(写真:ロイター)
2024年9月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
INDEX
【新薬】テセントリク、Ocrevusの皮下投与製剤など
がん
Tecentriq Hybreza|米ジェネンテック
「Tecentriq Hybreza」は、抗PD-L1抗体Tecentriq(一般名・atezolizumab)の皮下投与製剤。Tecentriqの全適応を対象に承認されました。ヒアルロン酸分解酵素hyaluronidaseを配合することで皮下投与を実現。静注製剤では30~60分かかっていた投与時間を約7分に短縮しました。英国や欧州でも承認済みです。
皮膚
Ebglyss|米イーライリリー
抗IL-13抗体「Ebglyss」(lebrikizumab)は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎治療薬。既存治療で効果不十分な12歳以上の患者に使用でき、維持期には4週間隔の投与が可能です。承認の根拠となった臨床試験では、奏効した患者の大多数で最長3年間の疾患コントロールを達成。欧州ではスペイン・アルミラールが23年に、日本ではリリーが今年1月にそれぞれ承認を取得しました。
神経
Ocrevus Zunovo|米ジェネンテック
「Ocrevus Zunovo」は、抗CD20抗体「Ocrevus」(ocrelizumab)にhyaluronidaseを配合した皮下投与製剤。「再発多発性硬化症」と「一次性進行型多発性硬化症」の適応で承認されました。欧州でも今年6月に承認されています。
代謝
Miplyffa|デンマークZevra
「Miplyffa」(arimoclomol)は、米国初となるニーマン・ピック病C型(NPC)治療薬。対象は2歳以上の小児と成人で、グルコシルセラミド合成酵素阻害薬miglustatと併用します。NPCはNPC1またはNPC2遺伝子の変異が原因で起こる希少疾患で、進行性の神経症状と臓器機能障害を引き起こします。臨床試験では12カ月にわたって病気の進行を遅らせました。
Aqneursa|米IntraBio
「Aqneursa」(levacetylleucine)は、Miplyffaに次いで承認されたNPC治療薬。体重15kg以上の小児と成人に単剤で使用します。承認の根拠となった臨床試験では、神経症状の改善と、12週間以内の日常生活に重要な機能的ベネフィットが示されました。
精神
Cobenfy|米ブリストル
統合失調症治療薬「Cobenfy」は、ムスカリン受容体作動薬のxanomelineと、抹消組織で作用するムスカリン受容体拮抗薬のtrospiumを組み合わせた経口薬。従来の抗精神病薬が標的としていたドパミン2受容体ではなく、ムスカリンM1/M4受容体を標的とするもので、新規作用機序の薬は米国で数十年ぶりとなります。米ブリストル・マイヤーズスクイブは、2023年の米カルナ・セラピューティクス買収で同薬を獲得。日本では臨床第3相(P3)試験が今年12月から行われる見通しです。
【適応拡大】「Tagrisso」のステージ3EGFR変異陽性非小細胞肺がん、「Tremfya」の潰瘍性大腸炎、など
がん
Keytruda|米メルク
抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、pemetrexedとプラチナ製剤との併用療法が「切除不能進行または転移性の悪性胸膜中皮腫の1次治療」の適応で承認。化学療法単独と比較した臨床試験では、全生存率を有意に改善しました。日本や欧州でも同適応で申請中です。
Kisqali|スイス・ノバルティス
CDK4/6阻害薬「Kisqali」(ribociclib)は、新たにHR陽性HER2陰性の早期乳がんのアジュバント療法として承認されました。再発リスクの高いステージ2~3の患者(リンパ節転移のない人を含む)が対象で、アロマターゼ阻害薬と併用します。臨床試験では、内分泌療法単独と比べて再発リスクを25%低減しました。欧州でも申請中です。
Rybrevant|米ヤンセン
抗EGFR/MET二重特異性抗体「Rybrevant」(amivantamab)は、標準治療(carboplatin + pemetrexed)との併用療法が、EGFRエクソン19欠損変異・エクソン21L858R変異陽性の局所進行または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に承認されました。EGFR阻害薬の治療中または治療後に進行した患者が対象です。化学療法を対照に行った臨床試験では、無増悪生存期間を有意に延長し、病勢進行または死亡のリスクを52%減少させました。日本ではEGFRエクソン20挿入変異陽性のNSCLCの適応で今月承認。前治療無効のNSCLCに対しては5月に申請しました。
Sarclisa|仏サノフィ
抗CD38抗体「Sarclisa」(isatuximab)は、自家造血幹細胞移植不適格の新規診断の多発性骨髄腫に対する1次治療として新たに承認されました。標準治療のVRd(bortezomibとlenalidomide、dexamethasone)と併用します。臨床試験では、VRd単独と比べて進行または死亡のリスクを約40%低減しました。日本と欧州、中国でも申請中です。
Tagrisso|英アストラゼネカ
第3世代のEGFR阻害薬「Tagrisso」(osimertinib)は、新たに「切除不能なステージ3のEGFR変異陽性非小細胞肺がん」に適応拡大。対象は、プラチナ製剤をベースとする化学放射線療法の治療中または治療後に病勢進行が見られない、EGFRエクソン19欠損変異またはエクソン21L858R変異陽性の患者です。承認の根拠となった臨床試験では、無増悪生存期間の中央値を3年以上延長し、進行または死亡のリスクをプラセボに比べて84%低減しました。欧州では今年7月に承認。日本でも申請を済ませています。
Retevmo|米イーライリリー
RET阻害薬「Retevmo」(selpercatinib)は、RET遺伝子変異陽性の進行・転移性甲状腺髄様がんの適応で完全承認を取得しました。対象は2歳以上の小児と成人。同適応では20年に12歳以上を対象に、今年5月に2歳以上の小児を対象に迅速承認を取得していました。
腎
Filspari|米Travere
「Filspari」(sparsentan)は、原発性IgA腎症の適応で完全承認を取得しました。同薬はIgA腎症の進行に関わる2つの経路(エンドセリン1とアンジオテンシン2)を阻害する非免疫抑制薬。完全承認の根拠となった試験では、対照群のARBのirbesartanに比べて優れた長期腎機能維持を示しました。欧州では今年4月にスイス・CSLビフォーが条件付き承認を取得。国内では、日本では開発・商業化権を持つレナリスファーマが今年P3試験を開始しました。
消化器
Tremfya|米ヤンセン
抗IL-23p19抗体「Tremfya」(guselkumab)は、中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎に適応拡大。既存治療で効果不十分か、既存治療に不耐性の患者を対象に行った臨床試験では、プラセボに比べて高い内視鏡的寛解率を示しました。日本と欧州でも申請中です。
呼吸器・免疫
Dupixent|米リジェネロン
抗IL-4/13受容体抗体「Dupixent」(dupilumab)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に適応拡大。コントロール不十分で好酸球性フェノタイプを示す成人患者を対象に、追加維持療法として使用されます。プラセボ対照の臨床試験では、急性増悪を有意に抑制し、肺機能と健康関連QOLを有意に改善することが確認されました。欧州や中国でも承認済みで、日本では今年4月に申請しました。Dupixentはまた、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の追加維持療法の適応で12~17歳の患者に対象を拡大。同適応では19年に成人を対象に承認されていました。日本では同適応は成人を対象に承認済みです。
Fasenra|英アストラゼネカ
抗Il-5受容体α抗体「Fasenra」(benralizumab)は、成人の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に適応拡大。承認の根拠となったP3試験では、Fasenraの投与を受けた患者の約60%が寛解を達成し、約41%が経口コルチコステロイドの服用を止めることができました。欧州でも近く承認される見通しで、日本でも申請済みです。
関節
Cimzia|ベルギーUCB
「Cimzia」(certolizumab pegol)は、2歳以上の若年性特発性関節炎に適応拡大しました。同薬はペグ化抗TNFα抗体で、関節リウマチや乾癬、クローン病などを対象に承認されています。
Bimzelx|ベルギーUCB
抗IL-17A/F抗体「Bimzelx」(bimekizumab)は、新たに「活動性乾癬性関節炎」、「体軸性脊椎関節炎」、「強直性脊椎炎」の3つの適応で承認されました。同薬は欧州で21年、日本で22年、米国で23年に承認。日本と欧州でも3つの適応で承認済みです。
【バイオシミラー】独フレゼニウスカービのustekinumab
Otulfi|独フレゼニウスカービ
「Otulfi」は、米国で4剤目となる「Stelara」(ustekinumab)のバイオシミラー。欧州でも今年9月に承認されました。