(写真:ロイター)
[フランクフルト ロイター]ノバルティス子会社で後発医薬品事業を手掛けるサンドが、10月に分離上場する。投資家に対する魅力向上に取り組む中、同社のリチャード・セイナーCEO(最高経営責任者)は、今後2年間で5つのバイオシミラーを発売する計画を明らかにした。
ノバルティスは9月15日に臨時の株主総会を開き、サンドのスピンオフについて同意を得た。
サンド株式は10月4日から取引が行われる予定だ。同社はかねてから、25のバイオシミラー候補を開発していることを明らかにしているが、セイナーCEOはこのうち5つを今後2年間で市場に投入することを目指していると述べた。セイナー氏は「私が入社したとき(2019年)は、パイプラインにある生物学的製剤は8つに満たなかった。それが今は25ある。この旅はこれからも続く。30を超えればさらに喜ばしい」と語った。
サンドは現在、ファイザーに次ぐ世界2位のバイオシミラーメーカーだ。セイナー氏は、新薬開発に重点を置くファイザーから世界一の座を奪うことが「非常に大きな」目標だと述べた。
サンドは22年にノバルティスグループの営業利益の11%を稼いだ。ドイツ銀行はサンドの市場価値について110~130億ドルと見込んでおり、証券会社のベレンベルグは170~260億ドルと予想している。
「バイオシミラー投入が成長のカギ」
セイナー氏は、ブロックバスター製品が特許保護を失う中、欧州と米国に新たなバイオシミラーを投入していくことがサンドの成長と利益目標を達成するカギになると強調。予見できる製品の上市は既存の生産ネットワークと販売力で吸収できるとし、結果としてコストよりもはるかに早いペースで売り上げが伸びるとの見通しを示した。同氏は「どんな製品を発売するにしても、それはわれわれのビジネスに貢献する」とし、大規模な買収は今の議題ではないと付け加えた。
サンドの22年の売上高は約92億ドル。同社は収益性向上のためにバイオシミラーを必要としているが、マーケティング費用の増加とコストインフレが重しになっている。
サンドの売上高のうち、バイオシミラーはまだ5分の1ほどにすぎない。残りは従来型の低分子医薬品が占めており、それらは価格圧力にさらされている。
同社は、調整後のコア利益率は昨年の21.3%に対して今年は18~19%になりそうだが、28年までに24~26%まで回復させることを目指しているとしている。この間、売上高は1桁台半ばの伸びを示すという。
サンドが手掛けるバイオシミラーには、多発性硬化症治療薬「タイサブリ」(アムジェン)、関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」(アッヴィ)、がん骨転移治療薬「プロリア」(別名・エクスゲバ、アムジェン)、眼科治療薬「アイリーア」(バイエル/リジェネロン)などがある。
ただ、バイオシミラーをめぐる競争は厳しい。アムジェン、フレゼニウス、オルガノン、テバ、ベーリンガーインエルハイムといった企業が市場で競争している。
サンド株式はスイスの中型株SMIM指数に採用される。同社は9月11日、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの抗炎症薬「ステラーラ」のバイオシミラーを発売する計画を発表した。
(Ludwig Burger、Paul Arnold/編集:Alexander Smith/翻訳:AnswersNews)