2024年度薬価制度改革は「ドラッグ・ラグ/ロスの解消」と「安定供給確保」が大きなテーマ。後発医薬品メーカーの供給体制を評価し、それを薬価に反映する新たな仕組みが導入されるほか、基礎的医薬品や不採算品再算定など長く医療現場で使われている医薬品の薬価を下支えするルールも拡充されます。中央社会保険医療協議会(中医協)が昨年末にまとめた改革の骨子をもとに、後発品と長期収載品に関する薬価制度改革のポイントをまとめました。
薬価制度改革、ラグ/ログ解消へイノベーション評価
供給不安が続く後発医薬品では、メーカーの安定供給体制を評価する「企業指標」と、その結果を薬価に反映する仕組みが試行的に導入されます。メーカーに安定供給体制や供給実績に関する情報の公表を求め、医療機関・薬局が安定供給できるメーカーの製品を選びやすくするとともに、薬価で優遇することによって収益を確保できるようにする狙いです。
企業指標の評価項目は、(1)安定供給に関連する情報の公開など(2)安定供給のための予備対応力の確保(3)供給実績(4)薬価の乖離状況――4つの観点で計17項目を設定。項目ごとのポイントを積み上げ、上位20%のメーカーを「A区分」、0ポイント未満を「C区分」、それ以外を「B区分」の3つに分類します。この分類に応じて薬価上の評価が行われることになります。
24年度改定では、全17項目のうち(3)供給実績と(4)薬価の乖離状況の計9項目に基づいて評価を行います。残る8項目については、評価方法は今後、検討することになっており、25年度以降の薬価改定で導入を目指す考えです。
24年度の薬価改定では試行的な導入として小さく運用を始めることになっており、対象は▽最初の後発品収載から5年以内の後発品▽安定確保医薬品AまたはBに該当する後発品(基礎的医薬品は除く)――に限定。このうち「後発品全体の平均乖離率以内であること」など3つの条件をすべて満たす品目について、企業指標でA区分と評価された企業の品目を、それ以外の品目とは別の価格帯に集約します。
新規収載「0.4掛け」の範囲拡大
後発品の新規収載時の薬価は、同時に収載される品目数が多い場合に通常より薬価を低く抑えるルールが厳格化されます。
後発品の薬価は通常、「先発医薬品の0.5掛け」で算定されますが、同時に収載される内用薬が10品目を超える場合は「0.4掛け」となります。24年度からは、その範囲を7品目超に拡大。薬価を抑えることで参入に歯止めをかけ、安定供給上の課題の1つである少量多品目構造の解消につなげたい考えです。
薬価下支え制度の拡充
長期間、医療現場で使われている医薬品の薬価を下支えする制度では、基礎的医薬品と不採算品再算定の2つの制度が変更されます(特例的なものも含む)。
基礎的医薬品では、収載からの経過期間に関する要件を、現行の25年から15年に短縮します。基礎的医薬品は、保険医療上の必要性が高く、医療現場で長期間にわたり広く使用されて有効性・安全性が確立されており、継続的な安定供給を確保する必要がある医薬品群。基礎的医薬品の要件を満たす医薬品は、最も販売金額が大きい銘柄に価格を集約して薬価が維持されます。
薬価が著しく低く、採算が合わなくなった医薬品の薬価を引き上げる不採算品再算定は、昨今の急激な原材料費の高騰や供給問題に対応するため、企業から希望があった品目に特例的に適用します。ただし、23年度の薬価調査の乖離率が、前回(22年度)薬価調査の平均乖離率である「7.0%」を超えた品目は対象から除外。結果として約2000品目に適用されることになります。