(写真:ロイター)
[バグスヴァールト=デンマーク ロイター]ノボノルディスク(デンマーク)の開発責任者は、開発中の新たな肥満症治療薬候補アミクレチンについて、10年以内に発売できると強い自信を持っているとロイターのインタビューで語った。インタビューは3月8日に行われ、ノボはその前日、この新薬候補の初期の臨床試験で有望なデータを得たと発表した。
インタビューに応じたノボの開発責任者マルティン・ホルスト・ランゲ氏は、「われわれはスケジュールを約束することは決してないが、少なくともこの10年の間には、ということは余裕を持って言える」と話した。
ノボは3月7日、経口薬のアミクレチンが臨床第1相(P1)試験で被験者の体重を投与開始12週間後に13.1%減らしたと発表した。同社の肥満症治療薬「ウゴービ」に比べて投与開始から早い段階で大きな減量効果が示されており、同社の株価は8%以上値を上げて過去最高を更新。時価総額は米電気自動車メーカー、テスラを抜いた。
このニュースについて投資家らは、もともとインスリンメーカーとして知られていたノボが、大成功を収めたウゴービのほかにも有望なパイプラインを持っていることを示すものだと指摘している。同社が米国でウゴービを発売した2021年6月以降、同社の株価は3倍以上に上昇した。
ノボはアミクレチンのほかにカグリセマと呼ばれる肥満症治療薬候補も開発している。同社はこれら2つの薬剤について、ウゴービを上回る効果を期待している。
心臓への利点
ランゲ氏によると、P1試験で12週間、アミクレチンの投与を受けた被験者の80%が服用を継続しているという。同氏は「印象的な」継続率だとし、投与量が安全で、大きな副作用がないことを示唆していると指摘。ウゴービと同様に心臓への効果をもたらす可能性も「あり得るシナリオだ」と語った。
インタビューに応じたノボの開発責任者マルティン・ホルスト・ランゲ氏(ロイター)
ウゴービはGLP-1受容体作動薬と呼ばれるクラスに含まれる薬剤だ。もともと2型糖尿病治療薬として開発され、血糖をコントロールし、食欲を抑制することが示されている。
ウゴービの成功を受け、同社はアミクレチンなどほかの有望な肥満症治療薬の開発に取り組んでいる。アミクレチンは、ウゴービと同じGLP-1に加え、空腹感に影響する膵臓のホルモン、アミリンもターゲットにしている。
ノボは昨年8月、大規模研究でウゴービの心血管疾患に対する効果が明らかになったと発表した。こうしたデータは、肥満症治療薬の長期的な医学的利点が医療制度全体への負担を軽減できるかどうか、議論を巻き起こしている。
ノボは、アミクレチンについて経口薬と注射薬の開発を同時に進める計画だ。ランゲ氏は、2つのバージョンについて安全性データを同時に提供できるのがこの計画のメリットだと話した。
(取材:Maggie Fick、Jacob Gronholt-Pedersen/執筆:Stine Jacobsen、Louise Rasmussen/編集:Terje Solsvik、Emelia Sithole-Matarise/翻訳:AnswersNews)