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ニュース解説

実施前夜「医師の働き方改革」医療機関側の対応どこまで

更新日

穴迫励二

4月から始まる医師の働き方改革。労働時間の短縮に伴い、製薬企業も医療機関での活動の見直しを進めています。その内容は各社さまざまですが、病院側の対応はどこまで進んでいるのでしょうか。また、改革そのものにどのような意識を持っているのでしょうか。

 

 

体制見直し進む一方で不安も

国立大学病院長会議は3月1日に記者会見を開き、働き方改革の実施を前に全国の国公立大学病院を対象に行った調査の結果を発表しました。調査は、医師の働き方が変わろうとする中で医療の質や安全性が担保されているかを確認するために行ったもので、51病院の入院病床を持つ1407診療科から回答を得ました。

 

入院患者の診療(受け持ち)体制については、全体の8割が「複数主治医制/チーム制」を採用していました。かつては1人の主治医が患者を担当するケースも少なくありませんでしたが、改革を踏まえて体制の変更が進んでいるようです。「古典的主治医制」は神経内科、血液内科、眼科などで割合が高く、救急科では「交代勤務制」が6割に達しています。

 

夜間・休日など時間外の体制では、8割が「当直制」となっています。当直医の配置方法は、自家単科が6割、他科連携が4割です。必要に応じて駆けつけられるよう待機する「オンコール対応」は形成外科が多く見られました。

 

【働き方改革への対応①】国立大病院等51病院(42国立大、8公立大、防衛医科大)計1407診療科を対象とした調査結果。受け持ち体制/複数主治医制・チーム制/古典的主治医制/交替勤務制/その他|時間外の体制/当直:自科単科/当直/他科と連携/オンコール対応/その他|診療科/循環器内科/消化器内科/呼吸器内科/糖尿内分泌/神経内科/腎臓内科/免疫内科/血液内科/感染症内科/腫瘍内科/小児科/精神科/総合診療科/放射線科/心臓血管外科/消化器外科/呼吸器外科/乳腺甲状腺/脳神経外科/泌尿器科/整形外科/形成外科/小児外科/眼科/耳鼻咽喉科/新婦人科/麻酔科/救急科/皮膚科/歯科口腔外科/その他内科/その他外科

 

カンファレンス、44%が時間内に

労働時間削減に向けた課題としてしばしば指摘されるカンファレンスは、これまで時間外に行われることが一般的とも言える状況でした。しかし、今回の調査では「すべて時間内に実施できる工夫をしている」と答えた診療科が44%に上り、調査を担当した竹原徹郎・大阪大付属病院長は「かなり改善が進んでいると感じる」としています。

 

具体的な工夫としては、「検討症例の層別化(重みづけ)」や「プレゼンテーション資料の削減」「カンファレンス以外(回診など)の時間や回数の削減」といった取り組みが多くの診療科で見られました。インフォームド・コンセントも、患者の家族に配慮して遅い時間帯に行われがちでしたが、83%が時間内に実施できるよう工夫しており、ウェブなど非対面方式の活用も増えています。

 

 

調査結果からは改革の実施に向け準備は進んでいるようにも見えますが、対応が不十分な診療科も多く残っています。例えばカンファレンスの見直しは、改善したとはいえ半数以上が未着手の状態です。同会議の横手幸太郎会長(千葉大付属病院長)は、医師らが集まれる時間がどうしても17時を過ぎてしまうことや、医師の少ない地方では対応できないことなどを挙げ、「解決すべき課題がたくさんある」と不安ものぞかせます。

 

実際、診療科によっては、多くの業務をこなしながら所定の時間内にカンファレンスを済ませることは容易ではありません。不必要な会議を減らしたり、他職種へのタスクシフトを進めたり、複合的に対策を打つ必要があります。医師の技術向上や患者の不利益にも配慮しなければなりません。

 

「医師としてのあり方、倫理観、生き方の転換点に」

同会議は、改革を進めながら質の高い医療を効率的に提供するためには、医療者の間で患者情報の共有やタイムリーな意見交換を可能にするICTの積極的な活用が必要だと指摘しています。同時に、新しい働き方について国民の理解を得ることの重要性も強調しており、各病院もポスターや院内掲示で、病状などの説明は原則として平日の勤務時間内に行うことなどを周知しています。

 

一方で働き方改革は「医師としてのあり方や倫理観、生き方のターニングポイントとなる」(原晃・筑波大付属病院長)といった見方も示されました。要するに、時間外労働の制限によって、医師の仕事がいわゆる「9時5時」になっていいのかという指摘です。自身は「患者に何かあったら飛んでこいと言われて育ってきた」世代であり、医師は「単純に時間が来たら終わりとは絶対いかない職業」だと強調。国民全体に問いかけ、考えるべきテーマだと言います。

 

賃上げ、原資十分とは言えず

6月に行われる診療報酬改定では、働き方改革や賃上げへの手当てが盛り込まれていますが、これについて横手会長は「大変厳しい財政状況の中で、待遇改善や働き方改革を視野に大学病院に対して配慮してもらった」と評価。会見では、医療従事者の人材確保や賃上げへの対応として、入院基本料の増点やベースアップ評価料が新設されたことを紹介しました。

 

ただ一方で、国が目標とする2.5%のベースアップを実現するには十分な財源とは言えなそうです。同会議は国立大病院全体で必要となるベースアップの原資を130億円と試算しており、これだけでなら増点や新設の点数でまかなえるものの、エネルギー価格高騰による負担が23年度は2年前との比較で129億円増加したと説明。価格転嫁できないこの分だけ原資としては不足するとしています。働き方改革にはコストもかかるため、国立大病院の増収減益基調は変わらないようです。

 

厚生労働省が2022年に行った医師の勤務実態に関する調査によると、時間外・休日労働時間が年換算960時間(週の労働時間60時間以上)を超えたのは病院常勤勤務医の21.1%、年換算1920時間(同80時間以上)を超えたのは3.6%でした。19年の前回調査からそれぞれ16.7ポイント、4.9ポイント減少したものの、依然として一定の医師が長時間労働を余儀なくされています。

 

【長時間郎党する医師の割合】〈年/時間外・休日労働時間念960時間超/念1920時間超〉2016/39.2/9.7/2019/37.8/8.5/2022/21.1/3.6|※調査対象は病院の常勤勤務医。厚生労働省研究班調べ

 

同会議も、日本の医療が医師の長時間労働に支えられていることを認めており、「非常に安価な医師の労働力」(田中栄・東京大付属病院長)に頼っているとも言えます。記者会見では、地域と大学病院の役割分担など医療制度の根本問題が解決しないまま働き方改革が進められていることに、国立大病院側は不満ものぞかせました。

 

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