初のNASH治療薬を迅速承認した米FDA(ロイター)
[ロイター]米FDA(食品医薬品局)は3月14日、米マドリガル・ファーマシューティカルズが開発した非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療薬を迅速承認した。NASHに対する治療薬の承認は初めて。数十億ドル規模と言われる市場機会を開く最初の治療薬となる。
同社の株式は時間外取引で24%急騰し、301.99ドルとなった。
マドリガルの推計によると、NASHの米国の患者数は150万人に上るが、これまで承認された治療薬はなかった。同社のビル・シボルトCEO(最高経営責任者)は承認前のロイターのインタビューで、「Rezdiffra」の製品名で4月に発売する予定だと話した。
マドリガルは同薬の年間卸売価格を4万7400ドル(約700万円)としている。米国の非政府の医療技術評価(HTA)機関The Institute for Clinical and Economic Review(ICER)は昨年5月、年間価格が3万9600ドル~5万100ドルであれば費用対効果のベンチマークを満たすとの試算を公表している。
エバーコアISIのアナリスト、リイサ・ベイコ氏は、Rezdiffraの年間売上高はピーク時に50億ドル(約7500億円)を超えると予想している。
Rezdiffraは、重症度がステージ2または3に進行した線維化を伴うNASH患者が対象となる。ただし、FDAのラベルには診断のための肝生検の要件は含まれていない。この点は、専門家の間で重要な懸念事項となっており、需要にマイナスの影響を与える可能性があるとマドリガルは見ている。
失敗の連続越え「状況が一変」
NASHの原因は完全には理解されていない。一般的には、肥満、甲状腺機能低下症、糖尿病、高脂血症といった健康上の問題と関連している。NASHは、肝臓に脂肪が過剰に蓄積し、炎症や線維化、瘢痕化を引き起こす。
患者擁護団体「アメリカ肝臓財団」のロレイン・スティールCEOは、Rezdiffraの承認は過去10年間の一連の治療薬開発の失敗を経て、患者にとって「状況が一変する」瞬間だと指摘。同氏は「この分野には数々の屍が横たわっており、墓石もたくさんある。しかし、今回の承認によって、切実に必要とされているさらに多くの治療薬への水門が開かれることになる」と語った。
NASHをめぐっては、米アケロ・セラピューティクス、同89bio、同バイキング・セラピューティクス、同サギメット・バイオサイエンシズといった企業が、自社新薬候補の中期から後期段階の治験を行っている。
FDAによると、Rezdiffraの迅速承認は888人の患者を対象に行われた後期試験のデータに基づいている。同試験では、Rezdiffraを服用した患者群はプラセボ群に比べて症状や線維化が改善することが示された。
(取材:Unnamalai L、Leroy Leo、Mariam Sunny/編集:Sriraj Kalluvila、Shounak Dasgupta/翻訳:AnswersNews)