2023年7月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】抗RSウイルス抗体「Beyfortus」やFLT3阻害薬「Vanflyta」など
「Leqembi」エーザイ
アルツハイマー病治療薬「Leqembi」(一般名・lecanemab)は正式承認を取得しました。同薬はエーザイとバイオジェンが共同開発した抗アミロイドβプロトフィブリル抗体で、今年1月に迅速承認を取得。正式承認の根拠となった国際共同P3試験では、早期アルツハイマー病の臨床症状の悪化をプラセボと比べて27%抑制しました。日本と欧州でも申請中です。
「Beyfortus」英アストラゼネカ
抗RSウイルス抗体「Beyfortus」(nirsevimab)は、乳幼児のRSウイルスによる下気道疾患の予防薬。アストラゼネカ独自の半減期延長技術を活用した長時間作用型抗体で、単回投与で1シーズンにわたり効果を発揮します。開発と商業化はサノフィと共同で実施。欧州でも昨年10月に承認されており、日本では今年2月に申請しました。
「Vanflyta」第一三共
FLT3阻害薬「Vanflyta」(quizartinib)は「FLT3-ITD変異を有する急性骨髄性白血病の1次治療」を対象に承認を取得しました。同薬は日本で2019年に再発・難治性の患者を対象に承認され、今年5月に1次治療に適応拡大。欧州でも1次治療の適応で申請中です。
「Xdemvy」米Tarsus
「Xdemvy」(lotilaner ophthalmic)は、毛嚢虫(ニキビダニ)眼瞼炎治療薬。833人の患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験の結果をもとに承認されました。ダニのGABA-CIチャネルを選択的に阻害することでニキビダニを駆除する作用を持つ薬剤。根本原因であるニキビダニを直接標的とする治療薬は米国初となります。
「Cyfendus」米Emergent BioSolutions
「Cyfendus」は炭疽ワクチン。炭疽菌への暴露が疑われるか、暴露が確認された人が対象で、抗菌薬との併用で2回投与します。米国では2019年から、緊急使用許可(EUA)前の状態で米国保健福祉省に納入しています。
「Balfaxar」米オクタファルマ
非活性化4因子プロトロンビン複合体濃縮製剤(4F-PCC)「Balfaxar」(prothrombin complex concentrate)は、緊急手術や侵襲的措置を受ける患者のビタミンK拮抗薬(ワーファリンなど)療法による後天性凝固因子欠乏症の緊急回復に使用される血液凝固因子補充療法です。臨床試験では4F-PCCの「Kcentra」に対する非劣性が確認されました。
【適応拡大】「Veklury」の腎機能障害を持つ患者への対象拡大など
「Veklury」米ギリアド
新型コロナウイルス感染症治療薬「Veklury」(remdesivir)は、新たに重度の腎機能障害を持つ患者に使用できるようになりました。人工透析を受けている人も含まれます。慢性腎臓病の患者は新型コロナウイルスの罹患・死亡のリスクが高いことが知られています。欧州でも6月に重度の腎機能障害のある人への使用が承認されました。
【適応取り下げ】「Gavreto」米ジェネンテック
RET阻害薬「Gavreto」(pralsetinib)は、「RET遺伝子変異陽性の進行・転移性甲状腺髄様がん(全身療法が必要な12歳以上の患者)」の適応を取り下げました。同適応では2020年12月に迅速承認を取得していましたが、完全承認に必要なP3試験を継続しないことを決めました。ジェネンテックを含むスイス・ロシュグループは、今年2月に導入元の米ブループリントとの提携を解消すると発表しており、来年2月をめどに同薬のライセンスの返還を進めています。
「Jemperli」英グラクソ・スミスクライン
抗PD-1抗体「Jemperli」(dostarlimab)は、「DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の原発進行・再発子宮内膜がん」に対する、carboplatin、paclitaxelとの3剤併用療法が承認。併用療法を3週間ごとに6回行ったあと、単剤で6週間ごとに投与します。子宮内膜がんの適応では、2021年に米国で前治療後に進行・再発した患者に対する単剤療法の承認を取得。併用療法はオーストラリアやカナダ、欧州でも申請中です。