2025年度の薬価改定は、過去2回の中間年改定とは違った形で行われます。ポイントをまとめました。
改定対象範囲、医薬品のカテゴリごとに設定
25年度改定と過去2回の中間年改定の最も大きな違いは、改定の対象範囲を医薬品のカテゴリごとに設定した点です。
過去2回は一律「平均乖離率の0.625倍超」に該当する品目が対象でしたが、今回は▽新薬創出加算対象品目▽新薬創出加算対象外の新薬▽長期収載品▽後発医薬品▽その他――の5つに分けて設定。イノベーション推進と安定供給確保の観点から、新薬創出加算対象品目と後発医薬品は「平均乖離率の1.0倍超」、新薬創出加算対象外の新薬は「平均乖離率の0.75倍超」と過去2回から緩和した一方、長期収載品は「平均乖離率の0.5倍超」と対象を広げました。
昨年9月の取引分を対象に行われた薬価調査の平均乖離率は5.2%でした。新薬創出加算品目と後発医薬品は乖離率5.2%超、新薬創出加算対象外の新薬は3.9%超、長期収載品は2.6%超の品目が25年度改定の対象となります。
改定対象は全医薬品の53%
改定の対象範囲を見直した結果、改定を受ける品目の割合は全体の53%となり、69%が対象となった過去2回から減少します。
新薬創出加算対象品目のうち改定の対象となるのは全体の9%(60品目)で、21年度の40%(240品目)、23年度の41%(同)から大きく減少。新薬全体で見ても改定対象は43%(1060品目)となり、23年度の63%(1500品目)を下回ります。同じく改定対象範囲が狭められた後発品も、23年度の82%(8650品目)から66%(5860品目)へと減少します。
一方、対象範囲が広がった長期収載品は全体の88%(1500品目)が対象。23年度の89%(1560品目)とほぼ変わりません。
新薬創出加算の累積額控除など中間年で初実施
25年度改定では、適用される改定ルールも過去2回とは一部異なります。
中間年改定ではこれまで、新薬創出加算の加算のみが行われてきましたが、今回は中間年改定としては初めて累積額の控除が行われます。昨年、後発品が参入するなどして加算の対象から外れた品目は、1年前倒しで加算を返還することになります。
適応拡大などを評価して改定時に適用される加算も、中間年改定では初めて実施されます。剤形ごとに薬価の下限を定めた最低薬価は過去2回の中間年改定でも適用されてきましたが、今回は物価高騰に配慮して引き上げを行います。消費増税への対応を除けば、2000年度以降で初めての引き上げとなります。
物価高騰や安定供給問題への対応として、今回も23年度中間年改定に続いて不採算品再算定を臨時・特例的に実施します。対象は▽基礎的医薬品とされたものと組成・剤形区分が同一の品目▽安定確保医薬品のカテゴリA・Bに位置付けられている品目▽厚生労働相が増産要請を行った品目――で、乖離率が全医薬品の平均を超える品目は対象外です。前回の中間年改定では乖離率を問わず適応され、1100品目が対象となりました。
薬剤費の削減額は2466億円
今回の中間年改定による薬剤費の削減額は2466億円。前回は3100億円、前々回は4300億円でした。対象品目の減少や乖離率の縮小を背景に、削減額は過去2回を下回ります。
製薬業界は反発
ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスが問題化し、後発品を中心とする医薬品の供給不足が続く中で中間年改定が行われることに、製薬業界は反発しています。24年度の薬価制度改革ではイノベーション評価の充実が図られ、政府が日本の創薬力強化に向けて動き出す中、中間年改定も一時、廃止の機運が高まりました。そうした中で決まった25年度改定の実施に、業界では落胆と失望が広がっています。
日本製薬工業協会は「製薬各社の日本での開発意欲が高まり、開発計画の再検討に着手したり国内開発を決定したりした事例も現れている中、ネガティブな政策が決定されたことは遺憾」とし、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消が後退しかねないと懸念。米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)も、「日本が創薬力の低下とドラッグ・ロスを生じさせた道に再び後退させるものだ」としています。
日本ジェネリック製薬協会は、カテゴリ別の改定対象範囲の設定や不採算品再算定の実施、最低薬価の引き上げなどは評価しながらも、中間年改定の実施は「医薬品業界にとってより厳しい環境になることが想定される」と危惧しています。
日本製薬団体連合会は今回の中間年改定の対象範囲について、「価格乖離の大きな品目」を対象に行うとしている2016年のいわゆる4大臣合意から「考え方が変化したとみなせる可能性がある」と指摘。中間年改定の位置付けや目的について議論する必要があると訴えています。