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経験者に聞く「製薬→コンサル」転職の実際

更新日

前田雄樹

転職先として人気を集めるコンサルティングファーム。ヘルスケア業界でも拡大するニーズを背景に大手コンサルが製薬企業など事業会社の出身者を積極的に採用していますが、実際のところはどうなのでしょうか。製薬企業からコンサルに転職し、現在はデロイト トーマツ コンサルティングで働く2人のコンサルタントに話を聞きました。

 

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――デロイト トーマツ入社までのご経歴を教えてください。

石坂さん:大学卒業後、2005年に新卒で外資系製薬企業に入社し、MRとして活動した後、本社に異動して社長直轄の社内改革プロジェクトに携わりました。その後、15年にヘルスケア系のコンサルティングファームに移ってコンサルタントを経験し、17年にデロイト トーマツに入社しました。

 

小杉さん:大学を卒業し、外資系製薬企業で4年ほどMRとして勤務していましたが、社内のグローバル環境に触れる中で、学生時代に感じていた海外生活への憧れが強くなり退職しました。その後カナダに7年ほど滞在し、帰国後はヘルスケア業界に特化したグローバルコンサルティングファームに就職。そこで5年ほどコンサルタントをしたあと、21年にデロイト トーマツに入社しました。

 

――コンサルティングファームに興味を持つようになったきっかけは何ですか。

石坂さん:製薬企業在籍時にMRをしている時からMBAに通っていて、クラスメイトや講師から色々な刺激的な話を聞くうちに、外の世界を見てみたいなと思うようになりました。その後、本社で社内改革に携わるようになると、コンサルタントと一緒に仕事をする機会も多くなり、「この人たちすごいな」という単純な憧れも含めてコンサルの仕事に興味を持つようになりました。

 

小杉さん:私の場合は、もともとコンサルになりたいという気持ちがあったわけではなく、カナダから帰国後、製薬業界での経験と英語という2つの点を生かせる就職先を探していたときに、前職のコンサルティングファームにご縁をいただきました。私にとってコンサルは未知の世界でしたが、だからこそ挑戦してみたいと思い、入社を決めました。

 

「転職当時はまた製薬企業に戻ろうと思っていました」

――石坂さんは製薬企業から別のコンサルを挟んでデロイト トーマツに入社していますが、その経緯を教えていただけますか。

石坂さん:前職のヘルスケア系コンサルティング会社は製薬業界の人間にとっては親しみのある会社でした。転職活動では、総合コンサル含めていくつか内定をもらいましたが、製薬会社時代の経験が生かしやすい前職の会社を選びました。その会社は製品戦略策定や組織再編時のリソースアロケーション検討、マーケットアクセスといった案件が多く、貴重な経験を積めましたが、自分の守備範囲を広げたいというか、クライアントが抱える悩みや課題に対して「戦略策定から実行までを一気通貫で担える環境」に飛び込んでみたいなと思い、デロイト トーマツに転職しました。

 

――小杉さんも前職は別のコンサルですが、デロイト トーマツに移ったのはなぜですか。

小杉さん:前職は、日本に社員が数人しかいない小規模なコンサルティング会社でした。業務を分散させることが難しい上、各案件のリサーチボリュームが大きく、目の前の業務をこなすことに必死の毎日でした。コンサル未経験で入社し、コンサルタントしての基礎固めもままならず、次第にコンサルタントとしての自身の行き詰まりを感じるようになりました。コンサル業務を基礎からしっかり学びコンサルタントとして成長したいという思いが強くなり、それがデロイト トーマツに転職したきっかけです。

 

――最初にコンサルティングファームに入社した当時、その先はどんなキャリアを描いていましたか。

石坂さん:前職に入社した当時は、コンサルとして修業を積み、そこでマネジャー職まで昇進できたら、また製薬企業に戻りたいと思っていました。当時はそのくらいざっくりしたキャリア像しか描けておらず、一度外の世界に飛び込んでみようという気持ちが強かったですね。

 

外資系製薬企業からヘルスケア系コンサルティングファームを経て17年にデロイト トーマツに入社した石坂さん

 

――小杉さんはいかがですか。

小杉さん:私はカナダに戻ろうと思っていましたので、日本で長く仕事をしようとは当初考えていませんでした。ただ、コンサルの仕事に就いて、経験を積みながら自身を成長させることができる機会に巡り合ったことで、カナダに戻ろうという気持ちがなくなっていきました。日々、直面する仕事は私にとってすごく難しかったのですが、懸命に取り組む中でクライアントや仲間から信頼を得られ、自分自身の成長も実感し、もっとコンサル業務を学びたいと思うようになりました。

 

「頭の使い方が全然違う」

――コンサルに転職するにあたって不安だったり心配だったりしたことはありましたか。仕事のやり方も随分違いますし、一部には労働時間が長くなりやすいイメージもありますが。

石坂さん:製薬会社から前職に移ったのは8年前ですが、当時は不安と言いますか、勤務時間が増えて大変になるだろうということは覚悟していましたが、時間への不安というよりは、自分がしてきた仕事とは頭の使い方が全然違うだろうなと。そこは苦労するだろうと思っていましたし、入社してからそれは確信に変わりました。

 

小杉さん:私は新しい経験ができるという期待が大きく、入ってから大きなギャップを感じました。グローバル企業だったので、時差もあり実質の勤務時間は不規則でしたし、業務も「動く」「話す」がメインだったそれまでの仕事に対してコンサルは「考える」「形にする」と全然違いましたし。

 

――コンサルに入って、壁にぶち当たったなというエピソードがあれば教えていただけますか。

石坂さん:即、ぶち当たりましたね。自分が作った議事録が、レビューを経て真っ赤になって返ってきたときは驚きました。クライアントとの会議用に作るプレゼンテーション資料にも、ページごとに細かく上司からのコメントが入っていて。指摘の細かさや数の多さに「コンサルってここまで細部にこだわらないといけないのか」と思いました。

 

その経験を通じて、まずはマインドを変えていくことが必要だなと感じましたね。心の持ちようなのですが、「同じことを相手に言わせない」とか「自分で学ぼう」という姿勢がないとやっていけなくて、そんな風に気持ちを切り替えて仕事をしていました。もう1つはスキル習得に向けて場数を踏むことですね。そうした経験を積むことで「こういう時はこうやれば良いんだ」という引き出しが数多く蓄積されて、テーマに応じて出し分け可能な応用力や転用力につながると思います。いわゆる「ブレークスルー」のようなものかもしれません。

 

――前職からデロイト トーマツに移った時はどうでしょうか。変化を感じたことや苦労したことはありましたか。

石坂さん:ある程度コンサルとしての経験を積んだ段階で転職したので、仕事の仕方に大きく戸惑うことはありませんでした。ただ、扱うテーマが広がったことで苦労した部分はあります。これまで経験が無かった「サプライチェーン領域の業務改善」に最初にアサインされた時は驚きましたね。ビジネスアプリケーションなどの用語も沢山出てきて、キャッチアップはとても大変でした。

そういうことを楽しみにしてデロイト トーマツに入社したのですが、扱うテーマの広さ、深さに大きな変化を感じました。

 

小杉さん:先ほどお話しした通り、前職でコンサルとしての基礎固めが十分にできないままデロイト トーマツに入ったので、自分はコンサルスキルをまったく持っていないということを思い知らされました。「前職コンサル」と言うのも恥ずかしいくらいでしたね。

 

でも、会社のサポートが手厚く、基礎的な研修も充実していますし、プロジェクトの中でも上位者が細かく指導や指摘をしてくれました。できなかったことを指摘されるだけでなく、じゃあどうしたらいいかというアドバイスもあわせて受けることができたので、周囲のサポートのおかげで基礎を身につけながら一つひとつの壁を乗り越えて来られたと思っています。

 

「MRの経験が生きる」

――今のコンサルの仕事に製薬企業での経験が生きているなと感じることはありますか。

石坂さん:経験が生きることはあります。1つはコミュニケーション力です。コンサルタントにとって、クライアントとの会話を通じた深掘りからニーズをつかみ、クライアントが気づいていなかったことを言語化して案件を獲得していく力は、特にマネジャー以上になると必要になってくるので、そこはMRを経験していて良かったなと思います。

 

もう1つはクライアント(製薬会社)の業務を知っているということです。製薬企業の本社で勤務していた時は、さまざまな部門の人と一緒に仕事をしていましたので、どんな部門がどんな仕事をしていて、どんなことが業務のネックになっているかをおおよそ知ることができました。ですから、コンサルタントとして組織改革や業務改善、新システム導入といった仕事をする時も、各部門の関心事やつまずきポイントある程度の粒度で想像することができます。加えて、製薬企業のマネジメント層の意思決定プロセスを知ることができたのも、本社勤務を経験して良かったと思う点です。

 

小杉さん:私もコミュニケーションですね。MRをやっていると、医師、薬剤師、MSなど、いろんな職務の方々と日々関わります。そこで相手の気持ちを汲み取るコミュニケーション力を磨けたことは、MRをやっていて良かったなと思います。

 

外資系製薬企業でMRを経験し、カナダ滞在などを経て21年にデロイト トーマツに入社した小杉さん

 

――石坂さんの場合、本社勤務で部門横断的な業務に関わっていたことがコンサルの仕事にも生きていると感じました。一方で、製薬企業は各部門がサイロ化していて、ほかの部門が何をしているのかわかりにくいという話も聞きます。そうした部門出身者の方でも活躍の可能性はありますか。

石坂さん:活躍の可能性は大いにありますし、その人が「何のスペシャリストなのか」が大事だと思っています。デロイト トーマツには多様なプロジェクトがありますので、専門性を生かせる場面は必ずあります。そこを取っ掛かりにして徐々に知見を広げていけばよいと思うんです。

 

正直、これまでの経験を直接生かしにくい畑違いのプロジェクトにアサインされることもありますが、そこは社内のスペシャリストを頼ったり、プロジェクトメンバーに教えてもらったり、自身でそのテーマを勉強したりすることである程度対応できます。また、プロジェクトの進め方には一定の「型」があるので、そうしたところでカバーすることもできます。もちろん、知識や専門性も大事ですが、同時にコンサルタントとしての基礎的なスキルを徹底的に磨くことがまずは大切です。

 

――製薬企業では早期退職が相次ぎ、異業種でのキャリアを模索している人も多いようです。そうした人にとって、コンサルは待遇の面からも転職先の候補として挙がりやすいと思いますが、未経験からコンサルに転職するにあたって必要な心構えはありますか。

石坂さん:私自身、中途採用の面接官を担う中で感じるのですが、「準備期間」を持ったほうが良いです。自分で調べるなり、人に聞くなどしてコンサルの働き方や必要なスキルを研究し、それを踏まえて今の自分の経験やスキルとのギャップを特定し、できる範囲で勉強する。もちろん入社後に研修はありますし、そこで基礎的なスキルは身につけることができますが、姿勢として能動的に調べ、勉強することは大事だなと思っています。未経験で入社すると、自分より年下の方が上位職にいることもよくあるので、年齢問わず周囲からのアドバイスを謙虚に聞ける人であるということも大切ですね。

 

小杉さん:私もそう思います。どのコンサルも採用の過程でケーススタディを通じてコンサルとしての素養をチェックされていると思うので、コンサルに転職するならある程度の準備は必要になります。

 

「毎回刺激を受けています」

――いま製薬企業で働いている人がコンサルに転職したいと思った時、準備として普段の業務の中でやれること、意識できることは何かありますか。

石坂さん:MRの仕事を例にとると、ある製品の売り上げが落ちている原因をデータを分析しながら特定してみるとか、ある病院の売り上げを上げるための打ち手とその理由を考えてみるとか、意識的にテーマを設定してケーススタディをやってみるとよいかもしれません。「問題となる事象の特定」と「その根本原因の特定」と「解決策の立案」を自分の業務に当てはめ、ロジックツリーを作ったり、データを分析したりしてみると、良い訓練になるのではないでしょうか。

 

小杉さん:MRの場合、面会時間が限られるので、その中で自分が伝えたいこと、相手が望むことをどれだけきちんと伝えられるかというのは、コンサルのスキルにも通じるところがあります。それと、MRは得意先との面談回数や説明会の実施回数など、いくつかの行動目標を持っていることが多いと思うので、例えば「この項目がこうなると最終的な成果がこうなる」といったことをデータとして考え分析してみるのも、エクササイズになるのではないかと思います。

 

――お2人にとってコンサルの仕事の魅力ってどんなところですか。

石坂さん:困っていないと誰もコンサルを使わないと思うんですよね。だから、プロジェクトが終わるとものすごく感謝されるんです。大変な思いをすることも多いですが、クライアントが自分たちだけでは解決できない困りごとに対して、一緒になって解決する爽快感は毎回感じています。

 

小杉さん:同じ会社、同じ部署に所属しながら異なるクライアント、仲間、業務に関われることですね。プロジェクトが変わると業務もガラッと変わるので。毎回刺激を受けています。

 

石坂さん:「コンサルの1年はさまざまな業務内容が凝縮された時間」との言葉をよく聞きますけど、私自身、本当にそうだと思いますね。

 

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