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業界反発のEU医薬品制度改革案、一体どんな内容?

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロンドン ロイター]EU(欧州連合)は、COVID-19によって医療財政が傷む中、新薬開発への投資を復活させ、安価な医薬品へのアクセスを高めるために、医薬品業界を管理する法律の改正に取り組んでいる。

 

この冬、欧州では抗生物質や鎮痛薬など重要な医薬品が不足した。COVID-19の流行により、製造の衰退、複雑なサプライチェーン、公衆衛生上の緊急事態に対する備えの欠如といった問題が表面化した。ブリュッセルは、こうした問題の解決へ圧力を強めている。

 

一方、4月26日に公表された改正案は、業界と患者団体の対立を生んでいる。時代遅れの規制を見直す必要があるということ以外、両者の意見はほとんど一致していない。

 

欧州委員会のステラ・キリアキデス保健担当委員会は同日の記者会見で、EUの提案は革新的で競争力のある産業を支援しつつ、すべてのEUの人々が手頃な価格で、平等に、タイムリーに医薬品を入手できるようにすることを目的としていると強調した。

 

関連記事:新薬の市場独占期間を短縮…EUの医薬品制度改革案、業界との対立に発展へ

 

欧州委が公表した法律の改正案について、ポイントをまとめた。

 

市場独占期間の短縮

欧州委は、ジェネリック医薬品参入までに新薬に与えられる市場独占期間を10年から8年に短縮することを提案している。ただし、27の全EU加盟国で新薬を発売すれば2年の保護期間を取り戻せる選択肢も用意する。EU全域で医薬品のアクセス改善を促したい考えだ。

 

現在の法律では、メーカーは最長で11年の保護期間を得ることができる。改正案では、アンメットニーズに対応する医薬品など、特定のケースにおいて最大12年の保護期間を認める方針だ。

 

デンマークのノボノルディスクや独バイエルなどの大手メーカーやバイオテクノロジー企業は、この提案を批判している。業界は、欧州はすでに研究開発の目的地としての地位の喪失に苦しんでいると訴えている。

 

欧州製薬団体連合会(EFPIA)によると、欧州の研究開発投資は過去20年で25%減少した。業界は、独占期間の短縮は特にオーファンドラッグの研究にダメージを与えると警告している。

 

透明性の向上

改正案では、企業に対し、新薬開発のために受け取った公的資金を含む一部の研究開発費を承認申請時に開示することを義務付ける。開示された情報は一般にも公開される。欧州委は、これによって加盟国が行うメーカーとの価格交渉を手助けできると期待している。

 

一部の消費者団体は、メーカーが高薬価を正当化するためにコストを誇張していると主張しており、今回の提案を歓迎している。EUでは、メーカーの要望を受けてCOVID-19ワクチンの契約条件が明らかにしなかった欧州委の対応が批判された。EU各国医師会のグループである欧州医師常任委員会(CPME)は、研究開発の透明性を重視することが患者の利益につながると評価している。

 

規制当局の近代化

改正案には、EMA(欧州医薬品庁)を合理化し、新薬の承認審査にかかる時間を短縮するための提案がいくつか盛り込まれている。現在、EUは承認審査に平均して米国当局の2倍近い時間をかけている。

 

改正案では、革新的な技術や治療法を迅速にテストするための「規制の砂場」の設置をEMAに求めている。これにより、新規製品を開発する企業の市場参入が容易になる可能性がある。

 

さらに今回の改革では、紙ベースの医薬品の説明文書を電子化し、製造コストの削減につなげることが提案されている。消費者団体は、これによって患者が処方薬について十分な情報を得られなくなる可能性があると警告している。

 

供給不足への取り組み

改正案では、メーカーが自社製品の不足や撤退について従来より早いタイミングでEUに通知するとともに、必須な医薬品については在庫を多く持つことを提案している。

 

欧州ではこの冬、抗生物質などの不足が起こったが、欧州委は今回の提案が将来の供給不足の回避に役立つと考えている。メーカー側は数カ月先の供給問題を予見するのは難しいと主張する一方、医師会側は不足や撤退への対応には時間が必要だと指摘している。

 

改正案では、必須医薬品の入手状況を監視するため、EUが「重要医薬品リスト」を作成することも定めている。製薬業界は、この冬の抗生物質不足の原因となった需要の急増を予測するため、EU全域で医薬品の消費に関するデータベースを構築することを求めているが、これは改正案に含まれていない。

 

関連記事:欧州で医薬品不足が深刻化している理由

 

抗生物質の開発促進

数十年にわたって新規抗生物質の発見でブレークスルーのなかったEUは、メーカーに抗生物質への開発投資に対するインセンティブを与えたいと考えている。専門家は、薬剤耐性菌「スーパーバグ」が拡大し、COVID-19のパンデミックより深刻な自体を引き起こす可能性を指摘している。

 

新たな抗生物質を欧州市場に投入する企業には、EUで販売している別の自社製品の保護期間を1年間延長する。いわゆる「独占権バウチャー」(EUは1枚あたり5億ユーロかかると見積もっている)の数は10枚に制限され、制度は10年後に評価される。

 

一方、EU加盟国のうち14カ国は欧州委に書簡を送り、この提案はコストがかかり、ジェネリック医薬品市場を混乱させる可能性があると指摘。消費者にとって有害だと批判している。

 

改正はいつになるか?

すぐには無理だろう。

 

欧州委は今後、欧州議会や加盟国と詳細を詰めるが、製薬業界の代理人である弁護士は、2025年までに改正案が成立するとは考えていない。EUは来年、選挙を控えており、結果によってはさらに遅れる可能性がある。

 

(Maggie Fick/Philip Bleckinsop、編集:Josephine Mason/Giles Elgood/Mark Potter、翻訳:AnswersNews)

 

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