海外大手製薬企業の2023年12月期決算のハイライトを、コンパクトなビジュアルとともにお届けします。随時更新(公開:1月25日、最終更新:3月7日)。
独バイエル(3月5日発表)
医薬品事業の売上高は180億8100万ユーロ(約2兆9425億円、前期比6.1%減)、EBITDA50億2100万ユーロ(19.2%減)。為替の影響を除く調整後の売り上げ成長率は0.4%減。主力の抗凝固薬「イグザレルト」(40億8100万ユーロ、9.6%減)が後発医薬品との競争で売り上げを落とし、製品構成の変化やインフレによるコスト増が利益を圧迫した。眼科用抗VEGF薬「アイリーア」は、為替変動の影響もあって売上高は32億3100万ユーロ(0.6%増)とほぼ横ばいだった。24年12月期は、医薬品事業の売上高を前期比マイナス4%~0%(為替の影響を除く)と予想。売上高に対する特別項目控除前EBITDAの比率は26~29%(前期は28.7%)を見込む。
米バイオジェン(2月13日発表)
売上高98億3560万ドル(約1兆4803億円、前期比3.3%減)、純利益11億6110万ドル(61.9%減)。「テクフィデラ」「タイサブリ」など主力の多発性硬化症治療薬が後発医薬品・バイオシミラーとの競争で売り上げを落とした。24年12月期は調整後1株あたり純利益を15~16ドル(前期は14.72ドル)と予想。総売上高は1桁台前半から半ばの減少を見込む一方、アルツハイマー病治療薬「レケンビ」を含む中核製品の売上高は横ばいとなる見通し。
英アストラゼネカ(2月8日発表)
売上高458億1100万ドル(約6兆8435億円、前期比3%増)、営業利益81億9300万ドル(118%増)、純利益59億6100万ドル(81%増)。SGLT-2阻害薬「フォシーガ」(59億6300万ドル、36%増)や抗がん剤「タグリッソ」(57億9900万ドル、7%増)など主力品が成長し、がん免疫療法薬「イミフィンジ」が52%増の42億3700万ドルと急拡大した。24年12月期は売上高、1株あたりコア利益ともに2桁台前半の成長を見込む。
米イーライリリー(2月6日発表)
売上高341億2410万ドル(約5兆514億円、前期比20%増)、営業利益64億5790万ドル(9%減)、純利益52億4040万ドル(16%減)。2型糖尿病治療薬「マンジャロ」が51億6310万ドル(前期は4億8250万ドル)を売り上げ、業績を牽引。抗がん剤「ベージニオ」(38億6340万ドル、56%増)、乾癬治療薬「トルツ」(27億5960万ドル、11%増)、SGLT-2阻害薬「ジャディアンス」(27億4470万ドル、33%増)なども好調だった。昨年11月に米国と英国で承認された、マンジャロと同成分の肥満症治療薬「ゼップバウンド」は売上高1億7580万ドルだった。24年12月期は、売上高404億~416億ドルを見込む。
米ギリアド・サイエンシズ(2月6日発表)
売上高271億1600万ドル(約4兆144億円、前期比0.6%減)、営業利益76億500万ドル(3.8%増)、純利益56億6500万ドル(23.4%増)。新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー」の売り上げが44%減の21億8400万ドルと落ち込んだものの、HIVやオンコロジーの売り上げ拡大でカバー。抗HIV薬「ビクタルビ」は売上高118億ドル5000万ドル(14.1%増)に達し、CAR-T細胞療法「イエスカルタ」(14億9800万ドル、29.1%増)や抗Trop-2抗体薬物複合体「Trodelvy」(10億6300万ドル、56.3%増)なども伸びた。24年12月期は、製品売上高271億~275億ドルを予想(23年12月期は269億3400万ドル)。ベクルリーは約13億ドルを見込む。
米アムジェン(2月6日発表)
売上高281億9000万ドル(約4兆1732億円、前期比7.1%増)、営業利益78億9700万ドル(17.4%減)、純利益67億1700万ドル(2.5%増)。高コレステロール血症治療薬「レパーサ」(16億3500万ドル、26%増)や骨粗鬆症治療薬「イベニティ」(11億6000万ドル、47%増)などが売り上げを拡大。昨年10月に買収した米ホライゾン・セラピューティクスの製品も増収に寄与した。24年12月期は324億~338億ドルの売り上げを予想している。
米アッヴィ(2月2日発表)
売上高543億1800万ドル(約8兆623億円、前期比6.4%減)、営業利益127億5700万ドル(29.6%減)、純利益48億6300万ドル(58.9%減)。米国でバイオシミラーとの競争に直面した抗TNFα抗体「ヒュミラ」の売上高は144億400万ドルで32.2%減。抗IL-23p19抗体「スキリージ」(77億6300万ドル、50.3%増)とJAK阻害薬「リンヴォック」(39億6900万ドル、57.4%増)が売り上げを大きく伸ばしたが、ヒュミラの減収を補えなかった。24年12月期は、調整後希薄化後の1株あたり純利益(EPS)を11.05~11.25ドル(23年12月期は11.11ドル)と予想している。
米ブリストル・マイヤーズスクイブ(2月2日発表)
売上高450億600万ドル(約6兆6881億円、前期比2%減)、純利益80億2500万ドル(27%増)。血液がん治療薬「レブラミド」(売上高60億9700万ドル、39%減)が後発医薬品の影響で売り上げを減らした。がん免疫療法薬「オプジーボ」は売上高90億900万ドル(9%増)。24年12月期は1桁台前半の売り上げ成長を見込む。
スイス・ロシュ(2月1日発表)
売上高587億1600万スイスフラン(CHF、約10兆491億円、前期比7%減)、営業利益153億9500万CHF(12%減)、純利益123億5800万CHF(9%減)。為替変動を除くと1%の増収。多発性硬化症治療薬「Ocrevus」(63億8100万CHF、13%増)や血友病治療薬「ヘムライブラ」(41億4700万CHF、16%増)などが伸び、「ロナプリーブ」を中心とする新型コロナウイルス感染症関連製品の売り上げ減少やバイオシミラーの影響を補った。眼科領域の新薬「バビースモ」は324%増の23億5700万CHFを売り上げた。24年12月期は1桁台前半の売り上げ成長を見込む。
米メルク(2月1日発表)
売上高601億1500万ドル(約8兆8157億円、前期比1%増)、純利益3億6500万ドル(97%減)。米プロメテウス・バイオサイエンシズの買収や、第一三共とのがん領域での提携にかかる費用が利益を押し下げた。主力の抗がん剤「キイトルーダ」の売上高は19%増の250億1100万ドル。HPVワクチン「ガーダシル/ガーダシル9」(88億8600万ドル、29%増)なども好調で、新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」の売り上げ減少をカバーした。24年12月期は、売上高627億~642億ドルを予想している。
仏サノフィ(2月1日発表)
売上高430億7000万ユーロ(約6兆8708億円、前期比0.2%増)、純利益54億ユーロ(35.5%減)。アトピー性皮膚炎などに対する抗体医薬「デュピクセント」が34.0%増の107億1500万ユーロを売り上げ、多発性硬化症治療薬「Aubagio」の特許切れの影響を補った。開発品の減損で利益は減少。24年12月期は1株あたり純利益(EPS)で1桁台前半の減少を見込む。
スイス・ノバルティス(1月31日発表)
売上高454億4000万ドル(約6兆6635億円、前期比8%増)、営業利益97億6900万ドル(23%増)、純利益85億7200万ドル(42%増)。心不全治療薬「エンレスト」が30%増の60億3500万ドルを売り上げたほか、乾癬治療薬「コセンティクス」(49億800万ドル、4%増)や造血刺激薬「Promacta/レボレード」(22億6900万ドル、9%増)など主力品が堅調だった。24年12月期は、売上高、コア営業利益とも為替変動の影響を除いて1桁台半ばの成長を見込む。
英グラクソ・スミスクライン(1月31日発表)
売上高303億2800万ポンド(約5兆6276億円、前期比3%増)、営業利益67億4500万ポンド(5%増)、純利益53億800万ポンド(66%減)。帯状疱疹ワクチン(売上高34億4600万ポンド、16%増)やRSウイルスワクチン(12億3800万ポンド)などワクチン事業が業績を牽引。特殊要因で利益が膨れた前期の反動で純利益は大きく減った。24年12月期は、売上高5~7%増、調整後営業利益7~10%増(いずれも為替変動の影響を除く)を予想。ワクチン事業で1桁台後半から2桁台前半の成長を見込むほか、スペシャリティ医薬品でも2桁成長を予想している。
デンマーク・ノボノルディスク(1月31日発表)
売上高2322億6100万デンマーククローネ(DKK、約4兆9322億円、前期比31%増)、営業利益1025億7400万DKK(37%増)、純利益836億8300万DKK(51%増)。肥満症治療薬「ウゴービ」の売上高は313億4300万DKK(約6654億円、407%増)。同成分の糖尿病治療薬「オゼンピック」は957億1800万DKK(約2兆316億円、60%増)を売り上げた。24年12月期もこれらGLP-1受容体作動薬が業績を牽引し、為替変動の影響を除いて売上高は18~26%、営業利益は21~29%の成長を見込む。
米ファイザー(1月30日発表)
売上高584億9600万ドル(約8兆6272億円、前期比42%減)、純利益21億1900万ドル(93%減)。新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」が70%減(売上高112億2000万ドル)、新型コロナ治療薬「パクスロビド(日本製品名・パキロビット)」が92%減(12億7900万ドル)と落ち込んだ。コロナワクチン・治療薬を除く売上高は7%増。抗凝固薬「エリキュース」(67億4700万ドル、5%増)やトランスサイレチン型アミロイドーシス治療薬「ビンダケルファミリー」(33億2100万ドル、36%増)などが伸びた。24年12月期は売上高585億~615億ドルを予想。コミナティは50億ドル、パクスロビドは30億ドルの販売を見込む。
米ジョンソン・エンド・ジョンソン(1月23日発表)
医薬品事業の売上高は547億5900万ドル(約8兆777億円)。前期比4.2%増で、新型コロナウイルスワクチンの減少などの影響を除くと7.2%増だった。乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」が11.7%増の108億5800万ドルを売り上げ、多発性骨髄腫治療薬「ダラザレックス」(97億4400万ドル、22.2%増)や前立腺がん治療薬「アーリーダ」(23億8700万ドル、26.9%増)なども好調だった。24年12月期の全社の売上高は4.5~5.5%増の878億~886億ドルを予想。23年12月期の全社売上高は6.5%増の851億5900万ドルだった。