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期待の新薬、立ち上がり順調とはいかず…エーザイ「レケンビ」とアステラス「べオーザ」

更新日

穴迫励二

大型新薬として昨年発売されたエーザイのアルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ」とアステラス製薬の閉経に伴う血管運動神経症状治療薬「べオーザ」が、ともに順調さを欠く立ち上がりとなっています。両社は2023年4~12月期決算発表で23年度の計画に対する進捗状況を開示しましたが、ベオーザは売上収益予想を下方修正し、レケンビも目標投与患者数の達成が厳しいことを示唆しました。

 

 

レケンビ、米国で年度内1万人投与は「チャレンジング」

レケンビは、23年7月に正式承認を取得した米国で年度内の投与患者数を1万人と想定。売上収益は「100億円レベルを目指す」としていました。

 

普及のカギとなるアミロイドPET検査の保険償還が同年10月に開始され、販売体制の強化や有用性に関するデータの浸透などもあって目標達成は可能との読みでした。8月の段階では進んでいなかった保険のカバレッジは、公的保険の「メディケア」「メディケイド」が100%、民間保険は70%となり、全体で治療対象者の90%以上のアクセスが確保されています。しかし、今年1月26日現在の投与患者数は約2000人にとどまっており、売上収益も4~12月期で14億円と弾みがついていません。

 

【レケンビの承認・発売状況】〈国/承認/発売〉米国/23年1月迅速承認23年7月正式承認/23年1月|日本/23年9月/23年12月|中国/24年1月/24年度2Q(予定)|欧州/24年度1Q(想定)/―|※エーザイのプレスリリースなどをもとに作成

 

エーザイの内藤景介常務(グローバルADオフィサー)は2月6日の決算会見で、PET検査の保険償還以降、投与患者数は拡大傾向にあるものの、想定の1万人は「チャレンジング」との認識を示しました。売り上げは1月20~26日の1週間で150万ドル(約2.2億円)まで拡大しており、今後さらに加速するとの見通しを語りましたが、投与患者数は弱含みで、計画達成は難しそうです。

 

投与患者2000人・待機患者8000人

年度末に向けて増加要因として挙げられるのが、投与を待つ患者の存在です。1月までの投与患者数2000人に対し、待機患者数はその4倍の8000人と見積もっています。そのすべてが時を置かずに投与に結びつけば年度内に1万人に到達しますが、さすがにそれは厳しそうです。待機患者の定義についてエーザイは「神経科の専門医が認知機能障害と診断し、レケンビの投与対象になると判断した早期AD患者」としており、それに当てはまるかどうかは現地の市場開拓チームが医師への聞き取りをもとに判断しているといいます。

 

エーザイは昨年8月の4~6月期決算会見で「今期の投与患者数1万人に対して順調」と自信を示していました。目標達成は厳しくなりましたが、まったく新しい作用機序であり、医療機関ごとに診断・治療のパスウェイ構築が必要となるなど、予測が難しい面があったことも事実です。注目されるのは24年度からの投与患者数の推移で、その動向が今後の市場を占うことになりそうです。

 

日本「年度内400人」には自信

昨年12月に発売された日本では、2月5日までに100人の患者への投与が開始されました。年度末の目標は400人で、これには「絶対の自信」を示しています。すでに採用が決まっている施設は200以上あり、滑り出しの順調さを強調しています。1月20日には早期ADの臨床診断や副作用であるARIA(アミロイド関連画像異常)のマネジメントなどについて説明するキックオフ・ミーティングを開催。地域で認知症治療の中核を担う1300人の医師が参加しました。

 

市場開拓はエーザイとバイオジェンによる56人の認知症専門領域MRを軸に、地域連携MRやメディカル・サイエンス・リエゾン、キー・アカウント・マネージャーらが協力する総勢852人の体制を構築。最適使用推進ガイドラインを満たす処方医2300人と、患者紹介医師2万人をターゲットに活動を展開します。発売から24年度末までの累計処方患者数は7000人を想定。同年度第1四半期に1400人、以降は四半期ごとに1700~1800人ずつ増やせると考えており、実際の患者数がどう推移するかに注目が集まります。

 

【レケンビの投与患者数予測(国内・累計)】〈年度/予測患者数〉23年度/400 24年度1Q/1800|24年度2Q/3500|24年度3Q/5200|24年度4Q/7000|※エーザイの決算説明会資料をもとに作成

 

べオーザ、533億円→71億円に下方修正

アステラスのベオーザは4~12月期実績が想定を下回りました。第1四半期からの四半期売上収益は6億円→7億円→23億円と推移し、第3四半期トータルでは36億円。低調な販売動向を踏まえ、23年度の予想を従来の3億7500万ドル(533億円)から5000万ドル(71億円)へと大幅に下方修正しました。

 

【ベオーザの売上収益推移】〈期/四半期売上収益/累計〉23年度1Q/6/0|2Q/6/7 3Q/13/23|4Q/36/35

 

アステラスは実需の拡大ペースが想定を下回った要因として、DTC(消費者直接広告)活動と保険のカバレッジをあげています。DTCについては「(広告を見た)女性が実際に医師に相談するまでの期間が想定より長くなっている」と説明。同社の見立てでは処方を受けるまでの期間が2カ月程度でしたが、実際は3~4カ月かかっているといいます。

 

広告の効果としては、医師に相談したいという女性や、処方に前向きな医師が増加しているとの調査結果が出てはいるものの、タイムラインが全体的に後ろ倒しになっているようです。今後はスポーツ中継でのテレビCMや、疾患啓発広告の継続などを予定しています。

 

保険カバレッジ上昇、処方拡大につながるか

保険カバレッジは昨年12月末で35%となっており、まだ不十分と感じる医師が多いことが処方の妨げになっていると分析しました。アステラスとしてはこの時点で35%というカバレッジは想定通りですが、医師の認識とはギャップがあり、医師側はまだ浸透していないと感じて処方に踏み切れないのが実態といいます。アステラスは年度末にはカバレッジが50%まで上昇すると見込んでおり、営業部隊が状況をタイムリーに情報提供することで処方拡大につなげる考え。どの程度の数字であれば医師の処方意向が高まるのかが、ひとつのポイントにもなりそうです。

 

アステラスは、現在進行中の経営計画の最終年にあたる25年度にべオーザの売り上げを3000億円まで伸ばすことを目指しており、ピーク時には5000億円まで拡大すると見通しています。現時点では計画の修正には言及していませんが、岡村直樹社長CEO(最高経営責任者)は売上収益の見通しを精査して、適切な時期に発表する方針を示しています。

 

レケンビもベオーザも本格展開した昨夏の時点では、強気の売上予想を崩していませんでした。しかし、両社とも綿密な販売戦略を実行したにも関わらず、計画との乖離が生じています。将来的なブロックバスターへの道が開けるかは、24年度に市場をどこまで拡大できるかにかかっていそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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