今月27日の投開票に向けて舌戦が繰り広げられている衆院選。衆院に議席を持つ9政党の公約から、医薬品に関連するものを抜粋し、テーマごとにまとめました。
薬価
製薬業界の関心も高い薬価については、立憲民主、国民民主、日本維新の会の3党が記載。立憲民主と国民民主は、医薬品の安定供給と新薬創出の観点から中間改定の廃止を掲げています。維新は財政規律とイノベーションを考慮した薬価設定の仕組みをつくり、創薬の国際競争力を育成する体制をつくるとしています。
国民民主はさらに、経済成長率を踏まえた新たな薬価設定ルールを策定するとしたほか、中医協委員に医薬品関連業種の代表者を加えると明記。革新的新薬へのアクセス確保とドラッグ・ラグ/ロス改善に向け、新薬収載時の価格算定方式の見直しと、特許期間中の価格を維持する制度への見直しも掲げています。市場拡大再算定の見直しにも言及し、いわゆる「共連れルール」は廃止するとしています。
与党の自民、公明の公約には、薬価に関する記述はありません。
医薬品の保険給付
医薬品の保険給付をめぐっては、国民民主がOTC類似薬や費用対効果評価の低い医療への公的医療保険給付の見直しを明記。保険外併用療養費制度の弾力化によって難病や希少疾患の治療選択肢を増やすとともに、先端医療の導入を促進するとしています。保険外療養への経済的支援や、先端医療への民間保険の活用も掲げています。
維新は、「後発医薬品使用の原則化や保険適用薬品の適正化などを進め、医療費の増大を抑制する」と記載。治療選択肢を広げ、先進的な医療技術の導入を促進するため、混合診療の解禁についても積極的に検討を進めるとしています。
創薬
創薬については、与党含め多くの政党の公約に記述が見られます。
自民は「創薬力を抜本的に強化する」とし、産官学の研究力向上や、感染症ワクチン・治療薬の研究、治験、生産の強化を掲げています。創薬エコシステムの整備を通じて創薬力の強化しつつドラッグ・ラグ/ロスを解消するとしているほか、製薬産業を国の基幹産業と位置付け、創薬ベンチャーによる開発への支援やバイオ医薬品の生産体制整備を推進する方針も明記しています。公明はがん治療の開発推進を掲げました。
立憲民主は難病などの治療薬・治療法の開発を進めるとし、感染症ワクチン・治療薬の国内開発に対する支援体制を強化すると明記。維新や国民民主も感染症治療薬・ワクチンの開発・生産体制を強化するとしています。
維新はさらに、「半導体や蓄電池、医薬品など、我が国の競争力が低下している戦略的物資の研究開発と生産体制の構築を積極的に支援する」としています。国民民主は「創薬エコシステム・イノベーション拠点」の構築や、規制のハーモナイゼーション、医療データの活用促進を掲げています。
医薬品供給
医薬品の供給をめぐっては、主に「サプライチェーンの強靭化・国内製造の強化」と「後発品を中心とする供給不足の解消」の2つの観点で各党が公約に記載しています。
サプライチェーンの強靭化や国内製造の強化は、自民、公明、維新が記載。自民は「特定重要物資の国内生産能力強化や調達多元化などに向けた支援を行う」とし、公明は「医薬品や半導体など国民生活や経済活動に欠かせない重要物資の国内製造力の強化へ集中投資する」としています。
供給不足の解消に向けては、自民が後発品の安定供給確保のための構造改革を行うと明記。公明は、後発品のサプライチェーン情報の共有化に向けた取り組みを進めるとともに、安定供給・品質担保のための体制確保に全力で取り組むとしています。
国民民主は、供給不安に陥っている医薬品の増産を支援するとし、価格の下支え制度や物価高騰に対応できる制度を構築すると記載。流通改善の促進や、メーカーの生産・在庫・出荷状況を一元管理するデータベースの構築も掲げています。
その他
4つのテーマ以外では、公明が来年4月に定期接種化される帯状疱疹ワクチンの円滑な接種を実現する方針を掲げています。維新は、HPVワクチン接種の機会を逃した世代への救済措置を確実に進めるとしています。
共産は「避妊薬や緊急避妊薬、中絶薬を安価でアクセスしやすくする」と明記。参政は新型コロナワクチンの接種推進策の見直しを求めるなどとしています。