間新規非小細胞肺がん患者数の1~2%にあたる3万人がEGFRエクソン20挿入変異陽性患者数と推計され、ピークセールスはリトゴビと同じ1000億円以上を期待。26年8月に臨床試験の終了を予定しています。

 

大塚HDは、安定的な財務状況を背景に、年間3000億円規模の研究開発投資を継続するとしています。大鵬薬品の研究開発費比率は24年で26.9%。同年6月にはコーポレートベンチャーキャピタルである大鵬イノベーションズ合同会社が、投資資金枠を従来の10億円から50億円に増額すると発表しました。アラリス買収では、完了時に4億ドル(約600億円)、追加マイルストンとして最大7.4億ドル(約1110億円)を支払います。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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