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本田圭佑さんの「研究者にとにかくばら撒け」で感じた「もっと知られるべき」という思い|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

「日本政府が本当にばら撒くべき人たちは、研究者たちである。良い研究に関する議論は必要やけど、言葉選ばずに言うと、とにかくばら撒け」

 

先月、Xでこんなポストが大バズりしました。投稿の主は、元サッカー日本代表で投資家の本田圭佑さん。かつてアカデミアで研究をしていた者からすると「よくぞ言ってくれた」という感じで、本田△(本田さんかっけー)と思いました(昔流行った本田さんを称賛する言葉ですが、若い人には通じないかもしれませんね)。

 

実は私も、以前にこのコラムで同じようなことを書いたことがあります。「研究費の『選択と集中』はやっぱり間違いだった」というタイトルの記事で、研究費は「広く薄く」配分したほうが画期的な成果を効率よく生み出せるという論文をもとに書いたものです。イノベーションを創出する上で、「選択と集中」ではなく「多角的」な研究費配分は基礎研究にとって非常に重要だと思っています。

 

普段の生活の中では、イノベーションはそれが結実したものとしての「製品」や「技術」としてしか認識しにくいものですが、それらは多様なサイエンスの総合力の上に成り立っています。総合力とはサイエンスの裾野の広さと言い換えることもでき、それを維持するには誰も知らないモノやコトに好奇心や探究心を持つ研究者という存在がすごく重要です。イノベーションの源泉はそうした好奇心や探究心であり、その良し悪しを評価するのは至難です。なので、研究の裾野を広げるには、広く薄く研究費を配分するのが良いと私は思っています。

 

いろんな意見が出たこと、一般の人の目に触れたことがありがたい

本田さんのポストに対しては、「有名な人が発言してくれてありがたい」とか、「研究への投資は未来にとって重要だ」とか、「研究分野を絞った上でないと意味がない」とか、「研究より国民が先」とか、いろんな反応がありました。個別の反応がどうこうということではなく、いろんな意見が出るということがとてもありがたいなと私は感じましたし、研究費に関する話題が広く一般の人の目に触れたこと自体がありがたいなと思います。

 

ただ、これは有名な人に任せていていいということではありません。サイエンスに関わる世界にいる私たちにも、社会に対して丁寧に、時には強く、説明や主張をしていく姿勢と行動が求められていると思います。

 

こうやって書き進めてくると、研究費の問題に限らず、世の中にはもっと知られるべきことってたくさんあるよなと思います。製薬業界や製薬企業のこともそうですよね。いろんなことを知るためにも、いろんな人に私たちの業界のことを知ってもらうためにも、対話を通じて自分と相手の好奇心を刺激し、世界を広げていけたらと思っています。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬アドボカシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X:@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary

 

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