[ロイター]米バイキング・セラピューティクスは2月27日、開発中の肥満症治療薬が中期段階の臨床試験で平均15%近い体重減少効果を示したと発表した。同社の株価は急騰し、120%上昇してこの日の取引を終えた。
肥満症治療薬の潜在的な市場は1000億ドル規模と言われる。この市場は現在、米イーライリリーの「ゼップバウンド」やデンマーク・ノボノルディスクの「ウゴービ」がほぼ独占している。肥満症治療薬の開発には多くの大手製薬企業やバイオベンチャーも参入しており、バイキングもその一角を争っている。
アンダーセン・キャピタル・マネジメントの創業者ピーター・アンダーセン氏は「ウォール街はこの話題に興奮している」とし、「有望な新薬候補はどれも非常にポジティブな株価の反応を引き起こすだろう」と付け加えた。
リリーとのノボの脅威に
試験の好結果でバイキングの株価は急騰し、120%上昇の85.05ドルで取引を終了した。この日売買された株式は5700万株以上におよび、バイキングにとって史上最も忙しい取引日の1つとなった。
一方、リリーの株価は0.9%下げ、ノボの米国上場株は1.2%下落した。トゥルーイスト・セキュリティーズのアナリスト、ジュン・リー氏は「バイキングの新薬候補は、リリーとノボの複占に対する競争上の脅威となる可能性がある」と指摘した。
バイキングの新薬候補「VK2735」はグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)という2つのホルモンをターゲットとした薬剤で、リリーのゼップバウンドと同じ作用機序を持つ。
GLP-1受容体作動薬は、すでに糖尿病や肥満への効果が証明されている。脳卒中や心臓病のリスク軽減に役立つ可能性もあり、世界中の人々の生活を変えるかもしれない。
バイキングが良好な中期試験の結果を発表したことで、肥満症治療薬を開発している米アムジェンの株価は2.8%下落し、ダウ平均の重しとなった。一方、バイキングの株価急騰は、22%以上上昇した米アルティミュンや6%以上上げた同ストラクチャー・セラピューティクスなど小規模バイオ医薬品企業の株価上昇に貢献した。
M&Aの観点からも魅力的
注射剤として開発されているVK2735は、GLP-1受容体作動薬と呼ばれるゼップバウンドやウゴービと同じクラスに含まれ、投資家から強い関心が寄せられている。
少なくとも1つ以上の合併症を持つ過体重の成人176人を対象に行われた中期試験では、15mgの投与で体重が平均14.7%減少した。
BTIGのアナリスト、ジャスティン・ゼリン氏は、VK2735がベスト・イン・クラスになる可能性があると指摘。中期試験のデータは先行する薬剤を上回っており、同氏はバイキングについて「投資家にとって魅力的であることはもちろん、大手製薬企業にとっても事業開発やM&Aの観点で魅力的な存在だ」と語った。
今回の中期試験では、重篤な有害事象として脱水が1件報告されたものの、多くの被験者が経験したのは軽度または中等度の副作用だけだったとバイキングは述べた。
同社は、臨床試験向けには十分な供給を確保しているものの、現時点の製造能力は商用製品をサポートできる状態にはないとしている。同社は開発の次のステップについて協議するため、今年半ばに当局と会合する予定だ。
(取材:Mariam Sunny、Bhanvi Satija、Sneha SK、Amruta Khandekar/編集:Shounak Dasgupta、Shinjini Ganguli、Shweta Agarwal、David Gregorio/翻訳:AnswersNews)